厚労省は2040年に、高齢者の3人に1人が認知機能の低下が見られる「認知症」と「軽度認知障害(MCI)」になるという結果を発表しました。

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今回初めて厚労省が推計した「軽度認知障害」とは、軽い物忘れなどから始まる、「健常な状態」と「アルツハイマー型認知症」の中間の状態になります。

そのままにしていると、認知症につながる恐れもありますが、対策次第では改善する可能性もあるといいます。

愛知県の国立長寿医療研究センターでは、運動を通して認知機能の低下を防ぐための運動教室が開かれていました。

2年前から認知症予防の運動教室に参加・妻(82):
自分では…。人がどう思っているかはちょっと分からないですけど、自分では正常だと思っているから、それが、もはやおかしいのかもしれないわね。

2年前から認知症予防の運動教室に参加・夫(83):
生活上、日常の一般的な生活では、特段困ることはないんですけど。ただ、(妻が)言われたこと忘れちゃうという点では、少し障害が出てきているかな?という気がしますね。

認知症予防の運動教室に参加 74歳女性:
台所から離れちゃったら、「あっ!焦げてる、大変、焦げちゃった」って。忘れてはないんだけど台所から離れたら、もうこっちでなんかごそごそやっていると、そっちに集中しちゃうのね。

こちらの教室は、脳トレと運動を掛け合わせることで、認知機能の低下を防ぐ狙いがあるといいます。

認知症予防の運動教室 インストラクター:
ここでは動きを、例えばいくつか…2つ3つ覚えていただいたりとか、そういうこともしながら進めています。血行促進することと、ちょっと脳トレのような、頭を使うということが、日常にはいいんじゃないかということなので、そういうふうに進めています。

「忘れたことを覚えているか」

ただの“物忘れ”と、「軽度認知障害」はどのような違いがあるのでしょうか?

30年以上にわたり認知症治療に携わってきた、京浜病院の熊谷賴佳院長は、その違いを「忘れたことを覚えているか否か」だと話します。

京浜病院 熊谷賴佳院長
京浜病院 熊谷賴佳院長

京浜病院 熊谷賴佳院長:
物忘れしたことを、覚えているのか。また、指摘されたときに「そうだった」と言えるのか、「いや、そんな約束をした覚えはない」「そうだっけ?」と思い出せない。その違いが大きいです。

――物忘れを放置すると、そのうち物忘れ自体を認識できない「軽度認知障害」になっていったりするのですか?
そうですよね。なんでもそうですが、なれ合いのように、「いいや、いいや」ということを繰り返していると、いつの間にか本物になるかもしれません。

実際に軽度認知障害の人が体験したケースを、以下にいくつかご紹介します。

・約束を忘れてしまい、待ち合わせの場所に行かない
・知っている人なのに、人の顔が分からない
・料理中に電話がかかってきて、火をつけていることを忘れる
・財布を盗まれないように隠したら、隠したこと自体を忘れてしまい、盗まれたと勘違いして家族や友人を疑ったり、警察に電話をしてしまった

――「ここからが認知症」と判断する条件のようなものはあるのでしょうか?
京浜病院 熊谷賴佳院長:

生活や仕事に支障をきたすようになったら「認知症」です。つまり、周りの人となんとか折り合いを付けて、自立した生活をできているうちは、軽度認知障害ですんでいるのですが、何か支障が、人との摩擦、事件性や家族とのもめ事、そのような事を起こし始めたら、認知症かもしれないと。

熊谷院長によると、認知症予防は40代ぐらいから始めるのが重要だといいます。

京浜病院 熊谷賴佳院長:
(始めるのは)若ければ若いほどいいのではないでしょうか。脳トレなども一つですけども、大きなこととしては健康管理です。あとはメンタル管理、心のケア。
落ち込んだりとか、悩んだりとか、そういうことは非常に脳に良くないですよね。そういう時間が長くなればなるほど、ストレスになります。それがたまりたまって、異変になることもあるので、精神的な気分転換。他の健康も、例えば血圧だとか糖尿病だとか言っていけばキリがないけれども、生活習慣病ですよね。

認知症にならないためにできること

認知症にならないためには、予防策として以下のようなものがあります。

▼認知機能を鍛える
マージャンや囲碁、楽器を演奏したり、陶芸やガーデニングなど、“考えること”と“手先の細かい運動”を同時に行うことで、脳機能の活性化に。
週に2回、1回1時間、マージャンをすることを約3カ月続けたところ、認知機能や短期記憶の維持に効果が認められた。

▼食事の質を良くする
旬の食材を取り入れたり、温かい物や冷たい物と温度変化をつける。彩りや和洋中を意識するなど。
夕食以降は米やパンなどの炭水化物を避けて、間食・夜食などを食べない。

▼糖尿病でリスク増加
糖尿病の人は正常な人に比べて認知症の発症リスクが2.1倍になるという調査結果も発表されている。
散歩程度の軽い運動でも、週3回以上続けていると認知症のリスク軽減に。速めのウォーキング、サイクリング、ダンスなどはより効果が大きい。

――軽度認知障害の方に、してはいけない対応はあるのでしょうか?
京浜病院 熊谷賴佳院長:

まず、本人の言うことを“受け入れる”ということが大事です。
要するに、間違ったことを言っているときに、家族の方は「間違っているじゃないか」「違うでしょ」という否定の言葉から入りがちですよね。それはものすごく傷つくんです。本人のプライドも傷つくし、いら立ちになって怒りになります。何もいいことはないんですね。分かっていないものは分かっていないんですから。それを責め立てるように、「言ったでしょ」「したでしょ」と言われると、「してないよ!」「知らないよ」という感じになるんですね。
ですから、それは一度受け止めて「そうだったの」という言う勇気。でも大変ですよ、それは。(「めざまし8」6月19日放送より)