福岡・大牟田市で2004年に起きた親子ら4人殺害事件で収監されている死刑囚が、養子縁組をした親族3人との手紙のやりとりを制限されたとして国家賠償などを求めた裁判で、福岡地裁は2024年7月31日、判決を下した。
3人を「親族」と認め、手紙のやりとりは「不許可とはできない」と判断。また国家賠償については棄却した。
一家4人死刑“まれに見る凶悪事件”
事件は2004年9月に起きた。
この記事の画像(7枚)暴力団組長だった北村実雄死刑囚(当時60)とその妻である真美死刑囚(当時45)、そして2人の息子、長男の孝死刑囚(当時23)と次男の孝紘死刑囚(当時20)の計4人が、知人の女性Aさん(当時58)と彼女の長男Bさん(当時18)、そしてBさんの友人の少年Cさん(当時17)の計3人を殺害した。また、2人の兄弟はこれに先んじ、Aさんの次男Dさん(当時15)を殺害していたというまれに見る凶悪事件だ。
犯人の一家4人は、いずれも強盗殺人・殺人・死体遺棄などの罪に問われ、2011年に最高裁で死刑判決が確定している。一家4人が揃って死刑判決を受けたことは異例とされている。
「外部交通確保が目的」として不許可
今回、訴えを起こしていたのは、2011年に刑が確定し、現在収監中の井上孝紘死刑囚(※北村姓から井上姓に改名)だ。
訴状などによると、井上死刑囚は入れ墨の指導を通して交流を深めた男性3人と養子縁組を行い、拘置所から3人に手紙を送ろうとした。しかし、拘置所側は「養子縁組をしたのは、外部交通の確保が目的。親族として取り扱わない」などとして不許可としていた。
法律上は親族とのやり取りが認められていることから、井上死刑囚は養子縁組した3人と「親族」の関係にあると確認することや、国に対し約150万円の慰謝料を求めていた。
「親族に当たると言わざるを得ない」
7月31日の判決公判で、福岡地裁の林史高裁判長は「井上死刑囚にとっては、入れ墨の下絵を描くことが、その人格的生存に関わる重要な事項で、その心情の安定に資するものである」「養子縁組した3人と入れ墨の下絵の指導等を通じて交流を深めた」と指摘した上で、「3人は親族に当たると言わざるを得ない」として「手紙のやりとりを不許可とはできない」と判断した。
一方、国家賠償については、拘置所側が手紙のやりとりを不許可にしたのは「違法であるとはいえない」として棄却した。
この判決に対して、福岡拘置所は「判決内容を精査し、関係機関と協議した上で適切に対応してまいりたいと考えています」とコメントしている。また弁護団は、本人と協議した上で今後の方針を決めるとしている。
(テレビ西日本)