前半戦を締めくくる第19節の藤枝MYFC戦に勝利した清水エスパルス。スコアこそ1対0であったものの、藤枝の杉田主将に「思うつぼにはまった」と言わしめるほど内容は充実していて、首位ターンに成功した。

首位ターンもチームにおごりなし

2位・長崎との勝ち点を暫定4差でリーグ戦を折り返した清水エスパルスは、6月12日に行われた天皇杯2回戦で三菱重工長崎に9対0で勝利した。

相手はアマチュアチームとはいえ、高卒ルーキー・郡司がプロ初ゴールを含む4得点を挙げるなど、9対0と貫録を見せつけ、チームに勢いをつけた。

後半戦の初戦は愛媛と対戦。ホーム開幕戦となった第2節で2対0と快勝を収めた相手だが、この試合で2点を挙げたエース・北川は「相手も成熟している」と緩みはない。

最近のエスパルスは3バックシステムの習熟に力を入れていて、シーズン当初は先行逃げ切りのゲームで試合終了間際を乗り切るための守備的戦術として導入していたが、現在では指揮官が標榜する“超攻撃的”を実践する手段として用いられている。なぜなら、ウイングバックとサイドハーフの“上がり”によって5トップという強力な布陣も可能になるからだ。

ここまでは11節連続で首位の座をキープしているが、昨季は一度もその景色を眺めることなく、J1昇格をも逃した。

シーズンも後半に入る中、J1昇格、J2制覇という目標を達成するためには今後も難関が待ち受けると予想される。相手は当然、首位から引きずり下ろそうと高いモチベーションで向かってくるだろうし、得点パターンや主力選手の動き、セットプレーなど様々な研究を重ね、対策を打ってくるだろう。

こうした中で、秋葉監督は4-4-2、4-2-3-1、3-4-2-1と複数のシステムを試合や局面ごとに選択し、相手の分析を“無”にすべく選手を動かす考えだ。

長いリーグ戦を戦い抜くためには生半可な努力では持ちこたえられない。今のエスパルスは走る、蹴る、止める、球際で勝つといったフットボールの本質で相手を凌駕するという基本を大事にしつつ、常に変化を求めている。

その意味で、愛媛戦が後半戦の行方を占う試金石となることは言うまでもない。

秋葉監督「変化をもたらしながら」

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-愛媛戦に向けた抱負
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
やり合いだったら自分たちに分がある。自分たちも走るが、相手も走らせる。フィジカルとかメンタルの削り合いなら負ける気はしないし、それで負けていたらJ1では話にならない。そこもしっかり意識しながらやりたい。

ちなみに去年も自分たちは夏場で強かった。ボールを動かすことができるチーム。自信はある。

守備なら一歩早く寄せられるかを進め、ハイプレスはもちろんだが、セットディフェンスの強化をしたい。最近の試合ではロングボールを入れてくるチームが増えたきた。ならば、裏のスペースを消して、ミドルカウンターを狙うとか。ミドルでブロックを組めば近くにつけたくなるように、その精度を上げたいし、出来ればまた1つ武器が増えて相手が嫌がると思う。

-最近3バックを採用している狙い
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
後ろの守備を固くすることはあるが、それ以外にも攻撃でのびのび背後を取りに行くという効果が出ている。

攻めあぐねるかもしれないと思ったが、1トップではなく、5トップになるという形が見える。これは選手の気持ちの持ちようで変わる。3バックは5バックにもなるが、運動量のある選手が多いので前への圧が上がる。4-4-2システムより攻守に枚数が増えるという印象が強いし、オフェンスでそうした現象がおもしろい。選手によって違うんだと改めて感じる。

4バックと3バックは併用できるほど精度が上がった。また、4-2-3-1もできるし、今後、4-2-1-3に変えていきたいと思う。表記が違うだけかもしれないが3トップにしちゃおう、と。印象が全然違うと思う。変化をもたらしながらあと19試合を戦いたい。

北川主将「ブレないことが大事」

-前半戦最後の藤枝戦と天皇杯2回戦も勝ち、チームは上向きか
清水エスパルス・北川航也 主将:
それでもアウェーでは難しい戦いが続いているのは事実。この2連戦に勝てば目標にぐっと近づくので、そのためにチームとして、今までとは少し違うやり方だったり、何か変えて行こうということもあり、結果に結びつけることが自分たちの仕事。

-アウェーの難しさ
清水エスパルス・北川航也 主将:
いずれも先制点を獲られているということ。これがゲームを難している。相手はホームで先制点を狙うのは当たり前。さらに追加点も狙ってくる。

自分たちがホームでやることを相手もやってくる。自分たちに限らず、獲れないのなら獲らせないのも大事だし、自分たちから崩れないことが大切。

-ホーム開幕の愛媛戦では2ゴールを挙げ勝利
清水エスパルス・北川航也 主将:
シーズン通す中で相手も変わっていると思う。成熟度は高まっている。前の試合のようにはいかないと想定している。ただ、いいイメージはあるし、自分もここまでいい形できている。出来ることを最大限やりたい。

自分が研究されてくることもあるが、自分が点を獲れなくても、仲間が点を獲ってくれればいいと思っている。

夏場、暑いのは好きではないが、夏場に結果が出ているという感覚がある。暑さに左右されることなく、頭を使って、相手より走らないと結果はついてこない。ブレないことが大事だと思う。

-19試合を終えてチームとして自信を持ってやれていること
清水エスパルス・北川航也 主将:
結果として首位でいることは、去年一度も出来なかったこと。それを考えると、チーム、個々でも出来ていることがある。

ただ、最終節までそうとは限らないので気を引き締めなければならない。首位でいる気持ちで戦えるのは良いモチベーションとなる。

3バックと4バックのどちらのフォーメーションでも結果を出せているのは昨年と違うこと。それは自信になっている。天皇杯を含めた連戦で勝てたことは、若い力だったり、新加入選手の力だったり、全員の力がなければ出来ないこと。出た選手が結果を出せているのは良いこと。

前半戦は負けた後には必ず勝っている。理由はわからないが、チーム全員がそれを意識しているからなのか。自分はいつも変わらないモチベーションで何も変えていない。連敗しないことはどのチームにも大事。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

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外岡哲
外岡哲

テレビ静岡 報道部スポーツ業務推進役(清水エスパルス担当)。
1984年テレビ静岡入社。
1987年~1994年(主に社会部や掛川支局駐在)
2000年~2002年(主に県政担当やニュースデスク)
2021年~現在(スポーツ担当)
ドキュメンタリー番組「幻の甲子園」「産廃が街にやってくる」「空白域・東海地震に備えて」などを制作。
清水東高校時代はサッカー部に所属し、高校3年時には全国高校サッカー選手権静岡県大会でベスト11。
J2・熊本の大木武 監督は高校時代の同級生。