秋田・鹿角市の夏の風物詩で、ユネスコの無形文化遺産に登録されている「花輪ばやし」。その豪華絢爛(けんらん)な屋台が展示された道の駅を会場に“結婚式”が行われた。主役の新郎新婦は、アメリカ出身の女性と東京出身の男性。秋田県外に住む2人の結婚式が、なぜこの場所で実現したのか。思いが詰まった手作りの式を取材した。

無形文化遺産「花輪ばやし」での結婚式

鹿角市の「道の駅かづの」にある花輪ばやし祭り展示館。祭りで使われるきらびやかな屋台の前で9月22日、海外・県外出身の2人が結婚式を挙げた。

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新婦はコリーン・クリスティナ・シュムコーさん(39)、新郎は橋本俊和さん(43)だ。コリーンさんはアメリカ出身、俊和さんは東京出身で、2人は現在、千葉・松戸市で2歳の長男と生活している。

どうして祭りの屋台の前で結婚式を挙げることになったのか。その理由はコリーンさんにあった。

実は、都内の大学で三味線の研究をしているコリーンさん。松戸市に住む鹿角市出身の知人を通じて2018年に花輪ばやしに参加して以来、祭りで演奏される音楽に魅了されたという。

屋台の上で三味線を弾くコリーンさん(提供:トザワ写真室)
屋台の上で三味線を弾くコリーンさん(提供:トザワ写真室)

次の年の2019年、コリーンさんが俊和さんと結婚することを地元関係者が知り、花輪ばやしをテーマにした結婚式を提案した。ところが、当時は新型コロナウイルスの感染が拡大していたため、式は延期に。5年越しでようやく実現した。

リングボーイがお昼寝するハプニングも

式には新郎新婦の家族や地元関係者など約90人が国の内外から駆け付けた。

注目の指輪の交換の場面。指輪が入った箱を渡すはずだった長男・能庵くんは、すやすやとお昼寝、眠ってしまったのだ。厳かな雰囲気から一転、温かいハプニングで会場は和やかな空気に包まれた。

退場の際には、祭りの関係者からオリジナルのちょうちんが贈られたほか、はやしの演奏が披露され、2人の門出に花を添えた。

式のあと、会場の外では屋台が運行され、俊和さんは先頭を歩き、コリーンさんは屋台に乗って三味線を演奏した。出席者や観光客が見守る中、念願の式を挙げられた2人は喜びもひとしおだ。

新郎の俊和さんは「5年間長かったなっていうところと、ようやくやり切れたという気持ちでいっぱい」と、ほっとした気持ちを素直に口にした。

笑顔で話す新郎新婦
笑顔で話す新郎新婦

新婦のコリーンさんは「一番感動したのが、初めて聞いている人が多かった、日本人も外国人も。そういう初めて聞いた人でもみんなすぐノリノリになって、ダンスしている人も見たから、『これが花輪ばやしの力だ』と思った。壁がなく言葉もなくいろいろ伝えられて、その上結婚式ができて、何より感謝している」と話した。

かけがえのない思い出に

一方、式を企画した花輪ばやし祭典委員会の戸澤正英相談役は「感激、感動している。前代未聞の花輪ばやしの神前結婚式を挙げられたので、まずはお幸せに。そして、いろんなところで花輪ばやしと鹿角市をPRしてもらいたい」と期待を寄せた。

祭りさながらの雰囲気で行われた結婚式。新郎新婦、そして出席者にとってもかけがえのない思い出となったはずだ。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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