ブリヂストンが「ゴム人工筋肉」技術を使用した、人と共存できるやわらかいロボット「Morph」(モーフ)を公開した。専門家によると、ソフトロボティクス技術は、日本の製造業の強みを活かせる分野であり、人手不足が問題となっている分野での応用が期待される。

やわらかいロボット技術でより身近に

ブリヂストンが、人との共存を目指す「やわらかいロボット」をお披露目した。

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ブリヂストンが公開したロボット「Morph」(モーフ)は、約40年前から研究開発されてきたタイヤ製造のノウハウを活かした技術「ゴム人工筋肉」が使われている。

生き物の呼吸や、潮の満ち引きのような自然界のデータをもとに、空気の出し入れによって収縮することで、筋肉のような動きをする。

これまでは、物流現場で人手不足の解消を目指すロボットなどに活用されていたが、社内ベンチャー企業が、より人と共存できるロボットを目指して開発したという。

ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ・山口真広主幹:
我々の柔らかいロボットって人の暮らしになじんで欲しいみたいなところに使命感もってやっている。

今後は、オフィスの休憩室に設置することなどを検討していくとしている。

安全に共生する高度な技術が必須

「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
やわらかで、しなやかに動くソフトなロボット、ものづくりに詳しい長内さんの目には、どう映っていますか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
フィクションの世界でのロボットというと、「ガンダム」のような力強さをもつ「ハードロボット」と、「ドラえもん」のように、のび太君と一緒に暮らし、どこかのんびりしていて、やわらかな「ソフトロボット」の2つのタイプがあります。

今回のブリジストンのゴム技術を応用したロボットは、「ドラえもん」タイプのロボットになります。

これは人間に寄り添ってくれる「ソフトロボティクス」と呼ばれる分野の新しいロボットなんですが、実は「ドラえもん」のように人の暮らしの中にロボットが入っていくのは、かなり高度な技術が求められます。

堤キャスター:
具体的には、どんな技術が必要とされるのでしょうか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
これまでのリアル世界でのロボットは、主に生産現場などで活躍する、重いものを持ち上げる力強さがありながら、素早い動作も可能とする「ハードロボット」でした。ただ、事故を避けるため、そのロボットの周囲に人は近づくことはできません。

これに対して、「ソフトロボット」は、人に寄り添うために、しなやかに動き、人と接触しても怪我などをさせない、極めて高い安全性が求められます。今後は、農産物の収穫や介護など、人手不足に悩む分野などで活用が広がっていくと思われます。

このソフトロボティックスの分野は、日本の技術がリードしていける可能性があります。

開発をリードする日本の製造技術

堤キャスター:
日本の強みとは、どういうことなんでしょうか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
ソフトロボットには、異なる技術を組み合わせていく「すりあわせ」と呼ばれる複雑で巧みな調整が必要になります。これは自動車の生産などで培ってきた、日本のものづくりの技が生かせる分野なんです。

他者ができないことをするということが戦略の基本ですから、複雑であり、日本的なしなやかさも持った「ソフトロボティクス」は、日本の強みを活かせる重要な分野になっていくのではないでしょうか。

堤キャスター:
暮らしの中で、ロボットの力を借りる場面が増えていく今の時代だからこそ、人の代わりになるだけではなく、一緒にいると心が温かくなるようなロボットを期待したいですね。
(「Live News α」5月16日放送分より)

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