前節、横浜FCに敗れたことで連勝が7で止まった清水エスパルス。秋葉忠宏 監督は「連勝はいつか止まるもの」と淡々と受け止めつつ、敗因の1つに試合の入りで“走り負けたこと”を挙げた。

敗戦から得た学びをどう活かすか

連敗だけは是が非でも避けたいエスパルス。

秋葉監督は今週のトレーニングで、「もう一度、個を磨き組織にする」「走るところを走る」、「苦しいところから逃げない」と発破をかけた。

そのためにも、ボールを使わないものを含め、ランニングが介在するメニューを中心にラインアップ。特に対人練習では長い距離で相手の背後を狙う練習に時間をかけた。

指揮官は「連勝というのはいつか止まるもの」と平静を保ちつつ、横浜FCにはボールを裏に蹴られ、自陣を下げざるを得なかったことで主導権を握れなかった反省を活かし、走力で負けない集団への進化をもくろむ。また、敗因をしっかりと選手たちと共有し、次にフォーカスする狙いも強い。

2024年は、鹿児島キャンプで多くのフィジカルトレーニングを繰り返してきた。それだけに原点ともいえる走力が試合を左右することに改めて認識している。

ただ、連勝は途切れたものの、一方で、7試合連続で勝つことが出来た自信とその間に積み上げた勝ち点21という成績は確実に選手たちの成長につながった。

チーム内にはJ1昇格、さらにはJ2制覇に向けては“連敗だけはありえない”という共通認識があり、再加速への機運は高まっている。

ここからの3試合は、水戸・山口・藤枝といずれも個性の強いチームが相手だ。

当然のことながら一筋縄ではいかず、難しい試合になることが予想されるものの、今シーズンの原点に立ち返り、走り勝つことができるのか…その真価が問われることになる。

秋葉監督「ゲームの入りを見直す」

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-横浜FC戦で連勝が止まった
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
連勝というのは、いつかは止まるもの。大事なのはここからどうするか。過去は変えられない。ここから、どう次の水戸戦に、どうパワーを使うかということが一番。ホームというアドバンテージを活かしながらハーフターンするまでの残り3戦をどう締めくくるかということに最大注力したい。

-変えるべき点
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
選手に言ったのはゲームの入りどころ。相手はどんどん裏に走ってきたが、我々はそこに行けなかった。ラインブレイク数を数えたら、成功と失敗があるが、エスパルス18に対して横浜は43だった。

単純に背後に走り、そこにボールが出てくる。我々も30回以上することを目標としているが、大きく差が出たところはやはり認めざるを得ない。我々ももう一度、入りの10~15分は人とボールを相手の裏に行かせなければならない。前後半のゲームの入りどころで、そうした裏への展開を増やしたい。それで相手のラインが下がり、自分たちのボールを動かすサッカーができる。ハーフターンまでの残り3試合は入りを見直して、チームで統一しようとみんなで話した。

-出たくてうずうずしている選手も多いと思う
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
そうだと思う。横浜FC戦の翌日に松本山雅とテストマッチをしたが、4対0と非常に選手の出来が良かった。ベテランと若手が融合して、“使いたい”と思う選手が多かった。

次の試合もいつも通り、三保のピッチで見せてくれた選手を使おうと思っている。横浜に負けたことは何かを変えるためのチャンスでもあるし、そこで試合までの練習を見て、水戸戦に勝つ確率を高くしてくれる選手をチョイスしたいと思う。

-水戸に対するイメージ 
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
昨シーズン自分が率いたのはアウェイの最終戦1試合のみで、その時とは状況が違う。もう一度、サポーター・ファミリーとともにパワーを使いながら、ホームで連敗をしないことが一番大事。もう一度、しっかりと勝ち点3を取るという、そこに最大注力したいと思っている。

-フィジカルトレーニングを長くやっていた
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
オフ明けで体を起こす意味と足りないところにフォーカスする両方の目的があった。

普遍的にフィジカルを上げるのは現代フットボールでは当たり前のこと。より速く、より強く、より連続して、これでいいという限界はない。継続したテーマなので、まずは個の力を上げてもらって、その上で組織として力を出して欲しいと思う。

今年は走力がテーマの1つ。“夏になればなるほど我々の方が走れる”ということにしたいので、どんどん走ってもらう(笑)

つらいことから目を離さないことが大事。自分に勝てなければ相手に勝つことは絶対ないと思っている。「これだけやったんだから勝てる」という自信。それが今の勝負強さにつながっている。自分に負けないように、つらいトレーニングは続けていく。

宮本選手「挑んでいくことが大事」

清水エスパルス・宮本航汰 選手:
このところ先発で出る試合が増えているが、いい時は前線やゴール前に飛び込んでいけるが、前に出ていけない時もあるということを自覚している。

コンディションの作り方や飛び込みの状況判断、タイミングの計り方についてもっと質を上げて、厳しい練習をしているので、あとのケアを含めて90分通してやれるようにしたい。

横浜FCとは相手の得意な形で失点をしてしまった。相手の方が徹底して背後を狙ったり、自分たちの嫌なことをやったりしてきた。特に前半の早い時間にさせてしまい、それは自分たちがやらなければならないことだった。前半の開始直後にパワーを使う大切さを痛感した。

そうしたことを防ぐためにも、きょうはきついフィジカルトレーニングをやったが、相手より走ったり、球際の強さは自分たちのストロング、そこで負けないことを凡事徹底して、やり切ったことを自信として水戸戦に入りたい。

水戸は去年、自分自身が出ていないので印象は薄いが、勝てていないのは事実。いま首位だとしても、去年勝ち点3を獲れていない相手に挑んでいくことが大事だと思う。

北川主将「本当に大事なのが次」

清水エスパルス・北川航也 主将:
連勝は途切れてしまったけれど7連勝できることはあまりないことなので、それを自信として戦えば自分たちの戦い方は再現できると信じている。

横浜FC戦ではボールがあまり走らなかったり、気温が高かったり、悪い条件はあったが、それは相手も同じこと。その環境で自分たちが相手にとって嫌なプレー、怖いプレーを出来なければいけないのに、それを逆に相手がやってきた。ボールを取りに行っても背後に抜けられるケースが多かった。

まず連敗してはいけない。優勝・昇格する上でありえないことだと思う。そこは全員が試合に向けて準備しなければいけないことだと思うし、その中で今週の練習が始まっている。その準備という意味で今日はとてもハードな練習だったが、いいトレーニングになった。選手からの声も多く出ていたので続けていきたい。

長期的に必要なこととして、自分たちのストロングを消された時にどんなプランを持っているかということが挙げられる。足下でもらうのは悪いことではないが、相手が狙っているならば逆を取らなければいけない。

それと選手同士の意思疎通も大事だと思う。ボールを持っている味方が何をしたいのかを考えながら自分はプレーしているが、そのうちに押し込まれることが多くなってしまった。味方のことを考えるだけではなく、相手が嫌なところ、背後に抜けるプレーを自分からすればもっと展開は変わっていたと思う。これを反省材料、いい経験としてとっておけば次につながると思う。

また、すべての試合を自分たちのスタイルで通せるわけではないので、ピッチコンディション、暑さ、レフェリーなどチーム情報として共有し、臨機応変に対応していけないと勝ち続けられないと再認識した。

本当に大事なのが次の水戸戦。“すべての試合で勝つ”という理想を追いかけているが、負けることはあるし、勝ち点を落とすこともある。その次の試合、どういった立ち振る舞いで今週を過ごすのか、どういった準備ができるのか、全員がやるべきことだと自分は思っている。

乾選手「体の動きは戻っている」

清水エスパルス・乾貴士 選手:
横浜FCには球際でも、走るところでも負けていた。やり方として、裏を徹底してきたので後手に回ったし、セットプレーで先制点を獲ることを狙っていた。まんまとやられた感じ。

流れを変えられなかった。難しいことだが変えなければならなかった。ああいう時に入って、逆に追加点を与えてしまったので、そこは自分のミスからなので反省しているが、状況的には点を入れなければいけなかった。慌ててしまったところもあるし、途中出場の難しいところ。自分は得意ではないが、そんなことも言ってはいられない。出た時間でしっかり仕事ができるように頑張っていきたい。

体の動きは戻っている。ここからは難しい相手が続く。前半戦、そこに勝ち切っていきたい。楽な試合は1つもない。今まだ自分はチームに貢献できていないが、連勝でチーム全体の気分はいいし、勝ち点差で余裕は持てている。

先発できるかどうか…まだないんじゃないかと思う。体力的にも問題はないが、チームが7連勝したのはほとんどが2トップでやっている試合。そこに自信はあると思う。

わざわざ自分を先発に入れてその流れを変えるリスクを冒す必要はないと思うが、もちろんそこを自分のプレーで変えなければいけない。秋葉監督がそこを変えるように、自分がプレーで見せなければいけないのが一番だが、それよりチームが勝つことがすべて。まずは昇格すること。

それでも引き続き、自分は“俺が出た方が強いぞ”というのは見せていきたい。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

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外岡哲
外岡哲

テレビ静岡 報道部スポーツ業務推進役(清水エスパルス担当)。
1984年テレビ静岡入社。
1987年~1994年(主に社会部や掛川支局駐在)
2000年~2002年(主に県政担当やニュースデスク)
2021年~現在(スポーツ担当)
ドキュメンタリー番組「幻の甲子園」「産廃が街にやってくる」「空白域・東海地震に備えて」などを制作。
清水東高校時代はサッカー部に所属し、高校3年時には全国高校サッカー選手権静岡県大会でベスト11。
J2・熊本の大木武 監督は高校時代の同級生。