「働き方改革関連法」が施行されてから5年半が経過したが、残業時間の上限規制によって働く人に変化はあったのだろうか。調査によると、規制を歓迎する意見もある一方で「変わらない」といった声が最も多かった。
残業上限規制も「変わらない」
残業は月45時間、年360時間まで、特例でも最長で月100時間未満、年720時間までとする「働き方改革関連法」が施行されてから5年半が経過した。
働く人たちは残業時間の上限についてどう思っているのか、不動産のお悩み解決サイト「ウルホーム」が調査を実施した。(調査対象:ビジネス分野に興味関心を持っている502人 調査期間:2024年7月16日〜22日)
この記事の画像(4枚)5位は「日本経済が弱体化する(4.4%)」、4位は「特例が出来ても変わらない(5.6%)」だった。
3位は「残業できず残念(5.8%)」。「残業代がもらえない」の他に「納期が厳しい業務の足かせになる」という意見もあった。
2位は「楽になった(17.5%)」。「プライベートの時間を確保できる」、「副業などの選択肢を増やせる」と歓迎されている。
そして1位は、「変わらない(36.9%)」。「会社が規制を守らない」と「元から残業がない」に意見が二分されているが、「何も変わらない」という意見が最多だった。
“残業代未払い”は生産性と経営に悪影響
「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
残業時間に関する今回の調査、どうご覧になりますか。
エコノミスト・崔真淑さん:
気になるのは、「残業の二極化」です。そもそも「特に残業がない」という方と、会社からサービス残業を強要されている方の2つに分かれています。こうした「残業の二極化」については、経済学の研究対象にもなっていて、さまざまな分析が行なわれています。
堤キャスター:
具体的には、どんなことが分かっているのでしょうか。
エコノミスト・崔真淑さん:
経済産業研究所が発表した研究では、さまざまな公的データから算出されたサービス残業の時間そのものは減少傾向にはあります。
ただし、景気後退のリスクが高まると、サービス残業が増加する傾向も確認されています。つまり、残業代を支払わないことで、コスト削減を図っている可能性があるということなんですね。
働く人が本来、受け取るはずだった残業代は、ひと月あたり、男性は2万8千円~6万7千円程度。女性では1万5千円~4万2千円程度となっています。それだけ金額も大きいということなんですよね。
堤キャスター:
これは、働くモチベーションにも影響しますよね。
エコノミスト・崔真淑さん:
働く人のメンタルヘルスに直結するだけに、生産性の低下を招くことにもなります。会社側はコスト削減のため残業代を支払わないことを続けていると、生産性は低下するし、さらには経営に対してよりネガティブな影響を与える可能性があります。
成果主義の見直し、マネジメント改革がポイント
堤キャスター:
対策としては、どんなことが考えられるでしょうか。
エコノミスト・崔真淑さん:
労働基準監督署が目を光らせ注意していくのはもちろんですが、残業が長時間化してしまう仕組みとしてはいろんな背景があります。
まず、いびつな成果主義によって、従業員自らが残業に向かってしまうこと。もう一つは、上司の作業管理が行き届かず、メリハリのある仕事が行なわれていないということがあります。
国よる残業規制と同時に、企業のマネジメント改革と、その“見える化”がポイントになってくるかと思います。
堤キャスター:
仕事において、量と質は大切です。時間をかければいい仕事ができるのかというと違いますよね。それぞれが力を発揮できる環境を作り、量と質を総合的にみた上での評価が大切なように思います。
(「Live News α」9月16日放送分より)