「名前のわからないもの展」が東京・原宿で開催され、200点以上のアイテムが展示されている。
メルカリが主催し、名前のわからないことによる機会損失を防ぐことが狙いだ。
専門家は、名前の認知が商品価値や売買の促進に不可欠だと指摘している。

正式名称わからないモノが一堂に会する特別展

「よく知っているけど、名前は知らない」、ここにメルカリが注目した。

ノックアウトハンマー
ノックアウトハンマー
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バラエティー番組で見かけるこちらは、「ピコピコハンマー」ではなく、「ノックアウトハンマー」。

タンポポマット
タンポポマット

「タンポポマット」と名がつくのは、建物の入り口でよく見かける“アレ”のこと。

このように、見たことはあるけど、正式名称を知らない物が200点以上並ぶ、「名前のわからないもの展」が、28日まで東京・原宿で開催されている。

特別展は、名前が分からないことから生じる、出品や購入の機会損失を防ぐことを目的に、フリマアプリを展開するメルカリが主催している。

例えば、お弁当についているしょうゆの入れ物は、“ランチをチャーミングにしてほしい”という思いから、「ランチャーム」と名づけられ、メルカリでの参考価格は、30個で600円。

さらに、カレーのルーを入れる容器は「グレイビーボート」と言い、1個1000円ほどで取引されている。

特別展で用意された体験型コンテンツ
特別展で用意された体験型コンテンツ

このほかにも、クイズ形式で名前を学ぶコーナーに、「巨大ガチャ」や「ランチャームすくい」など、体験型のコンテンツも用意されている。

来場者:
検索して買おうと思っても、なかなか見つからないので、ここで見て名前を覚えられてよかった。特に「蟹甲殻類大腿部歩脚身取出器具(かにこうかくるいだいたいぶほきゃくとりだしきぐ)」は、今度から正式名称で言ってみようと思います。

メルカリによると、日本の家庭に眠る“かくれ資産”の総額は66兆円以上で、国民1人あたりでは、平均53万円にものぼり、名前の分からないモノも“かくれ資産”となる可能性を秘めているという。

特別展に並ぶ「名前のわからないもの」
特別展に並ぶ「名前のわからないもの」

メルカリ カスタマーマーケティングチーム・池田早紀マネージャー:
名前が分からないから出品しにくい。結果、家の中で眠ったままになるという意味では、“かくれ資産”になっているモノもある。すべてのモノには価値があることに気づいてもらい、家の中で眠っているモノがあったら循環させてみようと思ってもらえたらうれしい。

商品名の認知が購入意欲を高める

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
ーー「名前のわからないもの展」、どうご覧になりますか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
マーケティングにおいて、名前の認知は非常に重要です。商品名が分からないと、商品選びの対象にならない、つまり買ってもらえない訳です。

いかにして消費者に、自社のブランド名や商品名を記憶してもらうかは、マーケッターにとって最大の課題になります。こうした名前の認知は、メルカリのビジネスとしても重要な取り組みだと感じます。

堤キャスター:
ーー商品名が分からないと、売買しにくいですよね?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
マーケットプレイスを運営するメルカリにとって、一般消費者の売買を手助けする取り組みは重要です。

ビジネスのプロではない一般消費者の場合、名前が分からないと、うまく出品できず「売れない」、検索できないから「買えない」ことも多いはずです。

こうした試みによって売買が進むと、手数料収入の増加につながる訳ですが、メルカリの狙いは、別なところにあるのかもしれません。

顧客の信頼を獲得しブランド価値を高める

堤キャスター:
ーーそれは、どういうことでしょうか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
今回の試みはメルカリにとって、ブランドイメージの醸成にもつながります。

さまざまなフリマサービスが競合している中で、売買のサポートがしっかりしているというイメージは付加価値となり、選ばれる要因になりえます。

もう1つ、見たことあるけど名前が分からない、これはクイズの楽しさに通じますよね。メルカリは面白いことをやっているというイメージも付与され、楽しいマーケットプレイスという印象の醸成にもつながるかもしれません。

堤キャスター:
ーー便利で、買物が楽しくなる工夫があると、利用も進みそうですね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
フリマサービスへの参加は、物を大切に使い続けることにつながります。

自然と経済の循環がうまく調和した、環境に良い循環型社会を実現するためには、私たち個人にもできることがあります。

それは「捨てる」を減らし、「使う」を増やすことです。より多くのものが、誰かの価値になるといいなと思います。

堤キャスター:
名前がわからなくても「アレ」で通じるもの、たくさんありますよね。
でもほとんどの物には名前があり、由来があります。
それを知ることで、物への関心や愛着につながっていくのかもしれませんね。
(「Live News α」8月20日放送分より)