信州で人気の魚肉ソーセージ。今年(2024年)で丸善のホモソーセージが発売70年を迎えた。実は長野県が全国1位の消費地。生産拠点の工場で山国・信州で根付いた理由やメーカーおすすめの食べ方を取材した。

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今年で70年「ホモソーセージ」

売り場でひときわ目を引く赤いパッケージ。丸善の「ホモソーセージ」だ。昭和29年・1954年の発売から、2024年で70年を迎えた。ポテトサラダの具にしたり、天ぷらにしたり、もちろん丸かじりも。

長野市民に聞くと、「焼いたりして食べる」、「緊急用に何にもない時にも使えるし、便利。小さい頃、ハムなんてなかったから」いう声が。

丸かじりも
丸かじりも
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長野県内の購入量は全国1位

子どもからお年寄りまで愛されている丸善の「ホモソーセージ」。実は、長野県内の購入量はダントツの全国1位。年間出荷量の約2割が県内で消費されている。

県内外にスーパーを展開する「綿半」によると、2024年1月から5月までの1店舗あたりの販売量は、お隣・山梨県の店舗が平均300セットに対し、県内店舗は平均1200セット。実に4倍だ。

ひときわ目を引く赤いパッケージ
ひときわ目を引く赤いパッケージ

生産拠点の茨城の工場を取材

人気の秘密を探ろうと、茨城県小美玉市にある丸善美野里工場を訪れた。

年間約3000万本生産されるホモソーセージの8割以上がこちらでつくられている。

丸善美野里工場(茨城県小美玉市)
丸善美野里工場(茨城県小美玉市)

主な原料は、スケソウダラ。冷凍のすり身を使用している。

さらにー。

丸善の松本勝利取締役生産本部長は、「すり身になったマグロも入っていますが、時には新鮮なマグロも練り合わせて使っている」と話す。

主原料はスケソウダラ
主原料はスケソウダラ

実は70年前、商品化された際の主原料はマグロだった。コストの関係で1970年ごろ、スケソウダラに変わったが「変わらぬ味を」と現在も使い続けている。

松本さんは「やっぱりマグロの味が出てきますので、一番魚の特徴が出ると思う」と話す。

丸善 取締役生産本部長・松本勝利さん
丸善 取締役生産本部長・松本勝利さん

スケソウダラやマグロのすり身は、サイレントカッターと呼ばれる機械に投入され、混ぜ合わされる。

松本さんは、「この練り(の工程)は非常に重要で、ホモソーセージの由来でもある「ホモジナイズ」、均一化してしっかり練りこむことによって丸善特有の弾力、食感がここで生まれます」と説明する。

機械に投入し混ぜ合わせる
機械に投入し混ぜ合わせる

ホモソーセージの「ホモ」は、均一化を意味する、英語の「ホモジナイズ」から取られている。味や色をつけながら滑らかになるまで練れば、ホモソーセージの「素」の出来上がりだ。

続いては、充填。

1秒間に2本ほどのペースで、「素」がフィルムに詰められていく。

充填してすぐは柔らかい状態のため、ボイルする。

充填してすぐは柔らかい状態
充填してすぐは柔らかい状態

圧力釜でボイル殺菌すると、ボイルされてパンパンに膨らんだホモソーセージが完成した。

おなじみの赤い包装をして、全国へと発送される。

圧力釜でボイル殺菌すると完成
圧力釜でボイル殺菌すると完成

なぜ、長野に根付いたのか?

なぜ、信州にホモソーセージが根付いたのかー。

メーカーの幹部に経緯を聞いた。

丸善の丹羽耕二取締役は「終戦当時の中、食品もほとんどない中で、皆さんで気軽に常温で食べられる食べ物が作れないかと、ホモソーセージ作りが始まったと聞いています」と話す。

丸善 取締役・丹羽耕二さん
丸善 取締役・丹羽耕二さん

丸善は終戦直後の1945年、東京・上野で創業された。魚肉ソーセージが発明されると、全国各地で作られ丸善も手掛けるようになった。

販売網を広げるとき、すでに他社が東京・大阪・名古屋の大都市圏でシェアを拡大していたため、丸善は長野や山梨、福島といった東日本の地方都市をターゲットに営業を始めた。

まず、それが信州に根付くきっかけになったのではと言う。

1945年、東京・上野で創業(提供:丸善)
1945年、東京・上野で創業(提供:丸善)

また、丹羽さんは、「比較的ホモソーセージはお魚の匂いがするソーセージということはよく話してもらう機会があり、競合さんとの比較、食べ比べということも行われたようで、その結果、ホモソーセージって意外においしいじゃないかと。(消費量1位は)特に長野の皆さまに評価いただいて何十年も長野県で愛していただいている結果では」と話す。

お魚の匂いがするソーセージといわれている
お魚の匂いがするソーセージといわれている

専門家「常温保存できる」

信州の食文化に詳しい長野県立大学の中沢弥子教授は「かつては鮮魚を入手するのが難しく、でこのホモソーセージだと、一定の期間おいしく計画的に使える。おもてなしにも上手に使えたし、続いている理由じゃないかと思う」と話す。

冷凍技術が発達しておらず、鮮魚が手に入りづらかった時代、ホモソーセージは常温で保存できる加工品として重宝されきたのではないかと言う。

ニュースで度々、紹介してきた「ビタミンちくわ」や「サバ缶」が根付いたのと背景は同じようだ。

長野県立大学・中沢弥子教授
長野県立大学・中沢弥子教授

たくさんとれる野菜との相性良し

さらにもう一つー。

中沢教授は「天ぷらだったり、酢の物だったり、サラダだったり、おいしい野菜がとれる長野県なので、そういったものと組み合わせておいしく食べる工夫をしていたということではないか」とし、県内でたくさんとれる野菜との相性が良かったことも、根付く理由になったのではと言う。

天ぷらやサラダにも使われる
天ぷらやサラダにも使われる

社員が考案 新たな食べ方

丸善では、70周年を記念して、「新たな味わいを」と新商品「チーズ入りホモソーセージ」の販売を始めた。

チーズ入りホモソーセージ
チーズ入りホモソーセージ

さらに新たな食べ方も。社員が考案したおにぎりの具にホモソーセージを使う「ホむすび」をお薦めしてる。

天かす、青のりをご飯に混ぜて、ごま油やめんつゆで味を整えた「天むす風ホむすび」。

天むす風ホむすび
天むす風ホむすび

信州の食卓を飾って70年。

丹羽取締役は、「この70年、同じような商品を忘れることなく、買い続けて食べ続けていただくことはメーカー冥利に尽きますので、長野の方に信じて食べていただく機会を守り続ける意味でも、引き続きまじめに、変わらぬ味を作り続けてまいりますので、ご愛顧のほど、ひとつこれからもよろしくお願いします」と、長野県民にメッセージを送ってくれた。

今年で発売70年を迎えた丸善のホモソーセージ
今年で発売70年を迎えた丸善のホモソーセージ

(長野放送)

長野放送
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