現役引退を発表したフィギュアスケート・宇野昌磨。
数々の実績を残し、フィギュア界の一時代を築いた宇野の引退は、大きな影響を与えた。
全日本選手権や世界選手権で表彰台を争った鍵山優真、宇野が憧れ続けた高橋大輔さん、フィギュアスケートの世界へと導いた浅田真央さん、5歳の頃から宇野を見守った山田満知子コーチ、同じ中京大学のリンクで切磋琢磨した山本草太からメッセージが寄せられた。
期待のエース、鍵山優真
次期エースとして大きな期待が寄せられている鍵山優真は、宇野の引退について、さみしい気持ちもありながら「宇野選手のスケートをプロとして見られることがすごく楽しみ」と宇野のこれからの活躍に期待を寄せた。
この記事の画像(13枚)「僕としてはすごく寂しい気持ちや、もっともっと全日本や世界の舞台で戦いたかったなという思いもあって。
でも僕には僕の、しっかりとした目標があるので、そこを忘れずに、もっともっと僕にはやるべきことがたくさんある。
来年のミラノオリンピックなど、まずは今シーズンの全日本選手権、(グランプリ)ファイナル、世界選手権でも優勝を狙える演技ができるように、そこを目指して頑張りたい」
3月の世界選手権が終わった後に、宇野から引退を告げられたという鍵山。
これからのスケート界をけん引する立場になった。
「今の僕には宇野さんや羽生(結弦)さんのような、絶対的に日本を任せられるような安心感みたいなものはまだそんなにないと思う。
もっともっと試合をたくさん経験して、貫禄やオーラ、そういうものを身につけていけたら。
でも日本には僕だけじゃなくて、本当に強力なライバル、仲間がたくさんいるので、そこも含めて今の日本は全体的に強くいられるんじゃないかな」
そんな鍵山は、3月の世界選手権の舞台でイリア・マリニンやアダム・シャオ イム ファらの演技を受けて奮起。
「世界のトップと戦えるような自信や技術を身につけていきたい」と来季への意気込みを語った。
憧れの高橋大輔「一つ、強いものがある」
宇野が幼少期から目標にし続けたスケーターが、高橋大輔さんだ。
ともに全日本の舞台でも戦い、間近でその活躍を見てきた。
宇野の現役引退を受けて、高橋さんからもメッセージが寄せられた。
「僕も発表前から昌磨から話は聞いていて、次のイタリアまでやると思っていたので正直ビックリしました。
彼なりの考えがあっての引退だと思うので、この先どんなことをしていくのかなって楽しみなのと、長い現役生活、お疲れ様でした」
「彼は自分の中に一つ、強いものがある人間だなって。小さいときは本当にかわいらしかった。
成長するにつれて、どんどんどんどん、自分の思い描くものの強さがすごく強いなって、はたから見ていて感じていた。
そういったところでオリンピックではなく、自分自身の区切りとしてここを選んだのは、それなりの考えがあったと感じます」
高橋さんに「宇野昌磨というスケーターの魅力」を聞くと、「パワーが落ちないスケート」を挙げた。
「スケートの力強さっていうのかな。スピード感、馬力を感じるというか。スケーティングのテクニックがうまい方もいるし、スケーティングスキルがきれいな人もいる。(宇野は)まだまだ滑れるというか、4分終わっても、もう1本くらい4分間できるんじゃないかっていうくらい、最初から最後までパワーが落ちないスケートをずっとしている」
そして、一度現役からの引退をして、復帰した経験のある高橋さんだからこそ、宇野へ伝えたい思いも打ち明けた。
「小さいときからずっとやってきているので。僕自身もありましたけど、体も精神面も、やはり同じ位置にいないと現役をすることはすごく厳しいこと。それくらいギリギリのところで現役をやっている。
(宇野にとっては)今のタイミングだったと思いますが、僕ももう一回復帰しましたし、もう一回復帰できますから。違う世界に足を踏み入れてみて、また彼自身が感じることがどんどん変わってくると思う。
アイスショーなど、滑ることをやめないで続けていくということで、ファンの方はそこで見られますけど、彼の中で今後、今までずっと同じことをしてきたので、離れてから彼自身がどのように気持ちが変わっていくのか、いろいろなものを感じていくのか。
それで未来ってすごく変わってくると思うので、一度は引退しましたけど、もしかしたらもあるかもしれない。そこはね、見守っていきたいな。どんな風に進んでいくのかを見守っていきたいな」
浅田真央「誰よりも長く練習していた」
そして、宇野がフィギュア界に入るきっかけを作った浅田真央さんからもメッセージが送られた。
「⻑い現役選⼿⽣活、本当に本当にお疲れ様でした。⼦どもの頃はよく泣いていましたが、できるまで絶対に諦めず、誰よりも⻑く⼀⽣懸命リンクで練習していたのを覚えています。
これまで全てフィギュアスケートに捧げてきたと思うので、まずは⼼⾝共にゆっくり休んでください。
そしてこれから新たなステージでどんな姿が⾒られるか楽しみしています。これからも応援しています」
恩師・山田満知子コーチ「新しい宇野昌磨を」
さらに、宇野がスケートを始めた5歳の時から彼を見守った山田満知子コーチからのメッセージも。
2019年まで師事し、宇野をトップスケーターまで成長させたのが山田コーチだ。
宇野の引退を受け、「残念だなっていうのもあります。いいんじゃない?新しい、またきっと彼のことだから、なにか求めて行くと思います」と山田コーチ。
再会した際には「新しいところに向かっていくんだから、『頑張れ』って言うでしょうね、きっと。また、“新しい宇野昌磨”を見せてほしい」と声をかけたいと語る。
世界で活躍した愛弟子の強さの要因は「スケートが大好きで突き詰めたこと」だと山田コーチは話す。
「私のところから出た時には、やっぱり、広いところに行くことで、フィギュアスケートをもう一回見て、また新しい宇野昌磨ができあがるんじゃないかと。
うちにいたのでは、日本のあくまでも宇野昌磨なので。もう少し行けるんじゃないかと思って出しました。
結果的には、やっぱりよかったんじゃないかなって。ランビエールに会って、ランビエールの良さがまた彼に伝わり、私は成功だったと思っています」
山田コーチは続けて、宇野の背中を押す。
「きっと彼も何か新しく、スケートに対する魅力がまた違う方向にグワっといっていると思うんですよね。私も案外いいんじゃないかなって。
プロの人たちもフィギュアスケートがどんな方向に行くかを考えながらしている。彼には合っているんじゃないかな。また昌磨らしいプロスケーターになっていくと思っています」
後輩・山本草太は「感謝」
最後は、宇野の後輩にあたり長年同じ舞台で戦い、練習をともにした山本草太。
スケート界を支え続けた先輩に伝えたことは「感謝」だった。
「ジュニアのころから一緒に試合や、それこそ中京大学での練習などで常に一緒に練習や、試合へご一緒させていただく機会が多く、このスケート界を戦ってきた仲間でもあったので、率直に少し寂しい気持ちはあります。けど、でもこれからもスケーターとして携わっていくならば、これからも仲良くしていきたい」
「昌磨君が引退してしまって、現役選手となると(僕も)上の方に。
結構僕もベテランの年齢、立場にはなってきますが、これから、僕も含めて選手みんなでフィギュア界を盛り上げていきたいです。
昌磨君がここまで引っ張ってくれた、そして背中を見せてくれていた存在だったと思うので、これからは僕たちみんなでそういった存在になれるように、僕も頑張っていけたら」
「たくさんのことを学び、刺激をもらいながら僕もこうやって競技を続けてくることができました。
本当に仲良くさせてもらっていましたけど、憧れの面も多く、いろんな面で刺激をもらうことがありました。
これからもスケート人生で関わっていける機会があればうれしいと思っています。またごはんや、苦手かもしれないですけどサウナとかまた行きましょう」
多くの先輩やコーチ、そして後輩からのエールを受けた宇野の新たなステージでの活躍がすでに楽しみだ。