「街路樹が突然倒れる」。ちょっと想像がつきにくいが、広島市の平和大通りでは、倒木が相次いでいて、木の専門家、樹木医による詳細な点検が始まった。木が倒れる原因は何かを取材した。

1年3カ月で3回の倒木

広島市中心部の平和大通りでは、2024年6月23日に高さ10メートルの木が倒れた。

倒木は2023年3月と8月にも起きており、街路樹約1800本の一斉点検が2023年9月に行われた。さらに詳細な調査が必要な樹木については2024年9月から再度点検を予定していたが、今回、6月に10メートルの木が倒れたことを受けて点検が前倒しされた。

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7月8日には、広島市が委託した木の専門家、樹木医が通り沿いの街路樹の強度を確かめるために器具などを使い点検を行った。

点検は、地面に近い部分を重点的に見て進めているという。広島市中区の建設部維持管理課・谷口智優技師は、「市民の関心も高いので一日も早く安心してもらえるよう点検を進める」と話した。

広島市は7月中にも調査の必要な415本について点検を終える方針だ。取材した久保田記者が解説する。

過去の倒木は「根」が原因

久保田千晶記者:
公共の場で木が倒れたことは、広島県内では、過去にいくつか例があります。

久保田千晶記者
久保田千晶記者

福山市の公園では2023年5月に倒木でブランコが大破。木が倒れたのは子供のいない時間帯とみられ、けが人はいませんでした。このときは根の発達が不十分だったこと、まとまった雨が原因とのことでした。

一方、三原市の公共施設では2014年、高さ15メートルのポプラの木が倒れ1人が死亡、1人が重傷を負いました。

このときの倒木の原因は「根腐れ」でした。

木の種類は様々

久保田千晶記者:
倒木が相次いでいる広島市の平和大通りは、人や車の通りが多いので、昼間の時間帯に倒木が起きると心配です。木の種類が倒木と関係あるかを見てみると…6月に倒れたのは、高さ約10メートルの「アメリカサイカチ」でした。

前年2023年3月、少し西側では16メートルの「クヌギ」が倒れ、停車中の車を直撃しましたが、車に乗っていた人にけがはありませんでした。2023年8月には、すぐ近くで7メートルの「トチノキ」が倒れています。木の種類は様々だということがわかります。

街路樹は戦後復興のための全国からの寄付

久保田千晶記者:
私は取材で、一般的な街路樹の寿命を市の担当者に聞きましたが、木の種類がたくさんあって一概には言えないということでした。なぜ、いろいろな種類の木が植えられているかというと、1957年から始まった「供木運動」で、焼け野原になった広島に緑を取り戻そうと植樹活動が行われ、約2年間で2500本余りが寄付されたといわれています。

平和大通りの緑化は善意から進められてきたこともあり、広島市は街路樹は大切に守っていく方針です。これまでも広島市は点検を複数回行い、危険性のある樹木は伐採してきましたが、倒木が相次いだことで点検の基準を厳しくするなど、一歩踏み込んだ対応が求められます。

平和大通りで、これからどのように木と共存していくか。広島市は平和大通りのうち中心部のエリアについては、都市公園として民間とともに「公園化」して整備する計画を進めています。

久保田千晶記者
久保田千晶記者

松井市長は先日の会見で「多くの人が利用できる施設にし、樹木に関してもチェックを厳重にしていく」と話しており、今後「公園化」されればよりにぎわいが生まれるだろう。平和のシンボルとしての街路樹は、その安全性をいかに高めていくかが問われることになる。

(テレビ新広島)

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