岸田首相は、資源の再利用を進める「循環経済」の実現に向けた初会合を開催し、政策強化を表明した。
首相は、製造業とリサイクル業の連携促進や再生材の利用拡大を指示した。
専門家は、企業が主役となることが循環経済に重要と指摘している。
循環経済の初会合で政策強化表明
岸田首相は、資源の改修や再利用などを進める循環経済、いわゆる「サーキュラーエコノミー」の実現に向けた、閣僚会議の初会合を開いた。
この記事の画像(11枚)岸田首相:
資源を浪費せず、循環利用しながら、新たな付加価値を生み出す循環経済型社会システムへの転換のため、政策を抜本強化することが必要です。
循環経済は、大量生産・大量消費・大量廃棄から脱し、資源を再利用する持続可能なシステムとして、ヨーロッパなどで提唱されている。
岸田首相は、自動車メーカーなど製造業と廃棄物リサイクル業の連携の促進、再生材の供給・利用の拡大、太陽光パネルのリサイクル促進などを訴え、2024年内に政策パッケージをまとめるよう閣僚らに指示した。
企業が中心となり新たな価値を創出
「Live News α」では、市場の分析や企業経営にくわしい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
ーー循環経済の推進、どうご覧になりますか?
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日本は以前から「循環型社会」の考え方がありますが、これと比較すると、経済成長への視点が強いことが、サーキュラーエコノミーの特徴です。
特に欧州では、成長戦略として位置づけられています。経済産業省によると、循環経済に関する国内市場は現在50兆円ほどですが、2050年には120兆円に広がる見通しです。
堤キャスター:
ーーこの分野で日本が、世界に存在感を示せるといいですね。
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
SDGs(持続可能な開発目標)やサステナブル経営など、企業への要請が多い時代です。ただ、この流れに息苦しさを感じたり、ついていけないという声が現場に多いのも事実です。
私はアナリストとして、企業の皆さまとサーキュラーエコノミーについてお話しする際に「主役は企業です」と、お伝えしています。主役がSDGsや、サステナブル経営ではなく、それらは1つのツールだと表現しています。
企業が、より輝くために活用するわけです。未来志向の企業姿勢のもとには、優秀な人材が集まりやすくなります。魅力的なアイディアや商品が生まれることで、企業の利益の源泉につながります。
そうお話しすると、現場の方たちには“腹落ち”感があり、前向きな姿勢に転換する姿を何度も見てきました。
社会性を強みに利益を生み出す
堤キャスター:
ーー利益が伴うからこそ、長く続けられるのかもしれませんね?
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
資源に乏しい日本が循環のサイクルをうまく回すポイントは、「資源の回収」をうまく行うことです。例えば、使わなくなった携帯電話やPC、あるいは解体した建物の中には、貴重な資源がたくさんあります。
これは、都会の中に眠っている鉱山「都市鉱山」といわれるものです。「都市鉱山」から回収された資源は、再び太陽光パネルや電気自動車に使うことができます。
成長を遂げている企業は、社会性のある取り組みを「自社の強み」にして、それを内外に発信しています。利益と社会性との両立を図らない企業は淘汰(とうた)されてしまうのが、世界的な流れになっています。
堤キャスター:
日本経済の回復と成長には、循環の視点が欠かせないのかもしれません。
この取り組みを国として進めていくうえで、具体的な道筋や数字の目標などをしっかりと示す必要があるように思います。
(「Live News α」7月30日放送分より)