天気予報などで「紫外線対策をしましょう」と耳にすることが多くなってきた。そもそも「紫外線とは具体的に何か?」「対策は本当に必要なのか?」「夏になってからでも遅くないのでは?」という疑問を抱きがちだ。紫外線対策を先延ばしにすると、直ちに影響は出ないが、肌へのダメージや健康への影響は時間をかけて顕著になるため、注意が必要である。

「紫外線」って何?

紫外線は太陽から来る光の一部である。地上に届く太陽光のうち、人間が目にすることができる可視光線より長いものを赤外線、短いのが紫外線だ。更に波長が短いX線などもある。この目には見えない紫外線は、波長が長い順にUV-A、UV-B、UV-Cの3つに分類される。

このうち、UV-Cの全部とUV-Bのうち波長の短いものは上空のオゾン層に吸収され、地上には届かない。しかし、UV-Bの波長の長いものとUV-Aは地上に届く。

紫外線は皮膚がんや白内障の原因になることも… イメージ映像
紫外線は皮膚がんや白内障の原因になることも… イメージ映像
この記事の画像(9枚)

UV-AとUV-Bの2種類では、肌への影響はそれぞれ異なる。UV-Aは肌の深い層へと届き、肌の老化を促す。一方、UV-Bは肌の表面に作用し、日焼けや皮膚がんの原因となることがある。このUV-Bは数%に過ぎないが、皮膚がんや白内障の原因になることもある。そこで、紫外線対策をしてUV-AとUV-Bから私たちの体を守る必要がある。

いつから紫外線が強くなる?

紫外線は一年中降り注いでいるが、特に4月頃から急に強くなっていく。それから夏にかけて紫外線は更に強さを増し、7月と8月にピークを迎える。

紫外線には「UVインデックス」という日差しの強さを数値で表すものがある。この数値が高ければ高いほど、日焼けや肌に悪い影響を与える紫外線が多いということだ。主に0から11+の範囲で示され、数値が上がるごとに紫外線の強さも増す。

環境省によると、数値が「1~2」だと紫外線は弱く、安心して戸外で過ごせる。しかし、「3」以上になると注意が必要になってくる。紫外線対策として、日中は日陰を利用したり、日焼け止めを塗ったり、帽子をかぶったりするのがおすすめだ。

5月の日本は広い範囲で平均すると5以上となっているため、対策が必要だ。

5月の日差しも紫外線対策が必要 イメージ映像
5月の日差しも紫外線対策が必要 イメージ映像

1年で最も気温が高くなるのは平年だと7月下旬から8月上旬にかけてだが、太陽の光が最も強いのは太陽が一番近くなり、真上を通る夏至だ。2024年の夏至は6月21日(金)である。しかし、6月の紫外線が最も強くならないのは梅雨の時期にあたるためだ。

梅雨の時期でも晴れ間は空気が澄んでいて紫外線がかなり強くなるため、注意を怠ってはいけない。5月の紫外線は6月と同じくらいである。また、私たちの肌は紫外線を浴びた後の9月頃より、強い紫外線に慣れていない5月の方が紫外線に対する抵抗力が弱く、より注意が必要になってくる。

1日の中で最も強い時間帯は?

紫外線の強さは日中でもピークの時間帯があり、特に午前10時から午後2時の間は紫外線が最も強い。

紫外線の強さを示すUVインデックス(東京が例)を1時間毎に分けると、午前11時から正午にかけては7以上と強い。この時間帯を意識して外出時間を前後にずらすというのも対策となる。

ただ、午前9時頃からは既に紫外線が強まってくるので、すぐ近くの場所で短い時間の用事だから…、ベランダに洗濯物を干す間だけだからと何も対策をしないと紫外線の影響を受けてしまう。

対策として日焼け止めを塗るのは効果的だが、少しの時間のために塗るのも面倒な場合や、手を汚したくないときは日焼け止めスプレーがある。それをシューッと顔や腕などにスプレーをするか、「つばが大きめ」の帽子を被るなどの対策をするのが良さそう。

曇りや雨でも届く紫外線

天気によっても紫外線量は変わる。紫外線が地上に届く量は快晴のときを100%とすると、薄曇りで約80~90%は地上に届き、どんよりとした曇りのときでも約60%、雨のときですら約30%が届いてしまう。

5月からは年間の中でも紫外線が強くなってくる時期なので、晴れていなくても紫外線対策が必要になってくる。

雨の日は傘があるので傘で紫外線を遮ることができ、それなりに紫外線対策はできる。しかし、曇りの日は日傘や帽子を忘れてしまうということもあるため、晴れているときと同様に意識することが大切である。

日焼け止め、サングラス、日傘や帽子などで対策を

紫外線対策として真っ先に思いつくのが日焼け止めだという方も多いかと思う。日焼け止めの種類に関わらず、こまめに塗り直すことが大切だ。時間が経つにつれ、また汗や摩擦によっても効果が薄れてくる。紫外線には地面で反射して届くものがある。この照り返しも踏まえて、顎の下や首回りも忘れずに塗るのがおすすめだ。

サングラスで目を保護するのも大事 イメージ
サングラスで目を保護するのも大事 イメージ

目に入る紫外線をサングラスで保護することも大切である。目から紫外線が入ることで脳が察知し、メラニン色素を体内で作るよう指令を出すため、日焼けしてしまうことがあるからだ。

また、目が紫外線を浴びると角膜にダメージが起きて、痛みや充血などの症状が起き、深刻になると白内障を引き起こす可能性があるそうだ。予防のためにもサングラスの活用をおすすめしたい。

日傘は差し方がポイントになる 資料映像
日傘は差し方がポイントになる 資料映像

暑さ対策にもなる日傘だが、肩にかけるように差しては、顔や首に日差しが当たり、効果は薄れる。ある程度、顔に近づけるように差すことがおすすめだ。また色が濃く、より厚手の日傘を選ぶと効果が高まる。
日傘や帽子(つばが大きい方が良い)などを利用して、顔だけでなく、髪や頭皮のダメージを防ぐことができる。

服装でも紫外線対策

少しでも紫外線から肌を守るには服装でも対策ができる。日傘選びの際に、色が濃く、厚手のものが効果的だと触れたが、服装でも同じことが言える。黒や紺色などの濃い色の服の方が、白などの薄い色の服よりも紫外線をたくさんカットしてくれる。黒い色は紫外線を最も通しにくく、白などの明るい色は通しやすい。服を選ぶときに色で迷ったら、濃い色のものを選択するのがおすすめだ。

服は濃い色のものがオススメ 資料映像
服は濃い色のものがオススメ 資料映像

服の素材でも変わってくる。紫外線を遮る効果が高い順に、ポリエステル、麻、綿である。しかし、ポリエステルは紫外線を通しにくい分、通気性が悪いという欠点がある。生地が厚いのも紫外線を防ぐ効果が高くなるので、少し厚めの綿素材や、ポリエステルと綿の混紡素材を選ぶというのも1つの方法だ。

室内でも油断大敵

屋外を中心に対策を伝えてきたが、室内であっても油断はできない。室内でも窓から入る紫外線は無視できないため、日の当たる場所で長時間過ごすときは紫外線対策をする習慣をつけるのが望ましい。対策としては、UVカットフィルムを窓に貼るか、カーテンで直射日光を遮るのがおすすめだ。

5月の紫外線には十分な注意が必要であり、適切な対策を日常生活に取り入れることで、リスクを軽減できる。この季節を楽しむためにも、紫外線対策をしっかりと行い、健やかな毎日を送りたい。
【執筆:日本気象協会】

日本気象協会
日本気象協会

日本気象協会は1950年の設立以来、気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行ってきました。2023年7月1日現在、355人の気象予報士が所属しています。
昨今、気象の激甚化や地球温暖化、エネルギー問題、情報化社会の進化、超高齢化・少子化社会の到来など、世の中の状況が大きく変化してきています。
日本気象協会の最大の強みは調査解析技術とリアルタイムに情報を提供できる技術を併せ持つこと。
世の中の変化に対して、強みを生かし法人や個人のお客様とともに、「自然界と調和した社会」の創生を目指し未来を切り開いてまいります。