親が育てられない赤ちゃんを匿名でも預かる、慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」は開設から17年、初期のころに預け入れられた赤ちゃんの多くは思春期を迎えている。ゆりかごの検証を続けている熊本市の専門部会は、第6期の検証報告を発表し、今回初めて子どもへの「真実告知」に言及した。

「生活困窮」と「育児不安・負担感」

今回の第6期は2023年3月まで3年間の運用状況の検証報告だ。今期の預け入れは15人で、内訳は新生児が12人、乳児が1人、幼児が2人だった。

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預け入れの理由は「生活困窮」が60%、「育児不安・負担感」が33%余りを占めた。また自宅などでの孤立出産は66%余りと依然高い割合となっていて、母子にとって非常に危険な状況が存在している。

児相が養子縁組後も養親のサポートを

一方、専門部会は、熊本市児童相談所が2022年に行ったアンケートで「養育者が子どもにゆりかごのことを告知しているのは18%にとどまっている」という結果をめぐり、真実告知について「養親等が手探りで行っている」と推察。「児童相談所による支援が望まれる」としたほか、「同じように不安や悩みを抱える養親等が交流できる場があれば、精神的な負担が軽減される」とし、専門部会は子どもへの真実告知の難しさ、そして、それに取り組む養育者へのサポートの必要性を初めて指摘した。

安部計彦部会長:
養子縁組した人が相談するだけでなく、児童相談所の方からも「お手伝いすることはありませんか?」「困っていませんか?」と、待っているんじゃなく、もう少し声を出して、児童相談所からアクセスしてほしい。「里親じゃなくなったから児童相談所は権限なくなったから知りません」でなく、もう少し(養親に)児童相談所から声をかけていただけたらありがたいという意味の記載です

大西熊本市長「行政の役割非常に重い」

大西一史熊本市長:
養親、里親がどう伝えていけばいいのか、例えばサポート、児童相談所や関係機関で全力をあげてやっていく必要があると考えていますので、行政の役割として非常に重いと思っています

そして慈恵病院の蓮田理事長は「デリケートな立場にある方々の真実告知です。熊本市に限らず、全国の児童相談所が疲弊している状況で、もしこのことに現実的な対応をするのでしたら、専門部署を設けるくらいの姿勢でなければいけない」と述べた。

蓮田理事長は、養親や里親が困り、もし慈恵病院を訪れた際には、可能な限り情報提供はするが、生みの親にも汲むべき事情があるため、伝えられることには制限もあるという認識を示した。

(テレビ熊本)

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