今、富士山で高齢者の遭難が相次いでいます。
静岡県側では、7月10日の山開きから5日間で、4人の登山客が亡くなるという異例の事態に。
「めざまし8」は、富士山を守る「静岡県警 山岳救助隊」に密着。富士山でいま起きている異変が見えてきました。
100人超 インドネシア人の登山客が“弾丸登山”
富士山、静岡県側の標高3460mにある山小屋「万年雪山荘」で活動している、静岡県警・山岳遭難救助隊。

救助隊の救助対象エリアは、富士山の4つの登山ルートのうち、静岡県側の3つのルートですが、この日、そのうちの1つ、富士宮口の9合目付近で異変が起きていました。

7月21日午前0時、暗がりの中に山小屋の前に現れた集団、山小屋の前が寝床と化しています。

取材スタッフ:
身を寄せ合って寒さをしのいでいますね。アルミシートで覆って寝ている方もいます。
その中の一人に声をかけてみると…。
インドネシア人の登山客:
インドネシアから参りました。120人前後ぐらいかな?参加者がいます。
――山小屋には泊まっていない?
ないですね。

――なぜ泊まらないのですか?
たぶん、だいたいみんなのお休みが2日間しかないんですよ。月曜日にまた仕事をしないといけないので、土曜日(の夜)に登って、日曜日の朝に下りる感じで。

120人にも及ぶインドネシア人の「弾丸登山」。
夜通しで一気に山頂を目指す「弾丸登山」は、高山病や低体温症など様々なリスクを伴う危険な行為です。
なぜ「弾丸登山」に踏み切ったのでしょうか?
――山梨県側にゲートができて、通行時間が制限されたことは知っていますか?
インドネシア人の登山客:
そうですね、知っています。だから、それも参考にして富士宮口の方に来ました。

山梨県側では、2024年からゲートが設置され、通行できる時間を午前3時から午後4時までと制限しました。一方で、静岡県側は、弾丸登山の自粛を呼びかけてはいるものの、ゲートなどは設置していません。
インドネシア人の団体は、午後4時以降入山できない山梨県側を避け、ゲートが設置されていない、静岡県側にやってきたのだといいます。
7月21日午前2時ごろ、このインドネシア人のグループをめぐり、救助隊に「意識を失った女性がいる」と通報が入りました。現場は8合目と7合目の間、標高約3100m付近です。

救護隊「警察です、日本語話せる人はいますか?」
そこにいたのは、顔が青ざめ動けなくなっているインドネシア人の女性、先ほどのグループの1人です。女性は低体温症とみられ、山岳救助隊は、ここから最も近い山小屋へ搬送することになりました。
女性の友人らが、「がんばって、しっかりして」と声をかけ続けます。

山岳遭難救助隊 渡辺浩行隊長代理:
症状的には低体温症ですけど、かなり中の体温が下がっている。
山岳救助隊の適切な処置により、女性はその後、体調を回復。無事下山できたといいます。

山岳救助隊 岡本憲伍隊員(21):
今月入って低体温症で彼女とね、同じ症状で亡くなった人もいるんですよ。私も対応している。それはすごく悲しいことでしょう?
山梨県側でゲートが設置されたことによる、思わぬ余波。
相次ぐ高齢者の“遭難”
7月10日の山開きから、5日間で4人の登山客が亡くなっている、富士山の静岡県側登山道。いずれも60代から70代の単独登山でした。

渡辺浩行隊長代理:
私の記憶をたどっても、開山日に2人が亡くなられたという事案は記憶にありません。その状況から見ても、異常な事態だったのかなと感じています。
渡辺隊長代理も「異常事態」だと話す中、新たな救助要請が入りました。
9合目と8合目の間、山小屋から100mほど下った場所で、歩行困難者がいるといいます。
遭難者は、単独で登山していた90歳の男性。下山中に足を滑らせ、右足首を捻挫したといいます。

救助隊は、自力での下山は困難と判断し、男性を8合目にある診療所まで背負って降りる事に。
90歳の男性は翌日、無事下山したということです。
この日、山岳救助隊に新たな緊急を知らせる一報が入ります。遭難したのは、またも高齢の男性でした。
遭難者は、登山道で転倒し、頭を強打しているといいます。容体が急変する恐れがあるため、物資運搬用の道を安全確保しながら、急いで駆け下ります。
現場にいたのは、77歳の男性。下山中に段差につまずいて転倒した際に、頭部を負傷しています。

岡本憲伍隊員:
手とかつきました?
遭難者:
もうちょっと早く手をついていれば、ケガしなかったと思う。
頭部の負傷は、容態急変の可能性があるため、ヘリコプターで搬送することに。ヘリが安全に救助できる標高3000m付近まで下山します。

男性は、ヘリコプターで富士宮市内の病院に搬送され、大事には至らなかったということです。
渡辺浩行隊長代理:
山岳救助隊として富士山に常駐していますが、たくさんの人の助けがあって救助が出来ています。ガイドさんや山小屋の皆さん、ヘリコプターのクルーやブルドーザーのオペレーターも一歩間違えれば、大きな事故が隣り合わせの環境下で救助してくれております。ですので、登られる皆様もよく準備をして楽しく登山をしていただきたいと思います。
(「めざまし8」8月14日放送より)