ジョー・バイデン大統領は、民主党幹部らによる「党内クーデター」で再選出馬の道を断たれたようだ。
“組織的”圧力…ついに撤退表明
バイデン大統領が21日(現地時間)に発表した声明は、まず高齢者の医療対策など政権が達成した成果を列挙した後こう述べている。
「私は再選を目指す意向ではありましたが、私が大統領選から撤退し、残りの任期を大統領としての職務に専念することが、党と国にとって最善の利益であると信じています」
— Joe Biden (@JoeBiden) July 21, 2024
言い方を変えると「私はまだ大統領職に専念できるが、大統領選を続けると党と国の利益に反するから撤退する」ということになる。党内から撤退へ圧力がかかったことへの恨み節にも聞こえるし、同時にその圧力が、大統領をもってしても抵抗できないほど高圧的で組織的であったことをうかがわせる。
事実、民主党の幹部の間ではバイデン大統領の不安定な言動を懸念して、再選を断念させる計画があったと言われる。
「バイデンを取り替える秘密計画が明らかに:クリントン、オバマ、ペロシ、それにシューマー(上院院内総務)が老齢化した大統領を見捨てる…それを何時実行するかが問題だ」
Secret Democrat plot to replace Biden revealed: How Clinton, Obama, Pelosi and Schumer will topple our aging President… and when they'll do it https://t.co/RuXYSRNfaO pic.twitter.com/EX6EheUsm4
— Daily Mail Online (@MailOnline) June 17, 2024
英国の大衆紙、デイリー・メール紙がこう報じたのは、バイデン大統領がテレビ討論で失態を演じる10日前のことだった。その記事はさらに、テレビ討論でバイデン大統領が失敗すれば、民主党のリベラル派幹部が一致団結してタオルを投げる(TKO負けを宣言する)という民主党関係者の証言も伝えていた。
この記事の画像(3枚)事実、テレビ討論会の翌日の28日、民主党支持を公言するニューヨーク・タイムズ紙電子版が「バイデン大統領は国に尽くすためにも大統領選を撤退すべきだ」という社説を掲載して撤退論の口火を切ると、まず民主党下院議員から撤退を求める声が上がり、やがて上院議員からナンシー・ペロシ元下院議長へとその動きが広まって、事態はデイリー・メール紙が予言した通りの展開となった。
“2期目不出馬”暗黙の約束だった?
こうなると、バイデン大統領としても抵抗の道を閉ざされた形になったわけだが、大統領側にも問題がなかったわけではない。
2020年の大統領選で大統領候補だったバイデン氏が副大統領候補にカマラ・ハリス氏を選んだ時に、CNNはツイッター(現在のX)に次のようなツイートを投稿した。
「ジョー・バイデンは、トランプに対するレースを戦う上でその可能性を最大化し、またバイデンが身を引く決断をした場合に備えて準備ができる経歴を持つ人物を選んだ」
Joe Biden made the pick that maximized his chances of continuing to make the race a straight referendum on Trump while also selecting someone whose resume suggests being ready to step in, if and when Biden decides to step aside. | Analysis by @CillizzaCNN https://t.co/Ek4d6sfGfT
— CNN (@CNN) August 11, 2020
これを引用した右派のニュースサイト「インフォウォー」は、こうセンセーショナルに伝えた。
「爆弾宣言!バイデンが当選後、ハリスに大統領職を譲る計画をCNNが確認」
当時77歳だったバイデン氏は、2期目の再選選挙には出馬しないと周辺に漏らしていたと伝えられた。資金集めの集会などでも「私は(若い政治家にチャンスを与える)つなぎ(transitional)」の候補者なのです」と言った記録が残っている。
バイデン氏はこの時、2期目には出馬せずハリス氏に大統領職を禅譲することを暗黙の内に民主党幹部に約束したのではなかったのだろうか。あるいは党幹部の方がバイデン氏の意向を誤解したのかもしれない。
いずれにせよ、4年経っても大統領の座を手離さないバイデン大統領を「約束違反だ」とする空気が民主党幹部にはあったようで、それが「党内クーデター」を引き起こし、バイデン大統領は意に沿わぬ形で政権を終えることになるようだ。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】