立憲の政党支持率が急落!

都知事選で元立憲民主党の蓮舫氏が予想外の3位に沈んだが、翌日に出たNHKの世論調査では立憲の政党支持率が前月の9.5%から5.2%に急落した。

共産党の小池晃書記局長と蓮舫氏 「R」のTシャツ姿 7月5日
共産党の小池晃書記局長と蓮舫氏 「R」のTシャツ姿 7月5日
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「蓮舫惨敗」の原因は共産党との共闘で「立憲共産党色」を強めたためと見られるが、そのネガティブイメージが立憲民主党本体にも及んだと見るのが普通だろう。何人かの自民党の人たちに聞いてみると、当然彼らはこの構図を大変喜んでいた。

自民の低迷は自らが起こした政治資金規正法違反事件が理由だが、相対的に立憲の支持率が上がり、4月の衆院補選での立憲の3選3勝で、立憲党内からは「政権交代も見えてきた」と威勢のいい声も上がっていた。

連合からは「蓮舫氏は共産党からの候補者のように見えた」との苦言まで出た
連合からは「蓮舫氏は共産党からの候補者のように見えた」との苦言まで出た

だが立憲は今後は共産と組みにくくなり、ちょっと組んだだけでも自民から「また組んでる!」と非難されることになる。これは選挙を戦う上で非常に厳しい。

石丸氏は怖い人?

都知事選のもう一つの話題だった「石丸現象」は今後国政にどう影響するのか。

165万票を取り、蓮舫氏を抑えて2位に入った石丸伸二氏の選挙後の報道対応について、国民民主党の榛葉賀津也幹事長は10日の会見で「ちょっと怖かった。引く人もいるのではないか」と述べたが、筆者も同じ感想を持った。

選挙後のインタビューでの当たりの強さに驚いた人も多いだろう
選挙後のインタビューでの当たりの強さに驚いた人も多いだろう

石丸氏は安芸高田市長時代から既成政党の議員や大手メディアの記者と激しく対立し、それで人気を得てきたのだが、今回の対応を石丸ファンはどう見たのだろうか。

「今の政治を変える」と主張して165万票を取った石丸氏は「今の政治」をやっている自民にとってはかなりの脅威になると思うのだが、自民党の人たちはそれほどの危機感を持っていないようだ。

165万票を獲得した石丸氏への自民党の警戒感は薄いようだ
165万票を獲得した石丸氏への自民党の警戒感は薄いようだ

理由は石丸氏が具体的な政策をまだあまり明らかにしていないこと、本人が「完全無所属」をうたっている以上、他党との協力や新党結成という話とは矛盾してしまうこと、たとえ大きな塊を作るにしても早ければ年内、遅くとも来年秋までに行われる衆参の選挙には間に合わないだろうということだった。

つまり立憲は蓮舫氏のせいで弱っている、「怖い」石丸氏もまだどうなるかわからない。だったら9月の総裁選で新しい総裁を選んで年内に解散すれば過半数確保できるかもしれない、というのが今の自民の「気分」のようだ。

進次郎とコバホークで勝負か

問題は誰を総裁にするかだ。「実力」だけ考えたら岸田文雄総裁の続投がベストだと筆者は思うのだが、現実にはもう厳しいだろう。

と言ってこれまで名前が挙がった茂木敏充(68歳)、河野太郎(61歳)、石破茂(67歳)、高市早苗(63歳)、上川陽子(71歳)、加藤勝信(68歳)、林芳正(63歳)氏らは41歳の石丸氏から見ると「大人」と言うより「老人」に見えてしまう。

石丸氏を全国区に押し上げた“切り抜き動画”
石丸氏を全国区に押し上げた“切り抜き動画”

石丸氏本人がこの先どこまで伸びるかわからないが、今回の都知事選で「今の政治」に強い不満を持つ人がかなりいることは明白になった。また選挙戦も「ショート動画によるイメージの拡散」が重要な手段になった。たとえ石丸氏が伸びなくても第2第3の石丸は今後必ず出てくる。

だから小泉進次郎(43歳)、小林鷹之(49歳)氏くらいまで若返らないとダメなのかもしれない。

コバホーク氏は49歳
コバホーク氏は49歳

政策遂行ならコバホーク(小林氏)を筆者は推すが、進次郎も捨てがたい。石丸氏の「怖い」言い回しが「石丸構文」と呼ばれてネットで話題になっているが、進次郎の「ポエム」な受け答えが「進次郎構文」として「ホッとする」と再評価を受けている。

石丸構文のおかげで進次郎構文がリバイバルブームに
石丸構文のおかげで進次郎構文がリバイバルブームに

もし石丸氏が総選挙で再びメインステージに出てくるなら、そこに進次郎をぶつけるというのは悪い手ではない。

蓮舫惨敗で自民は一息ついているが、政権を失うかもしれないという危機的な状況は変わっていない。政治を取り囲む環境も大きく変わりつつある。もし政権を維持したいのなら自民は何か「とんでもないこと」をした方がいいと思う。

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ客員解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て報道局上席解説委員に。2024年8月に退社。