北海道新幹線札幌延伸に向け、8本目のトンネルが7月18日に貫通した。
しかし、トンネル工事は最大で4年遅れ、延伸延期の要因となっている。
巨大な縦穴が掘られた最前線に初潜入した。
そこには水との戦いがあった。
トンネル工事最前線 続く難工事の現場に潜入
「すごいですね!」
「あんまり一般の方は見られない風景」

北海道新幹線札幌延伸に向け最大の難所となっているトンネル工事。
巨大な縦穴が掘られた羊蹄トンネルにカメラが初めて入った。
北海道の長万部町と八雲町をつなぐ北海道新幹線立岩トンネルは、

7月18日に貫通し、地元住民などがその瞬間を見守った。

全長約17キロ、掘り終わるまで10年かかった。

「こういう場を見れて貴重な経験だった」(地域住民)
「色々大変なことがうまくいくことを祈る。早く開通してほしい」(地域住民)
札幌までのトンネルで掘削が終わったのはこれで8本目。
残りは9本。

難工事が続いている。
羊蹄トンネル近くの山林に巨大な穴
ニセコ町の羊蹄トンネル近くの山林。
巨大な穴が空いているのが見える。

そして底には横穴も確認できる。

現場に行ってみると。
直径14メートル深さ35メートルを超える縦穴。
12階建てのビルがすっぽりと入るほどの大きさだ。
そしてそこに。
「今、コンクリートミキサー車が縦穴の中に降ろされていく」(三宅真人記者)

最大で重さ30トンにもなる大型のコンクリートミキサー車。
巨大なクレーンに吊られ縦穴に入る。

「あんまり一般の方は見られない風景だと思う。私の知っている範囲では、ここぐらいしかない」(鉄道・運輸機構 上松苑さん)
いったい何のための穴なのだろうか。

「新幹線工事で、羊蹄トンネルのシールドマシーンを最終的に解体して外に運び出すための立坑になる。岩塊があるリスクがあった」(上松苑さん)
倶知安町とニセコ町の間の「羊蹄トンネル」では2021年、シールドマシンで掘削中に5階建てのビルに相当する巨大な岩にあたった。

反対側から爆破して突破できたが、工期が4年遅れ、札幌延伸延期の要因となった。

トンネルではほかにも羊蹄山の噴火によって生じた巨大な岩がある可能性がある。
岩との戦い
縦穴の下に降りてみると。
「実際、掘削してみたら最大で4メートルほどの岩塊が見つかって砕いて撤去した」
縦穴がある場所は羊蹄トンネルの中央付近。

当初はシールドマシンを解体し取り出すだけの予定だったが、札幌側を掘ったところ岩が見つかった。

重機で撤去できたが、さらに函館側にもほかの岩があるとみられ、状況によっては工期がさらに遅れる恐れもある。
“毎分15トン” 地下水との戦い
そして敵は岩だけではない。
「非常に羊蹄山付近の山は水が豊富でして、掘削するときは水位を下げながら工事を進めていきたい」(上松苑さん)

湧き水だ。

札幌までの工区の8割はトンネル。
ルート近くには、羊蹄山など山々が連なり、地層に含まれた水がトンネル内に吹き出てくる。

場所によっては毎分15トンも出る現場もある。
複雑な地形との戦い
実際に北海道の北斗市と八雲町間を貫く「渡島トンネル」では、2022年3月、土砂が流入し薬液を注入したり鋼材で補強する必要が生じ、月に65メートル進む予定が、20メートルしか進まない区間も出ている。

噴火で生じた巨大な岩や地下水による複雑な地形。
大自然が立ちはだかるが、現場ではこれ以上工期を遅らせることはできないと考えている。

「労働者確保もなかなか難しいところもあるし、働き方改革で労働時間が少なくなったりとか問題がある。それとは別に、しっかり工程短縮するような工夫をして一刻も早く貫通に向けて施工を進めるよう努力している」(上松苑さん)
難所が続く新幹線工事。
札幌延伸を果たす日まで戦いは続く。