アメリカ国防総省は8月末、長く空席となっていたUFO(未確認飛行物体)の情報を一元管理・分析するAARO(全領域異常対策室)の責任者に、コスロスキー博士が就任すると発表した。
コスロスキー氏は量子光学などの専門家で、調査の方法などに批判が殺到したUFO報告書の第二弾の作成などで監督を行うことになる。
また、全米UFO報告センターには、今年1月から8月までに1747件のUFOと見られる物体の目撃報告がされたほか、連邦議会では、政府の未公開文書、動画の公開を強く求める動きが強まる。
こうした中、トランプ前大統領が大統領に返り咲けば、新たなUFO動画の公開を約束。加えて少女への性的暴行の罪に問われ、勾留中に怪死した富豪エプスタイン被告の顧客リストの調査にも言及し、注目を集めている。
全米でUFO目撃情報相次ぐ
全米UFO報告センターには、今年に入り1747件、8月だけで212件のUFOに関する報告が寄せられた。
8月23日には、マサチューセッツ州ボストンの上空で、パイロットと客室乗務員が「何度か暗くなったり明るくなったりする物体をいくつか発見した」という報告がされた。また、「3つの物体が逆三角形を形成した後、物体は別々の方向に散っていった。ある時、物体が数回点滅し始めた。20~30分続いた」としている。
さらに、6月30日に投稿された映像では、ネバダ州ラスベガスの北西にある砂漠地帯の上空に赤、青、緑に点滅する謎の6つの物体が映し出されている。この物体に関しては、アメリカの3大ネットワークNBCテレビの系列局が放送して注目も集めたが、原因は未だ明らかになっていない。
トランプ氏が新たなUFO動画公開を約束
こうした中、大統領への返り咲きを目指すトランプ氏が9月3日、人気ポッドキャスターのレックス・フリードマン氏と対談した。
その際にフリードマン氏から、「より多くのUFO映像を公開するため、国防総省を促すか?」と水を向けられると、トランプ氏は「もちろんそうする。そうしなければならない」と新たな動画の公開を約束したのだ。トランプ氏は過去に宇宙人について「何かが存在する可能性が非常に高い」とも話し、今回の発言では注目を集めた。
特にAAROが3月に出した報告書で、UFOなどの目撃情報を「地球外技術の存在を示す証拠はない」と結論付けたが、内容の間違いや、調査方法に疑問が呈され、国民からは政府の情報公開の杜撰さに、より疑念が深まる結果となった。連邦議会を中心に世論からは、政府が機密指定している情報の公開を求める声が日に日に強まっている。
さらに注目を集めた「エプスタイン事件」の調査と顧客リスト開示
一方で、全米の関心をさらに集めたのは、2019年8月に勾留中に自殺した富豪のジェフリー・エプスタイン被告を巡る情報の調査・公開についてだ。
「エプスタイン事件」とも呼ばれるこの事件は、1990年代半ばから10年以上にわたり行われたとされる、少女らへの性的搾取、児童虐待などの疑惑だ。さらに、エプスタイン氏が欧米の政財界や王室などとの交流を持っていたことで、セレブに児童買春などを斡旋したと噂され、大スキャンダルに発展した。
事件の主な舞台となったのは、アメリカ領バージン諸島にあるエプスタイン氏が所有する島で、「小児性愛者の島」とも呼ばれた。少なくとも、かなりの数の少女らがこの島を訪れ、各界のセレブ達がプライベートジェットなどで乗り付けていたことは間違いない。
本人は疑惑の関与を否定しているが、親交あった人物としてイギリスのアンドリュー王子やビル・クリントン元大統領の名前も度々挙がっている。また、エプスタイン氏自体が、少女への性的虐待で2019年8月に勾留中に自殺したことで、事件の真相が闇に葬られたとの見方をする人は多い。
遺族や弁護団などは自殺を否定し、「他殺だ」と主張もしていて、ドキュメンタリー作品が作られるほど関心が高い事件なのだ。
トランプ氏は関与否定…「エプスタイン事件」の調査・公開を示唆
エプスタイン氏についてはトランプ氏とも交流があったと指摘されるが、番組の中で問われると、「多くの大物がその島に行った。しかし幸いなことに、私はその中の一人ではなかった。」と関与を否定した。その上で、エプスタインの顧客リストの存在について「おそらく公開されるだろう」と発言し、「私はエプスタインについて調べたい。何の問題もない」と調査に意欲も示したのだ。
何年も前から、SNS上などにはエプスタイン氏の顧客リストは存在するが、そのような文書が実際に存在することは未だ証明されていない。加えて、一部裁判に関する資料は公開されているが、全容は未だ不透明のままだ。アメリカメディアもこの発言は大きく取り上げていた。
11月に大統領選挙を控える中で、トランプ氏はケネディ元大統領の暗殺に関する未公開文書を全て公開することに加えて、UFOの新たな動画、エプスタイン事件の調査・公開など次々に踏み込み始めている。
選挙は大接戦が予想されているが、こうした発言はただの票集めのためのものか。本当に情報公開に踏み切るのか。
こうした発言に対しても実効性があるのか、今後の展開から目が離せない。
(FNNワシントン支局 中西孝介)