広島など瀬戸内の一部地域では、今の時期にタコを食べる習慣がある。ただ、瀬戸内海のタコは年々漁獲量が減っているという。市場で取材した。
ピーク時の3割まで減少
広島市中央卸売市場の1680年創業の老舗魚卸店で、タコに今、何が起こっているのかを聞いた。

広島市中央卸売市場・吉文 吉本崇仁 社長:
年々入荷が少なくなってきている。昔ながらの魚屋さんだと「どこどこの産地のタコがいい」と特定の産地を希望する人が多いが、年々とれなくなってきている

瀬戸内海のタコの漁獲量は、年々減少傾向にあり、2011年からの10年間で、6割程度に、ピーク時の2002年と比較すると、3割以下にまで減少している。

広島市中央卸売市場・吉文 吉本崇仁 社長:
タコは、いつもあって、値段も一定という感覚があるが、年々値段も高くなって、高い時は、通常の1割くらいは当たり前に上がっている。円安の影響で輸入ものが高くなると、必然的に国産の需要が高まる。輸入のタコが高くて使えなくなり、国産のタコの需要が高くなって、値段がさらに上がるという構図。

辰已麗アナウンサー:
タコの漁獲量が減っている原因としては、釣り人を含む乱獲や、水温の上昇などの環境の変化、あるいはエサの減少をあげる人もいます
さて、そんな貴重になったタコだが、ちょっと、ひとひねり、工夫したタコ料理を出す店が広島市にある。辰已アナウンサーが取材した。
タコの食感を生かし、ほかの食材とアレンジ
和醸 薫る・店主の増田さんは市場で働いていたこともある魚の目利き。この日は広島・江田島でとれたタコをさばく。タコの身を完全に切りきらないで調理する。ここが、プロの技だ。

増田さんはハモの骨切りのような感じと話す。ぎりぎりで包丁を止めて、身がつながっているという状態だ。

このタコを炭火で、さっとあぶり、そこに糸ウリ、ジュンサイ、オクラなどの旬の野菜を盛り込んでいく。塩とスダチのジュレで味付けをして、最後にスダチの皮を振りかけて完成。

辰已アナウンサー:
いただきます。おいしい。タコのこりこりとジュンサイのつるっとした感じが、タコを包み込んでいる感じがして、おいしいです
もう一品、味わせてもらうことに。タコが入ったイモのまんじゅうを揚げるという手の込んだ品だ。

タコを柔らか煮にしたものを具にして、サトイモとヤマトイモと安芸津のジャガイモを混ぜて蒸し、裏ごしたものを生地にしてあるという。

このまんじゅうに片栗粉を薄くつけて、油でカリッと揚げる。最後にくずでとろみをつけただしのあんをかけて完成。

さて、これをいただいてみると…。
辰已アナウンサー:
タコがやわらかい。おいしいです
イモの食感に合うようにタコの硬さを合わせてあるそうだ。

タコは刺し身や天ぷら、酢の物といった定番料理以外にも、こうした旬の食材と合わせた調理もできる相性のよさが、瀬戸内の名物たるゆえんと言えそうだ。
(テレビ新広島)