2020年の熊本豪雨で被災したJR肥薩線。熊本県「八代~人吉」区間は、鉄道で復旧することでJR九州と熊本県が基本合意をした。一方、人吉から宮崎・えびの市を経由し、鹿児島・吉松までの区間は、まだ復旧の方針が決まっていない。これまで以上の利用促進、観光客の呼び込みが、復旧に向けての大きなカギとなる。
「山線」は復旧の方針決まらず
熊本県、宮崎県、鹿児島県の3県を結ぶJR肥薩線は、2020年の熊本豪雨で被災し、現在も一部区間が運休となっている。JR九州は4月、運休となっている区間のうち、八代から人吉までのいわゆる「川線」については、鉄道で復旧することで熊本県と基本合意をした。
一方、人吉からえびの市を経由し吉松までの間、いわゆる「山線」は復旧の方針が決まっていない。JR九州の古宮洋二社長が「熊本、宮崎、鹿児島の3県と会議を開きたい」と呼びかけている。
この記事の画像(5枚)古宮社長は会見で、「山線についての方向性を両県(宮崎県と鹿児島県)交えて、熊本県を含む3県と会議体を開催していくことが、今後の復旧に向けての方法になると思う。川線復旧は、マイレール意識を持って、日常から使いましょうということが出てきたことが判断の材料として大きかった」と述べた。
肥薩線の人吉~吉松間は被災前の2019年度、1kmあたりの1日の平均乗客数が100人程度で年間約3億円の赤字だった。
古宮社長は「鉄道としては、利用する人が極端に減れば動かす意味がない。ちゃんとした利用という前提がないと、なかなか鉄道でいくのか(復旧するのか)どうか、大きな判断要素になる」としている。
えびの市は観光にダメージ
えびの市企画課の外赤裕二課長は、「列車を見に来たり、実際に列車に乗ったりする方がいなくなったので、真幸駅、肥薩線をPRできないというか、えびの市としてそういう点ではダメージだと思っている」と話す。
肥薩線で唯一、えびの市にある真幸(まさき)駅は、1911年に宮崎県内で最初の駅として作られた。「真の幸せ」と書く、その縁起の良い名前や日本三大車窓、ホームの中央に置かれた「幸せの鐘」で知られるえびの市の観光資源である。
復旧に向けては、これまで以上の利用促進、観光客の呼び込みが必要だと話している。
外赤課長は、「これまでも多くの観光客や乗客に来てもらったことを踏まえると、えびの市の魅力発信の場所として大事にしていかないといけない場所だと思っている」と語った。
また、宮崎県の河野俊嗣知事は2024年5月の定例記者会見で、「関係県で一緒になって議論していくことは大変重要だと考えている。今のままでは利用者がどんどん減っていく。観光面での利活用も含めて、しっかりと知恵を出して、どのように地域交通の足を残していくのかをこれからも重要課題として取り組んでいきたい」と述べた。
宮崎県では今後、JR九州の考えを聞いて熊本県、鹿児島県と相談したいとしている。
山線が運休となって、まもなく4年を迎える。
(テレビ宮崎)