悩みを抱える少年少女の“居場所”でありつづけたいと、“警固”キッズと呼ばれる若者たちを見守る1人の女性がいる。これまでに話を聞いた若者は100人以上。子どもたちに寄り添い続ける女性の活動を取材した。

家出に妊娠…悩みを抱える若者たち

福岡市・天神の警固公園。午後8時を過ぎた頃、どこからともなく、たくさんの若者たちが集まって来る。アルコールやタバコを手にする若者たち。なかには違法な薬物を売買する若者もいるという。“警固キッズ”や“警固界隈”と呼ばれる若者たちだ。

若者たちの話を聞く藤野さん
若者たちの話を聞く藤野さん
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そんな若者たちに囲まれ、彼らの話に耳を傾ける1人の女性がいる。NPO法人「あいむ」の代表、藤野荘子さん(31)だ。

2022年から警固公園で若者たちに声をかける活動を始め、今ではほぼ毎日、警固公園を訪れている。この日も2カ月前から家出をしたきり、一度も帰っていないという若者と話をしていた。家出した理由は「親が怖いから」だという。

これまでに話を聞いた若者の数は100人以上。時には警察や児童相談所にもつないできた。
藤野さんは「こちらが待っているだけでは、支援が届かない子どもたちが多い」と感じ、声をかけていく活動を始めるようになったという。

そんな中、藤野さんの元に1人の少女が…。「どうして生理遅いんやろ?」と尋ねる少女に、藤野さんは「取りあえず病院だね、明日、病院。一緒に行こう」と答えた。

警固公園で知り合った17歳の少女、妊娠した可能性があるという。しかし少女は妊娠した相手が誰か分からないという。

少女「でもやっぱ…、1つの命やん」
藤野さん「うん。でも、自分で育てるのは無理じゃない?」
少女「自分では…、育てられないだろうね」
藤野さん「絶対、無理じゃん」
少女「いまは…、無理だね」

若者たちを見守る藤野さん。どういう悩みを持っている子どもが多いのか尋ねると「虐待とか、家出とか、不登校とか、学校でいろいろ、うまくいかなかったりとか、そのほか時々、妊娠とか中絶の話もあります」と現状を教えてくれた。

友だちでも先生でもない…でも味方

藤野さんが活動を始めたのは2019年、警固公園やSNSなどを通じて知り合った若者の「居場所」をつくりたいと月に2回、事務所で食事を提供したり、悩みを聞いたりしている。

さらに、この春からは新たな取り組みも始めた。この日、「あいむ」の事務所を訪れたのは、藤野さんが英語を教えている少女だ。

藤野さんは週に1回、居場所のない子どもたち相手に勉強を教えている。英語を教わっている少女は現在、親元を離れ施設で暮らしている。

この少女と藤野さんとの出会いはインスタのDMだった。「入院していて、嫌になっちゃって、脱走したときに誰かと話をしたくて…。『病院を脱走してしまって、でも戻りたくない。どうしたら?』」と書き込まれた少女からのメッセージに、藤野さんが「どこにいる?天神?いまから行く」とメッセージを返し、カフェで話をしたのが最初だった。

藤野さんのことを「友達でも先生でもない」という少女。「でも味方」と強く言った。いま少女は藤野さんと出会い、大学に進学することを考え始めている。大学では心理学の勉強をしてみたいと夢を語った。

「誰か見ている人は必要」

学校にも家庭にも居場所がない若者たちの背景には、不登校の生徒が増えているという事実がある。

文部科学省によると高校生の不登校の生徒数は増加傾向にあり、福岡県では2020年度は1924人だったのに対し、2021年度は2284人、さらに2022年度は2641人となっている。

「何かしら困難を抱えていて、改善されることもあるので、誰かやっぱり見ている人は必要だと感じる」と話す藤野さん。子どもたちに寄り添い続け、これからも子どもたちの居場所でありつづけたいと前を向いた。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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