「タマカイ」という名の高級魚をご存じだろうか。あたたかい海域に生息する魚で、流通量が少なく、希少価値がかなり高い魚だ。宮崎県都農町では、地元水産業の未来をかけて「タマカイ」の養殖に取り組んでいる。漁師の高齢化や担い手不足など厳しい環境が続く中、新たなブランドを作り出そうという挑戦だ。

都農漁港のすぐそばに、倉庫のような、緑色の大きな建物がある。この中で養殖されているのが、タマカイだ。

つの水産振興・加工品開発協議会 三輪将也さん:
「ここではタマカイという魚の養殖をしている。一般的に流通が少ないため、希少価値はかなり高い魚だと思う」

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高級魚「タマカイ」とは…?

タマカイは、南西諸島や沖縄周辺など、あたたかい海域に生息するハタ科の魚。体長は大きいもので約3mまで成長する。都農町は、このタマカイに着目。新たなブランド品を生み出そうと、「水産業夢未来プロジェクト」と題し、大学やNTTと連携して、2023年3月から試験養殖をスタートさせた。

都農町産業振興課 黒木啓さんは、「大きい魚体で高く売れる単価の高い魚であればブランドとして売っていけるのではということでこの魚を選んだ」と語る。

タマカイは完全閉鎖循環式陸上養殖という、自然環境に左右されない養殖方法で、海水ではなくナトリウムなど成長に必要な栄要素が入った「好適環境水」で養殖されている。

町をあげて「タマカイ」に注力

さかのぼる事3カ月前、都農町は坂田町長が記者会見を開き、タマカイをお披露目している。約9カ月間の養殖の結果、タマカイが順調に成長していることを発表。坂田広亮町長は、「都農町ならではの特産品の開発を、地域の皆さまと一緒に進めていきたい」と、意気込みを語っていた。

気になるタマカイの味は…?取材した記者は、「白身の上品な旨味が口いっぱいに広がる。あっさりしているのでいくらでも食べられそう」と話していた。

2024年5月、タマカイは2キロほどに成長し、出荷できるサイズになっていた。
三輪さんは、「成長を実感しているというか、子供のような感覚で見ている。顔もかわいいので、意外と愛着が湧いてしまう」と語った。

背景には水産業の衰退という現実

地元水産業の夢と未来をタマカイにかけるのはなぜか?背景には、水産業の担い手不足があった。

三輪さんは、「漁業に担い手がいなくて跡継ぎがいない。このままでは水産業がどんどん衰退していく。まずはその一歩としてタマカイ。今僕らがやっているのが10工程のうちの1工程くらいだと思っている」と話す。

都農町によると、約40年前に110人いた都農町漁協の正組合員は、漁師の高齢化や担い手不足などで年々減少。このままのペースでいくと、2028年までに漁協解散という事態も懸念されている。

こうした状況を打破するために打ち出された「水産業夢未来プロジェクト」。都農町では2024年度中にタマカイの出荷をスタートさせ、水産業の活性化につなげたい考えだ。

都農町産業振興課 黒木啓さん:
「この魚を使って、どうやって都農町のブランドとして売っていくか。まずはふるさと納税などを使って販路を見出していきたい。“タマカイ”が都農町の水産業の新たなブランドとして、今後の軸となっていく存在となっていけばいい」

つの水産振興・加工品開発協議会 三輪将也さん:
「ずっと僕もこの町で育ってきたので、港がどんどん寂れていくのが悲しい。そこを盛り上げる仕事を今やっている実感はあるので、成功するように頑張っていきたいと思う。都農町といえば“タマカイ”と言われる存在になってほしい」

都農町の水産業の未来を担う高級魚タマカイが、都農町の未来を切り開く第一歩となるのか。新たな挑戦は始まったばかりだ。

(テレビ宮崎)

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