日銀は政策金利を0.25%に引き上げることを決定した。変動型住宅ローン利用者は、負担が増える可能性がある。植田総裁は、2%の物価目標を達成するための適切な措置と強調。専門家は、賃金上昇を見込み、家計への影響を抑えようとしていると指摘している。

0.25%利上げで 円相場は急速に円高へ

日銀は、政策金利を0.25%程度に引き上げることを決めた。

日銀に入っていく植田総裁
日銀に入っていく植田総裁
この記事の画像(11枚)

日銀は金融政策を決める会合で、現在0%から0.1%程度としている政策金利を、0.25%程度に引き上げると決定した。

今回の追加利上げで、負担が増える可能性が指摘されている変動型の住宅ローン利用者からは「これはあらがえないことなので、それに従って支払うしかないと思う」との声が聞かれた。

会見を行う植田総裁
会見を行う植田総裁

会合後の会見で日銀の植田総裁は「2%の物価目標の持続的安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断した」と述べた。

政策金利の引き上げについて言及した植田総裁
政策金利の引き上げについて言及した植田総裁

また、「物価が見通しどおりに推移していけば、引き続き政策金利を引き上げる」とも述べた。

7月31日の円相場
7月31日の円相場

こうした発言を受け、外国為替市場の円相場は急速に円高が進み、一時、約4カ月ぶりに1ドル=149円台を付けた。

大幅利上げのリスク回避から小幅に

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
追加利上げの決定、どうご覧になりますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
植田総裁は6月の会見で、「国債買い入れ額減少」と「利上げ」という2つの引き締めを同時に行うことを否定していませんでしたので、利上げの「観測」が流れていました。
この「観測」が「確信」に変わったのは7月30日の深夜で、その後急速に為替は円高にふれ始めました。

さらに、夕方の植田総裁の会見で、連続的な利上げを否定しなかったため、もう一段円高が進み、150円台前後で推移しています。

堤キャスター:
金利を引き上げると、景気の回復にネガティブな影響があるという指摘もあると思いますが、これについてはいかがですか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
もちろん、急速な利上げは景気を冷やします。植田総裁は会見で、0.25%程度の金利であれば、景気の腰折れリスクは低いという認識を示しました。

さらに、これから物価上昇が急速に進んだ時に、後から大幅な利上げをすることの方がリスクであり、いまの段階で小幅な利上げをしておいた方が良いと、利上げしないリスクについても述べていました。

堤キャスター:
家計への影響、なかでも気になる住宅ローン金利についてはどうなっていくのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
変動住宅ローン金利には、「金利が上がったとしても5年間は返済額が変わらない」というルールを多くの金融機関が採用しています。

日銀は、住宅ローンの返済額が上がらない5年間の間に、国内の賃金上昇が進むことを想定しているようです。

賃金上昇の幅がしっかり出てから、その後、住宅ローン金利の返済に影響が出るならば、家計への影響をマイルドに押さえている。むしろ、住宅ローンの残高よりも預金残高の方がマクロで見れば額が大きいので、預金に利息が付くといった家計の恩恵もある、といった考えも述べていました。

次の利上げ時期・幅・目標が焦点

堤キャスター:
今後については、いかがですか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
連続的な「利上げ」を否定していないことが、1つのポイントになります。

しかし、本当に景気が冷えないのかどうかをしっかりデータをみて欲しいと思います。

個人消費などのデータ次第となりますが、この先の注目は3つです。「次の利上げは何か月後」なのか、それは「何%の引き上げ」になるのか、さらに、「どこまで金利を引き上げるのがゴール」なのか。

これに加えて、当然、アメリカの政策金利の行方も大きく影響します。アメリカは「利下げ」、日本は僅かながらの「利上げ」となれば、為替は円高に推移することが考えられます。

堤キャスター:
これまでの円安を受けて、業績を見通していた企業も多いはずです。今回の利上げの判断が、企業決算にどう影響してくるのか注目したいと思います。
(「Live News α」7月31日放送分より)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(11枚)