おむつ1枚1枚に子どもの名前を書き、保育園に持ち込む保護者。そのおむつを一人一人のカバンから出す保育士…。双方の負担を減らすため、12カ所の広島市立保育園で「おむつのサブスク」導入に向けた実証実験が行われた。

おむつの“名前書き”から解放される

広島市南区の大河保育園。月曜日の午前7時半すぎ、あわただしい様子で親子が登園してきた。父親はたくさんの荷物でふさがった手に、さらに子どもを抱っこして保育園の階段をのぼっていく。

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「朝は僕で迎えは妻というかたちで…。月曜日はお昼寝布団とか荷物が多いですね」
そう言って、わが子が使う数々のグッズを指定のカゴに収め、仕事へと向かう。

そんな忙しい保護者たちがいま注目しているサービスがおむつのサブスクリプション。広島市内12カ所の市立保育園で8月、おむつを定額料金で利用できるサービスいわゆる「サブスク」の実証実験が行われた。大きなねらいは保護者や保育士の負担を少しでも軽減させることだ。

「ほかの自治体でやっている話を聞いたことがあったので、いいなと思っていました。すごくラクです。夜に一生懸命名前を書く日々だったので…」と喜ぶ母親。実は、保育園に持ち込むおむつには1枚1枚、名前を書かなければならない。手書きの手間を省くために名前スタンプを利用する人も。サブスクを利用すれば“名前書き”から解放され、荷物を減らせるメリットがある。

保育士からは保管場所などの心配も 

保育園の倉庫にはたくさんの段ボール箱が積まれていた。

中身はすべてサブスクに必要な紙おむつ。大河保育園の岡峰康江園長は「各サイズ合わせて1カ月に30箱くらい使うと思います」と言い、背丈より高く積まれた箱に目をやる。

サブスクの導入で現場はどう変わるのか。保育士が園児を連れておむつ交換台にやってきた。通常は一人一人のカバンからおむつを出しているが、実証実験中は共通の棚からおむつを取り出す。トイレの棚にもおむつが置かれ、M、L、ビッグなどのサイズによって分けられていた。

保育士歴6年の保育士は「一人一人のカバンからおむつを出すことがなくなったので、子どもたちとしっかりかかわれる時間が増えたかなと思います」と話す。

一方で、心配な部分もある。保育士歴20年の保育士は「届く数が多いので、置き場所は工夫しなければ難しいかなと思います。導入された時に全員がサブスクを希望するかはわからない。個人のおむつを確認することもあるかなと思うので…」と、サブスク利用とそうでない園児が混在する場合の対応を懸念している。

サブスク導入後の利用は金額次第

実証実験は好評で、話を聞いた保護者のほとんどが本格導入を希望していた。

持ってくる荷物の量が減り、「カバンがめっちゃ軽いです」と笑顔を見せる母親。

おむつが必要な子ども2人を預けている母親は「導入されたら利用したい。自分で買って保育園に持ってきているおむつが1カ月あたり1人につき3パックくらい。おむつ1パックの金額が同じくらいになったらうれしい」と話す。

やはり、気になるのは利用料金だ。

広島市によると今回の実証実験に協力している3つの事業者では「おむつ」と「おしりふき」で1カ月あたり2000円~3000円台が相場だという。

「おむつ代が普段うちで負担している額と保育園で用意してくれる額のどちらがいいかですね」と、金額によってサービスを利用するかどうか判断する保護者もいる。

広島市は9月中旬までに保護者や園にアンケートを行い、その結果を踏まえてできるだけ早い時期に実施の可否を決めたいとしている。多くの人が納得して利用できる料金に設定され、保護者と保育士の負担軽減につながってほしい。

(テレビ新広島)

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