注目のリゾート開発。妙高・斑尾高原一帯のスキー場やホテル跡地を取得したシンガポールの不動産投資ファンドの代表が5月9日、講演した。語られたのは「上質なマウンテンリゾート」を目指すという開発構想。自治体や住民はどう受け止めているのだろうか。

上質なリゾートをつくる

斑尾高原に野尻湖、それに新潟県の妙高を含むエリアを、一大リゾートにする構想が浮上している。

開発構想を描いているのはシンガポールの不動産投資ファンド「ペイシャンス・キャピタル・グループ」。

5月9日、長野県飯山市で開かれた講演会で、ケン・チャン代表は「雪の質、雪の量、そして雪山の高さ、非常に魅力的なコンテンツがたくさんあり、ここしかないなって。高級リゾートをつくっていくんじゃないのという質問もありますが、われわれの定義は『上質なリゾートをつくる』という考え。この信越地域でマウンテンリゾート、スキー場じゃなくてマウンテンリゾート開発に挑んでいこうかな」と述べた。

妙高・斑尾高原一帯
妙高・斑尾高原一帯
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投資額の見込みは最大700億円規模

グループはこれまでに、斑尾高原スキー場や妙高杉ノ原スキー場を傘下に収めている。

また、斑尾高原にあるホテルと、野尻湖畔のホテル跡地も取得。

3つのエリアで取得した土地は、約350ヘクタールにのぼり、開発を含めた足元の投資額の見込みは最大700億円規模。

国内客を優先しつつインバウンド客も含め年間通じた「滞在型」のマウンテンリゾートを目指すとしている。

妙高山
妙高山

地元自治体「期待しかない」

講演会では関係する飯山市、信濃町、妙高市の市長・町長も登壇、「大歓迎」「期待しかない」「地元の経済・産業に対して大きなインパクトを与えてもらえる」などの声が上がり、自治体の期待度は大きいようだ。

左:信濃町・鈴木文雄町長 右:妙高市・城戸陽二市長
左:信濃町・鈴木文雄町長 右:妙高市・城戸陽二市長

一方、ケン・チャン代表は「地元の行政、住民に協力していただかないと成功しない。交通手段のところも一緒にプランニングできたら」と話し、交通インフラの整備など、開発には行政の協力が不可欠だとしている。

飯山市の江沢岸生市長は「飯山駅の利活用については具体的な構想、要望を聞いて、飯山市だけでなく関連自治体や観光関係者で力を合わせて協力する方向で考えたい」と話した。

飯山市・江沢岸生市長
飯山市・江沢岸生市長

地元「外部の力を借りるしかない」

動き始めた再開発計画。地元ではどう受け止められているのか。

水上アクテビティや釣りが盛んな野尻湖。湖畔のホテル跡地が開発の対象となっている。

住民からは「地元の人だけでは限界。斑尾・妙高・黒姫は落ち目だから。これから先ということになると、外部の力を借りるしかない」といった期待の声があがっている。

野尻レイクサイドホテル跡地
野尻レイクサイドホテル跡地

斑尾高原は、スキー場とホテルが計画の対象。

かつては、ジャズフェスティバルで2万人以上を動員するなどにぎやかな時期もあったが、近年はスキー人口の減少やコロナ禍の打撃を受け、厳しい状況が続いている。

ペンション経営者は「不安はありません、われわれのリゾートのオーナーシップは何度も変わりましたが、自治体との連携も視野に入れていて非常に素晴らしいアプローチ」、「今が不安のどん底みたいなもの、これから何かやりますよという期待をもたせるような話だった」などと話し、開発を歓迎している。

閑散とした斑尾
閑散とした斑尾

物価や地価の高騰を心配する声も

一方、多くの人が集まることで治安の悪化や騒音を心配する声がある。

また、外国人客が集中する北海道のニセコのような、物価や地価の高騰を心配する向きもある。

妙高市の城戸陽二市長は「国内でリゾートと言われるとニセコの話題が大きく、負の部分が大きく不安になっているところがある。できるだけ早くオープンしていただくことが不安を取り除く第一歩」と話した。

野尻湖(信濃町)
野尻湖(信濃町)

次世代、次々世代のために

6歳まで日本で暮らし、長く政府系ファンドの日本支社代表を務めるなど、国内の状況をよく知るケン・チャン代表。

講演の最後に「地方創生をやっていきたいという強い思い。次世代、次々世代のために何とかしておかないと、このままさびれてしまう。誇りを持てるような、海外の人も来た時に、『いい所だろう』と言えるようにやっていきたい。ご協力お願いします」と述べ、理解と協力を求めた。

具体的な開発の内容はこれから。

グループは今後10年ほどを3段階に分けて開発を進めるとしている。

3エリアの土地を取得
3エリアの土地を取得

(長野放送)

長野放送
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