山口戦に敗れたことで、首位をキープこそしたものの、2位・長崎との勝ち点差が1に縮まってしまった清水エスパルス。昨季はいずれも無失点で勝った相手だったが、序盤に失点すると、さらに前半の内にもう1点を加えられ0対2の完敗となった。

首位ターンに向け前半ラストゲーム

38節ある長いシーズンも次節・藤枝MYFC戦で折り返しとなる清水エスパルス。

ここまでに積み上げた勝ち点は40と、仮に次節敗れたとしてもシーズン当初に掲げた「1試合平均で勝ち点2の獲得」という目標は達成しているわけだが、同じ県内に本拠地を置くクラブの“先輩”として勝利だけを見すえている。

一方、MYFCは須藤監督の提唱する“エンタテインメント・サッカー”から質実剛健の堅い守備から速攻を仕掛けるチームへと様変わり。今季は序盤こそ苦しい試合が続き勝ち星に恵まれなかったが、徐々にペースをつかむと、直近7試合は5勝1敗1分と勝ち点を16も獲得して、順位を19位から10位へと押し上げている。

エスパルスの秋葉監督はシーズン前半最終戦を前に、「全員でやるべきことをやってきた」からこれまでリーグトップの13勝を挙げられていると胸を張る。

もちろん過去にすがりつくだけでは良くないが、首位を堅持している強さの要因を再認識し、チームとして実践する意識は重要だ。

カギを握るのは主将の北川や宮本が指摘する通り先制点。今季は先制した試合で12勝1分と負け知らずで、首位ターンが出来るのかエスパルスらしい“アグレッシブ”さに期待がかかる。

秋葉監督「もっと野心的に」

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-山口戦の敗戦を振り返って
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
今季まだ4回しか負けていないが、アウェイでの心の持ち方なのか戦い方なのか、何か工夫をしなければいけない。スタッフで今いろんなことを精査している。ただ、アウェイでも勝ち点は平均で2あって、決して負け込んでいるわけではないが、改善したいとは思っている。

次はホームなので、IAIスタジアムで我々らしいハイパフォーマンスを見せることが大事。天皇杯と合わせて2試合ホームが続くが、まずは藤枝戦、このダービーにどれだけパワーとエネルギーを注げるか最大限注力したい。

-6月5日の練習の狙い
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
試合3日前なので、(ゲーム形式では)いろんな引き出しを作りたい。まもなく2回り目に入るので、様々研究されてくる。いろんな戦い方やバリエーション・引き出しなど幅を広げたいと思っている。

3バックというミラーゲームも有り得る。いろんなシステムを使い分けられる、どんなものもできるのは我々の強み。選手のインテリジェンスの高さがあるからできること。特性や強みを使わない手はないとも思っている。1つのことを極めることも大事だが、それだけでは研究されやすいので、されないようにしたい。相手がマン・ツー・マンで来たら我々は個の能力が生かせる。個の力のないチームは組織力のみだが、我々はその両方を開放して当たりたい。

また、大事なのは全員でやるべきことをやるということ。なぜ、ここまで勝ってきたのか?首位に立っているのか?修正することも大切だが、勝ち点を積み上げてきた自分たちのストロングポイント、スピードがありパワフルでアグレッシブにやってきたから。横浜戦や山口戦でできなかった自分たち本来の姿を見せることだと思っている。

-藤枝の印象
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
「ギラギラ」感や「強いチームを食ってやる」などを持っていて、野心的な選手・監督のクラブという印象。そうしたものに対し受けて立つのではなく、我々もそれ以上の「優勝するんだ」とか「去年J1に上がれなかった悔しさを晴らす」だとか「J1に絶対昇格する」だとか、もっと野心的になるべき。目標とか掲げるものに近づけるようにする大事な一戦になる。あとはシーズンの半分をしっかり首位でターンできるように、しっかり戦いたい。

-ゲン担ぎはするのか
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
監督になってするようになった。選手にすべて任せているので(笑)勝った時と同じパンツをはいたり、同じ道を通ったり、負けたら変えたりといろいろ。

パワースポットにも行っている。久能山東照宮もロープウェイで行きたいがご利益がないと思い階段で上がるし、家の掃除もやっている(笑)

座禅はいつやるか(笑)

クラブハウスの選手による掃除も続いている。いいことだと思うし、クラブハウスの掃除担当者にアウェイでお土産を買ってくる気配りとか、そうしたことが勝負強さや我慢強さにつながるといい。

-久しぶりの夜の試合となる
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
ナイトゲームになるが、どちらかといえば好き。昼の試合だと朝の準備が忙しくなる。落ち着いて取り組める。ただ、選手がアジャストするのに時間がかかるので上手く調整してほしいと思う。

宮本選手「山口戦の経験活かし」

-山口戦は交代出場してからチームに推進力が増したように見えた
清水エスパルス・宮本航汰 選手:
0対2の状況で相手が引いていたのかもしれないが、秋葉監督からは「左右にボールを散らして、セカンドボールを回収して欲しい」と指示を受けて意識してできたが、「たら」「れば」になるが1点獲れれば起死回生が出来たかもしれない。やはり1点が獲れなかったという課題が残った試合。0対2の状況でも何とか勢いで得点を獲るつもりでプレーしていたが、結果につながらなかったのは残念。

外から試合を見るのは久しぶりで、そこはとても悔しかった。次も出るかどうかわからないが、ただ途中交代だったことは、体力的にリカバーできたとポジティブに捉えることもできる。

みんなより休めたことで、次出るときはより味方をサポートして、より相手にとって嫌なことを出来たらと思っている。悔しさをプラスのエネルギーに変えていきたい。

-藤枝戦が“ダービー”という認識は
清水エスパルス・宮本航汰 選手:
あまりないが、同じ県同士のクラブという感じで絶対に負けたくない。知っている選手は鈴木翔太(エスパルスユース出身)らがいる。

勝ったり負けたりが続いていて、今はいい状態とは言えない。ただ、自分たちが本来やる仕事や役割をしっかりできれば勝てると思うので、まずは自分たちがその状態に立ち上がりから持っていけるかどうか、相手の脅威になるプレーを出来るかどうかが自分たちに問われていること。

自分たちが主導権を握り、圧力をかけ、球際で負けないこと。山口戦の経験を活かして、前半から飛ばしていけるようにしたいと思う。

自分たちがどういったフォーメーションでいくかはわからないが、用意してきたものを出すことは変わらないので、3バックだろうと4バックだろうと準備したものをやることに変わりはない。

-今季は出場時間がとても長くなっている
清水エスパルス・宮本航汰 選手:
充実感はあるが出られないことは悔しい。ただ、白崎選手が(久しぶりに水戸戦で)出て点を獲って、結果として次の試合にも出るというのは納得できる正しい競争だと思っている。そういったところは尊敬している。同じポジションとして、成岡選手もそうだが、出てパッと自分のプレーが出来るのは凄いと思うし、学ぶべきところは学べた。

自分が出た時は自分のプレーをすると決めている。それが先発でも、途中(出場)でも、準備することが大事。プラスの方に持っていくべき。チームの状況は沈んではいないが、勝ち続けている時に比べると低くなっている。そういうときに良い雰囲気に持っていくことは出来ると思う。

北川主将「常に怖い存在に」

-アウェイでの敗戦が増えていることについて
清水エスパルス・北川航也 主将:
目に見えている結果だけだと思っている。ホームとは違う雰囲気あるが、長くサッカー選手をやっているとそういうこともあるのはわかっている。

次はホームで戦うので、いまだ負けていないので、大きなアドバンテージになる。多くの観客が来てくれるステージでの喜びというのは感じている。

藤枝との対戦、ダービーとかメディアは煽るが、申し訳ないがダービー感はあまりない(笑)ただ、同じ静岡という中で注目が集まる試合、シーズン前半を折り返す試合ともなるし、勝てば首位で折り返すことになるので、良いモチベーションで取り組める。

その中で我々は、目の前の試合にどれだけ全力で臨めるかに集中したい。その試合ひとつひとつ勝っていくことが優勝や昇格につながる。全部のチームに勝ちたい。また、良い準備をして備えたい。

-去年のホームでは相手を呑み込む印象のゲームだった
清水エスパルス・北川航也 主将:
理想はそうだが上手くいかないこともある。今は相手が対策を施してきて、苦戦しているのも確か。だからこそ先制点が大事で、そこに全力を注ぎたい。

藤枝は勝利も敗戦も劇的な印象を持っている。少なくとも去年よりは安定した戦いが出来ているように見える。その上で攻撃的なチームだと思うので、球際が激しいアグレッシブな戦いになる。そこで負けていたら話にならない。ひとつひとつの局面が大事になる。

-前半戦の自身の結果について
清水エスパルス・北川航也 主将:
去年よりも結果が出ていることがチームの結果にもつながっているところは間違いなく自信を持って毎試合臨めている。だが、敗戦する試合は自分にボールが入ってこず、相手に勢いを持っていかれている。自分でも対策を考えなければいけないし、常に相手にとって怖い存在でいたい。

-第2子誕生をSNSで発信していた
清水エスパルス・北川航也 主将:
妻と生まれてきてくれた娘に感謝している。妻は約10か月間生活が制限される中で産んでくれて、出産にも立ち会えた。そこで妻の強さや生命の尊さを間近で感じることができた。それは人間としても非常にいい経験。刺激にもなった。自分もピッチの上で示すしかない。引き続き頑張りたい。

山原副将「緩みは許されない」

-敗戦を経ての今週の準備
清水エスパルス・山原怜音 副主将:
シーズンでは勝ったり負けたりあるが、次の準備のために自分たちは過ぎたことは忘れなければいけない。それで今週1週間積み上げることができた。最高の準備が出来た。

藤枝は去年アウェイで力負け。今シーズン出だしは調子が悪かったものの、今は好調で来ていると思う。油断や緩みは許されない相手。組織として強く、ハードワークや帰陣の速さがあり、決定力や攻撃の厚みもあり、注意するべき点がたくさんある。

自分のフリーキックに関しては練習から感覚が良くて自信を持っている。結果につながっていないが、鹿児島戦・山口戦では良い感覚でキックが打てているので結果に結び付けたい。矢島選手は良いキックを持っていて、互いにリスペクト出来る関係になっている。キッカーを決める時もチームにとってどちらがいいかという基準で、得意な位置や互いの調子の良さを理解し合いつつ良い関係で決めることができている。

藤枝のシステムに対してまずはマークをはっきりさせること。横浜FC戦の反省はロングボールに対する対策だった。そこは水戸戦・山口戦はラインの上げ下げと、蹴られる前のプレスがかかるかどうか、嵌める場面を含めて修正している。自分たちは首位なので、研究されて相手がいろんなことをやってくるのは当然なので、さらにそこに準備したい。

-現在首位に立っていることついて
清水エスパルス・山原怜音 副主将:
正直、大学時代を含めてサッカー人生で首位に立つ経験はほとんどなかった。いつも追いかける立場で、J2に例えるとプレーオフ圏内をうろつくような感じ。経験則は言えないが、自分たちがブレずに、やらなければならないことをひたすらやることが大事だと思う。90分間、自分たちのサッカーをやることに集中したい。

-試合当日に誕生日を迎える
清水エスパルス・山原怜音 副主将:
試合当日が誕生日だったこと…あまり記憶がない。去年は誕生日前日が試合だったが、平常心で特に考えることはない。試合が終わったら誕生日だったことに気づきたいくらい。

自分は25歳になるが、フレッシュな気持ちはまだ忘れたくない一方で、チームの勢いの部分でプラスを与える存在でいたいが、年齢的には若いものの選手の構造では中堅にあてはまり、若手に語りかけたり、パフォーマンスを見せなければならない立ち位置でもある。

両方をやりつつ、大きく考えれば楽しく生きることが一番なので、サッカーが出来ることに感謝しつつ、25歳の1年を過ごしたい。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

テレビ静岡
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外岡哲
外岡哲

テレビ静岡 報道部スポーツ業務推進役(清水エスパルス担当)。
1984年テレビ静岡入社。
1987年~1994年(主に社会部や掛川支局駐在)
2000年~2002年(主に県政担当やニュースデスク)
2021年~現在(スポーツ担当)
ドキュメンタリー番組「幻の甲子園」「産廃が街にやってくる」「空白域・東海地震に備えて」などを制作。
清水東高校時代はサッカー部に所属し、高校3年時には全国高校サッカー選手権静岡県大会でベスト11。
J2・熊本の大木武 監督は高校時代の同級生。