中国のウインタースポーツ市場が急成長する中、日本企業の「YONEX(ヨネックス)」がスノーボード事業で中国に進出している。
上海でオープンする世界最大の屋内スキー場で、YONEXもショップを展開。
専門家は、中国のスポーツ需要の高まりが今後も続くと予測している。

上海の世界最大屋内スキー場でYONEXの挑戦

急成長する中国のウインタースポーツに、チャンスを見出した日本企業の挑戦に迫った。

上海で9月に営業開始する世界最大の“屋内”スキー場
上海で9月に営業開始する世界最大の“屋内”スキー場
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日本と同じく暑い日が続く中国・上海に現れた童話の中のような銀世界。
ここは2024年9月6日に営業を開始する世界最大の屋内スキー場だ。

東京ドーム2個分の屋内スキー場
東京ドーム2個分の屋内スキー場

FNN上海支局・沖本有二記者:
施設の中に一歩足を踏み入れると、ご覧のように東京ドーム2個分の広大な銀世界が広がっています。

ゲレンデに用意された4本のコースは最長460メートル、最大斜度26度と本格的だ。

バンジージャンプを体験する記者
バンジージャンプを体験する記者

一方で、バンジージャンプなど、ウィンタースポーツ以外のアトラクションも楽しめる。

中国では、2023年シーズンにウィンタースポーツを楽しんだ人は、実に4億人以上にのぼり、2022年の北京オリンピックをきっかけに空前のブームとなり、国内には建設中の物を含めると、屋内スキー場が58もあるという。

そんな、ゲレンデのように広大なマーケットに滑り出そうとしている日本の企業がある。

YONEXのスノーボードショップ
YONEXのスノーボードショップ

バドミントンのイメージが強いYONEXは、4年前にスノーボード事業で中国に進出し、28日に屋内スキー場の一角に、スノーボードショップをオープンさせた。

YONEX 中国スノーボード営業部・大塚幸博部長:
1年中滑れることもあり、市場自体が止まらない。物が動きますので、人の集まるところに店を置いて、ここで販売ができればと思っております。

YONEXの試乗イベント
YONEXの試乗イベント

YONEXは年間90回以上の試乗イベントを行い、PRに努めている。

JETRO(日本貿易振興機構)上海 EC・市場開拓部・田中正義部長:
中国の中級者、上級者の方を対象に日本のブランドが好まれている。日本のブランドの皆さんは今後攻め入ることができるのではないか。

実績と技術を生かし中国スノーボード市場へ

「Live News α」では、大阪公立大学・客員准教授の馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
ーーYONEXの中国でのスノーボード界進出、どうご覧になりますか?

大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
2022年の北京オリンピックをきっかけに、「中国のウィンタースポーツ人口を3億人に増やす」と、習近平国家主席が号令をかけました。

これによって、スキー場やスケート場の建設が相次いでいます。ここにチャンスを見出したYONEXは、強みのある中国で勝負に出た訳です。

堤キャスター:
ーーYONEXの中国での強みは、どういうことでしょうか?

大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
YONEXというと、バドミントンをイメージする方が多いかと思いますが、中国でバドミントンの人気は高く、競技人口が2017年時点で8000万人もいて、YONEXの売り上げの半分は、中国・台湾向けなんです。

YONEXは、バドミントンやテニスのラケットに使われるカーボン素材の加工技術を生かす形で、スノーボードも手がけています。今回、中国でウィンタースポーツに力を入れるのは当然のことかと思います。

「ソフトパワー」で日本の魅力を世界に拡大

堤キャスター:
ーーただ、景気については不安もあるように思いますが、これについてはいかがですか?

大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
中国の景気鈍化は懸念材料ですが、中国は14億人という国内の巨大な人口の中で消費や経済を回そうとしています。

そうしたときに、国民が楽しむスポーツやエンターテインメントなどは、経済を支える上でも必要なことです。

ファッション・スポーツ、さらには飲食など、カルチャーにも関わる「やわらかな」産業で中国との関係をうまく構築している日本企業の存在は、これから重要な役割を果たす可能性があります。

堤キャスター:
ーーそれは、どういうことでしょうか?

大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
世界で存在感を発揮するには、軍事や貿易などで相手国に優位に立とうとする「ハードパワー」と、自国の価値観や文化でほかの国を魅了して味方につける「ソフトパワー」があります。

米中対立の激化など、常に地球のどこかで争いが行われています。

日本はハードパワーを身につけつつも、企業活動を通じた「ソフトパワー」で世界の人々を魅了して、日本のファンを増やすことが大切です。

堤キャスター:
国境を超えて行うビジネスでは、まず需要があり、さらに得意な分野を磨き、それを生かすことが求められるように思います。
(「Live News α」8月28日放送分より)