もうすぐお盆休みシーズンとなるが、今年はふるさとに帰省するか悩んでいる人が多いのではないだろうか?
多くの人の移動が予想されるお盆休みの帰省について、西村経済再生相は2日「高齢者に感染する可能性がある」と注意を促し、分科会で専門家の意見を聞く考えを示した。翌3日には菅官房長官が「お盆の帰省を制限するとかしないとか、方向性を申し上げたものではない」と強調するなど、一連の政府発言が注目を集めている。
そんなお盆の帰省に関して、富山県上市町は5日にインターネットを活用した「オンライン帰省」の動画を公開し、町の出身者や町民などに新たな帰省スタイルを提案している。
オンライン帰省を提案する動画を公開
「オンライン帰省どうけ?」と題された4分40秒の動画は、家族・兄弟姉妹・同級生など離れて住んでいる人々が、Zoomなどのコミュニティツールを用いて交流を楽しむ姿をドキュメンタリータッチに追ってゆく。

動画は、上市町の風景からスタート。そして場面は東京へと移り、「今年のお盆は、帰省しますか?」の質問に対し、上市町の出身者が「正直迷っています。やっぱり上市の人たちには迷惑をかけられないかなと思っているので」「できればしたいですけど、ちょっと現状は難しいかなと思っています」など、帰省への思いや葛藤を語っていた。
そこで「オンライン帰省」を実施。上市町の実家などとモニター越しに、一緒にそうめんを味わったり、離れていた時に生まれた新しい命を紹介したり、久しぶりに見るお互いの元気な姿に笑顔をほころばせる様子が紹介される。

動画を企画・制作したのは首都圏に住む上市町出身者が集う「上市町首都圏同窓会(以下 同窓会)」。メンバーである坂口祐介さんは、同時に公開されたメイキング動画で企画のきっかけをこう説明している。
今回の新型コロナウイルスの影響で この夏のお盆の帰省に関して悩んでいる方が多くいることを知りました。
実際僕もその中の1人です。
帰省を我慢するという選択をされる場合でも、上市とのつながりは続けてほしいと思っています。
そのような思いで動画を通してオンライン帰省という選択肢を提案させていただきました。

こうした思いから同窓会は動画制作を町に提案。打ち合わせはほぼすべてオンラインで行ったという。さらに上市町での撮影は町民が、首都圏の撮影は町の出身者がそれぞれ担当し、離れた人々がリモートで力を合わせ完成に至った。


では上市町はオンライン帰省の提案にあたってどんな役割を担ったのか? やはり今年は帰省を躊躇する人がいるのか? 疑問を町の担当者に聞いてみた。
帰省を迷っている声が多かった
――そもそも上市町と同窓会はどんな関係にある?
町としては、今の少子高齢化などの影響で人口が減っていく中で移住・定住に力を入れるとともに、町に「ご縁」がある人とつながることも重要だと考えていました。そこで4年前の平成28年から首都圏で町の主催する「わかもの同窓会」というイベントを年に1度、行うようになりました。
しかしそれだけでは、その後の交流やつながりを保つのが難しかったのですが、去年、町と話し合った方々が、その年の9月に同窓会を創立し、Facebookを中心に町の出身者同士や、町の人とのつながりを深めるコミュニティ活動を行っています。
――今年は帰省を我慢している人が多い?
同窓会の活動で、Facebookでコミュニケーションをとったり、Zoomでオンライン飲み会をやったりする中、今回の新型コロナウイルスの影響で「帰りたいが帰省するか迷っている」という声がよく聞かれたそうです。そこでオンラインを使った帰省を呼び掛ける企画が持ち上がり、同窓会から上市町に提案されました。
――出演して「オンライン帰省」を体験した人の感想は?
メイキングや本編動画をご覧になっても分かると思うのですが、こうして「つながる」ことができることを知らなかった方も、うれしいと喜んでいらっしゃったのが非常に印象に残っています。
オンライン帰省の解説を全世帯に配布
――上市町ではどんな感染対策をしている?
国の基準に従った感染対策を行い、総合病院では発熱外来を設けています。上市町は人口約2万人で、それほど大きな町ではないため目立つような対策はありませんが、今回は動画を使って安全にお盆を過ごす方法を提案しました。
――「オンライン帰省」のやり方を町民は知っている?
今回の動画の制作に合わせ、毎月町民全世帯に配布している公報誌の3ページを使ってZoomやLINE・Skypeなどオンライン帰省で用いるツールの使い方を紹介しています。

――今、帰省するか迷っている人へメッセージは?
実際にご家族や友人にお会いできるのが一番だと思いますが、こういうご時世ですので、安全につながるやり方があることを知っていただきたい。お盆の時期を安全に、心安らかに過ごせるように願っています。

富山の方言「どうけ?」は「どう?」という意味。ふるさとから離れて暮らすあなたはオンライン帰省を「どう」思っているだろうか?
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長は5日、お盆休みの帰省について政府に緊急提言を行い、マスクや換気などの感染防止策を徹底するほか、大人数の飲食を避けるなど高齢者などへの感染につながらないよう注意を促した。
実際に会えるのが一番なのはもちろんだが、今年は安全にふるさとの人とつながる「オンライン帰省」も選択肢の一つとして考えてみてほしい。
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