求めている人材を企業間でやりとりする「相互副業」が注目を集めている。
企業にとっては、自社にないノウハウを迅速に取り込むメリットがある。
専門家は、副業が働く人と企業の両社にとって有益であり、柔軟な働き方の促進につながると評価している。

「相互副業」企業間の人材シェア

求めている人材を企業間でやりとりする「相互副業」とは ──。

「相互副業」についてのトークセッションが開催された
「相互副業」についてのトークセッションが開催された
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22日、東京都内で開かれた企業によるトークセッション。
テーマは「相互副業」だ。

パーソルキャリア株式会社・鏑木陽二朗執行役員:
企業間が合意のもとに、双方のシェアリングをしていく仕組みを提供しようというのが、相互副業の考え方。  

相互副業とは、従業員の在籍企業と副業先が連携する「会社公認」の副業のこと。
お互いに社員を派遣し、そこで副業を行う。
企業にとっては、自社にないノウハウをスピーディーに外部から取り込めることがメリットだ。

相互副業のトライアルに参加した企業は ──。

明治ホールディングス株式会社・大河内淳グループ長:
外国籍の方の採用っていうところがやや立ち遅れていた。(兼松さんに)採用戦略であったりとか、どういうことをやられているのかなっていう立案のお手伝いをしていただけないかと。

兼松株式会社・塚本達雄課長:
今回副業させていただいたメンバーは、海外赴任者、海外駐在員拠点のサポートをいろいろやってきておりまして、そういったところが明治さんにご評価いただいて、副業させていただいたのかなと。

物価の上昇や人材不足を背景に、働く環境や価値観はめまぐるしく変化し、副業を認めている企業は徐々に増えてきている。

ただ、転職サービス「doda」の調査によると、副業をしている社会人はわずか8.4%にとどまり、副業の働き方が浸透していないのが現状だ。

パーソルキャリア株式会社・鏑木陽二朗執行役員:
副業者も含めた外部の人材を柔軟に社内に取り込んでいくという考え方が、もっと浸透していくべきだとは思っている。(企業に)労働力が足りないですし、専門性はやっぱり欲しい。

それを獲得する手段として副業が有効ならば、ありかもしれないって思ってらっしゃる企業さまが多いと思うんですけど、やったことないし知らないから怖いんだと思う。

この壁を超えることができれば、体験できる企業さまも増えていくと思っているので、積極的に使っていただける環境を作りたい。 

パーソルキャリアは7月から仲介サービスを始め、2027年までに100社での利用を目指す。

働き方改革への大きな1歩

「Live News α」では、働き方に関する調査・研究を行っているオルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
── 相互副業、どうご覧になりますか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
スポーツ界のトレードに近い考え方だと思うが、副業したい人や、今後のキャリアを見据えている人からしたら良い機会なのでは。

いきなり転職するのはハードルが高いからこそ、まずは副業でほかの会社も見てみるというのは、働く人にとってはメリット。

また会社からしても、特に中小企業であれば、1人採用するほどではなくても誰かに手伝ってほしい、やってほしい仕事というのはあるので、副業の人を有効活用できるのは本当に良い。

堤キャスター:
── 新しい働き方や、キャリアの築き方が広がっていくといいですね。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
副業をはじめ、スポットワークや、リモートワークなど、新しい働き方がなかなか広がっていないのは、やはり仕事が少ない、つまり会社側の門戸がなかなか開かないこと。

言い換えれば、副業くらいの時間でできる仕事が不足しているとも言える。

正社員などフルタイムの仕事になると、どこでも人手不足で困っているのに、副業でできる短時間の仕事になると、買い手市場になってしまうという、まったく真逆なことが同時に起きている。

自社の仕事を小さく分けられるか、サービス業化できるかがポイント。

ほかの人へ業務を分ける工夫が必要

堤キャスター:
── そのサービス業化とは、どういうことなんでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
たとえば、飲食店などではシフト制で、パートやアルバイトの人でも業務が回るようにマニュアル化が徹底され、オペレーションが組まれている。

ただ、いざホワイトカラーの仕事、デスクワークとなると、そうなっていない。もちろん分割できない仕事はあるだろうが、工夫の余地はまだまだあるはず。

副業の人を受け入れることで、自社の仕事を小さく分け、ほかの人でもできるようにすることに慣れていくことが重要。

同じチームに副業の人がいる状態はまだまだ少ないが、それが普通になっていくと、あらゆる仕事を副業やスポットワーカーに任せられるようになり、双方にとって本当の意味で自由な働き方が実現できるようになるのでは。

堤キャスター:
新たな働き方の広がりは、成長の機会が増えることでもあると思います。
個人のステップアップは企業の成長にもつながりますから、時代に合った形で選択肢が増えていくことを期待したいです。
(「Live News α」5月22日放送分より)

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