蒸し暑い夏。帰宅して靴を脱ぐと、一日分の汗を吸って蒸れ蒸れ…。誰しもそんな経験があるだろう。
「たくさん汗をかく夏は特に、靴のにおいケアを怠っていると、下駄箱に靴のにおいが染みついていき、やがて玄関全体に嫌なにおいが充満してしまいます」
そう話すのは、“におい刑事”の愛称で活躍する臭気判定士の松林宏治さん。
玄関に嫌なにおいが充満するのを防ぐには、普段のケアが大切だという。下駄箱ににおいが染みついてしまった場合の対処法も教えてもらった。
におい対策は普段のケアから
「玄関のにおいは、家の印象を決めます」という松林さん。そんな玄関で嫌なにおいをさせないために普段から気を使ってほしいというのが靴のケアだ。
「まず、毎日同じ靴を履かないことが大切です。最低でも3足をローテーションで履いてほしいですね」
足の裏には、足の甲の3倍、背中や胸の5~10倍の汗腺があり、1日にコップ1杯分の汗をかくと言われている。そのため、毎日同じ靴を履いていると、靴が乾くタイミングがなく、においの元になる雑菌が繁殖してしまうのだ。
帰宅後のケアも重要だ。帰宅して靴を脱いだらすぐに下駄箱にしまうことを家庭のルールにしている人も多いかもしれない。しかし、「においの観点からいえばそれはNGです」と松林さん。
この記事の画像(5枚)靴を脱いだら、まずスプレータイプの除菌消臭剤を噴射する。そして、最低一晩は玄関に置いてから下駄箱へ。靴専用の脱臭機もあるので、気になる人は検討してみてもいいかもしれない。
雨で濡れてしまった日は、靴に新聞紙を丸めて入れ、水分を吸収させて乾かしてからしまってほしい。
なお、下駄箱にしまう際は、十円玉数枚、あるいはアルミホイルを丸めたものを数個入れておくと、金属イオンによる除菌や抗菌による消臭効果が期待できるという。
靴を整理して下駄箱に風を通す
普段の習慣に加えて時々やってほしいというのが、下駄箱の“換気”だ。
まずは、整理を兼ねて、いったん下駄箱から靴を全部出す。そしてしばらく風を通して空気を入れ替える。湿度が高い季節は、最低でも月に1回、においが気になる場合は少し回数を増やして2~3回程度やるといいという。
ついでに、子供の運動靴やスニーカーなど、洗える靴はできるだけ洗ってしまおう。時間をかけられない人は、コインランドリーの靴専用の洗濯機を利用するのもいいだろう。洗えないパンプス、夏の間に履かないブーツなどはクリーニングに出すという方法も。
「仕上げに、下駄箱の各段に、活性炭か、小皿などに広げた乾燥したお茶やコーヒーの出し殻を置くのもお勧めです」
活性炭やお茶やコーヒーの出し殻にはにおいを吸着する力があるので、いやなにおいを別の香りに頼らずに抑えてくれるという。吸着しきると効果がなくなるので、交換は週1くらいを目安に。
下駄箱自体が臭い場合は…
「靴を出して換気をしても、下駄箱自体がなんだか臭う…」という場合は、既に下駄箱ににおいが染みついてしまっている可能性が高い。だが、あきらめなくても大丈夫。
「染みついてしまったにおいは、 “ベイクアウト”という方法で軽減することができます」
やり方は次のとおり。
(1)下駄箱の内部の面に霧吹きで水を噴きかけ湿らせる
(2)ドライヤーで熱して水を蒸発させる
(3)換気する
(1)~(3)を何度か繰り返すとにおいが徐々に抜けていくのだ。これは、高温多湿になるとにおい分子の活動が活発になり揮発しやすくなることを利用した方法で、脱臭のプロも活用しているという。
なお、ドライヤーの代わりに、ハロゲンヒーターとサーキュレーターの組み合わせで行ってもOK。
ベイクアウトは靴にも有効だ。やり方は同様に、靴の中を霧吹きで湿らせて、ドライヤーで熱して水分を蒸発させるだけ(デリケートな靴は避ける)。
「ただし、ドライヤーの風が当たるととても臭いので注意してくださいね」
合わない靴はにおいもキツくなる
ちなみに、「靴のサイズが合っていないと、においもキツくなります」と松林さんは言う。
理由は、靴が小さすぎると通気が悪くなり、靴の中が高温多湿・密閉状態になってしまう。一方、大きすぎると、歩くたびに摩擦が起きて熱が生まれ、汗をかきやすくなるからだ。いずれの場合も、においの元になる雑菌が繁殖しやすい環境になってしまう。
この夏は、下駄箱の掃除と合わせて、靴の点検やにおい対策を行ってみてはいかがだろうか。
■特集記事一覧はこちら「臭い」もしや自分も?イヤ~な“におい”の撃退法
■ストレスで“おしっこのようなにおい”!?「疲労臭」についてチェックしっかり洗っているのになぜ?全身から漂う“おしっこの臭い”は「疲労臭」かも…セルフチェック法と5つの発生要因
松林宏治(まつばやし・こうじ)
臭気判定士。工場や総合病院から一般の家庭まで、あらゆるにおい問題を解決する企業・共生エアテクノ代表取締役。自身の嗅覚をたよりにさまざまなにおい問題を解決してきたことから“におい刑事”の異名をとる。著書に、『臭気判定士・におい刑事(デカ)が教える! ニオイで女性に嫌われない方法』(インプレス)。