「UFO型信号機」をご存じだろうか。4つの車用信号と4つの歩行者用信号が合体した珍しい信号機だ。宮城県内には3基あり、製造した企業によると、日本の公道に残る最後の「UFO型信号機」とみられている。いずれも老朽化を理由に2024年7月に撤去される。周辺に住む人からは、長年慣れ親しんだ信号機との別れを惜しむ声が聞かれた。

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夜空に浮かぶ“UFO”

「UFO型信号機」は正式名称を「懸垂型交通信号機」という。1本の支柱の先に四角い枠が吊るされ、“辺”の外側には4つの車用信号、内側には4つの歩行者用信号が設置されている。斜めから見ると交差する道路両側の信号を覗くことができ、ずっと見上げていると不思議な感覚にもなる。

夜になるとその不思議さはさらに増し、真っ暗な夜空に点灯する3色のライトがUFOを思わせる。

都市部にしか現れない?

「UFO型信号機」を製造したのは、愛知県に本社を置く名古屋電機工業だ。なぜこの形にしたのか話を聞くと、特徴的な見た目には理由があるという。この信号機が設置されていたのは「道幅が狭い」「地下に水道管が埋められている」など、信号機の支柱を立てるのが難しい都市部の交差点。従来の信号機は通常1つの信号機に対して1本の柱が必要だが、1本の柱で8つの信号機の役割を果たせる「UFO型信号機」は柱を複数立てることができない場所で役立っていたという。

狭い路地の先に見えるのがUFO型信号機
狭い路地の先に見えるのがUFO型信号機

名古屋発 昭和生まれの“UFO”

名古屋電機工業は1975年(昭和50年)、欧州のワイヤー吊り下げ式信号を参考に「UFO型信号機」を開発し、名古屋市の小学校前の交差点にテストケースとして設置した。その後、宮城県や愛知県、群馬県に設置したが、2024年7月時点で現役の信号機として残っているのは仙台市のみとみられている。

設置されているのは、青葉区角五郎2丁目、太白区長町4丁目、若林区木ノ下4丁目の3ヵ所だ。
(名古屋電機工業によると、類似の信号機は仙台市内の教習所や大阪府、愛知県などにも設置されているが、4方面全てに信号がある一体型の信号機で電球式のものは上記3ヵ所のみ)

“UFO”はLEDに切り替え

狭い道でも住民の安全を守るために活躍した「UFO型信号機」。設置から50年近くが経ち、老朽化のため各地で撤去が進んでいて、宮城県警は残る3基についても2024年7月中の撤去を決めた。

「UFO型信号機」はすでに製造されておらず、部品の交換も不可能。3基を撤去した後はLEDを使った通常型の信号機が設置される。UFO型の設置当時はコンクリート柱だった支柱が軽量で細い鋼管柱となり、基礎が小さくても設置可能になるなど、狭い道路でも立てられるよう技術が進歩したことが大きいという。

令和の小学生も「悲しい」

半世紀もの間、交差点上空に浮かび続けた「UFO型信号機」
周辺の住民からは別れを惜しむ声が聞かれ、町内会としても警察に「存続」を要望したが、かなわなかったという。

真下から見たUFO型信号機
真下から見たUFO型信号機

取材中に通りかかった男子小学生も「UFO型信号機は宮城県の誇り。学校でもクラスの同級生たちが悲しいと話している」と教えてくれた。住民に愛された“昭和生まれのUFO”は姿を消すが、安全を守り続けたその功績が消えることはない。

仙台放送
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