YouTubeで相次ぐ搾乳動画が物議を醸している。表向きは“勉強のため”としているが動画では女性が突然服をまくりあげ胸をあらわにして搾乳を実演。しかも子供も見られるものになっている。
こうした動画の掲載に問題はないのか。ネット上の表現行為に詳しい橋下綜合法律事務所の溝上宏司弁護士にYouTubeのガイドラインと抜け穴などについて聞いた。
“教育目的”であれば削除の対象外
ーー搾乳動画をYouTubeに載せて問題はない?
子育て中のお母さんに対して純粋に搾乳の方法を実演で教えている動画もあるので、全てが問題というわけではありません。しかし今回の動画はそれに便乗して性的動画に分類されるものを教育目的という形で投稿しています。
一昔前だと女性がピアノを弾いている動画で女性の胸にフォーカスしたようなものがありました。音楽動画ではありますが、誘因効果としては音楽以外のものもあるといった内容でそれによく似ていると思います。
ーー「教育目的」と謳えば削除できない?
YouTubeにはコミュニティーガイドラインがあって、性的なコンテンツはもちろんのこと、女性の胸部や臀部をことさら映しているものなどは原則禁止の対象となっています。ただ例外として、“教育目的”のものについてはガイドライン上はアウトなものだったとしても削除の対象にはなりません。今回の動画はそういった取り決めの抜け道をついたものだと思います。
“保険的”な意味合いで見逃し
YouTubeの規定では「性的満足を与えることを意図したコンテンツの投稿を禁止する」とする一方で、「教育目的であれば性的なコンテンツが許可される場合もある」と書かれている。
動画で自社商品を使われた搾乳器メーカーのピジョンは、「不適切動画としてYouTubeに報告しているが、削除してもどんどん新しい動画が投稿されいたちごっこになっている。不適切な動画投稿はやめていただきたい」とコメントしている。
YouTubeはこれらの動画を“教育目的”と判断しているのか。
ーー削除の判断はYouTube側に委ねられている?
教育的コンテンツに該当するかどうかという判断は、YouTube側の裁量に完全に委ねられています。しかしその基準はガイドラインを見る限り「ケースバイケースで判断します」と明言しているので、判断基準はかなりあいまいです。
ーー投稿者が「教育目的」としているからYouTube側もそう判断した?
教育目的である可能性がある以上は、軽々に削除することは避けようという“保険的”な判断があって、運営側も見逃しているところがあると思います。
今回の動画はうまいこと抜け道をついているので、あがってくるものを完全に直ちに消すことは難しく、当面はいたちごっこの状態が続くと思います。ただ、繰り返し通報が上がってくればYouTubeの運営側もどういったものがガイドライン違反であるかなど、コンセンサス基準が蓄積されていくので、今後は削除しやすくなるなど効果は期待できると思います。そうすれば新しく動画が出てくるや否や、すぐに削除できるようになる時期がくるはずです。
おかしいと思ったら通報
動画の中には概要欄などに成人向けコンテンツのURLを貼って視聴者を誘導させるものもある。こうした悪質な投稿への対応について溝上弁護士は、YouTubeに通報することで削除の判断基準が固まっていくと話す。
ーー性的な有料コンテンツに導く入り口にもなっている?
YouTubeは小学生や中学生、幼い子も容易にアクセスできるコンテンツで、そこを狙った悪徳業者もいます。そこに誘因性の高い搾乳動画をあげてそこをきっかけに課金要素が強いサイトに集めていくことはよくある悪質な手口です。
YouTubeも野放しにしているわけではなく、未成年に対してはセーフブラウジングのような形で性的なコンテンツを再生できないようにする機能はあります。しかし完全ではないし隙間をついてくるやり方もあるので、未成年を守るためには大人が子どもに正しい使い方を教えていくことが大切です。
ーー問題動画を発見したらどうするべき?
問題動画を見た視聴者は「これはおかしいんじゃないか」とYouTubeに通報していくことが大事です。そうすることでYouTube側の削除の判断基準が固まっていきます。
例えば今回のケースだと、脱衣シーンが入っているものはダメとYouTube内部で指針が固まれば、その方針を当てはめるだけで今後は迅速に動画を削除していくことができるようになります。