2023年に福島第一原発が立地する福島県大熊町に移り住んだフランス人のエミリーさん。豊かな自然と大好きな仲間に囲まれて、農業に取り組んだこの一年。移住2年目、彼女の新しい春が始まった。
イラストと農業で福島を伝える
「みんなにもっと福島のことを知らせたかったから、赤べこを書いたんです。どんどん好きになりました」と話すのは、イラストレーターのブケ・エミリーさん。

フランス出身の彼女は2011年4月に語学学校の講師として来日。その後旅行で訪れた福島県に魅了され、2023年2月に福島第一原発がある大熊町に移住した。イラストや農業を通じて、福島の今を発信している。

“危ないイメージ”を払拭したい
エミリーさんは「SNSでフランス語での発信を始めたときに、福島に人が住めますか?という質問もされた。福島のイメージは“危ない”。フランス人は、まだそういうイメージがあるので、大熊町で農業をやって、オーガニックなキイチゴを作って安全って発信したい」というように、福島の魅力と大熊の今を伝えたいと考えている。

農作物の安全性を発信しようと、ラズベリーの栽培にも取り組んでいる。エミリーさんは「ラズベリーを、ここに来てくれる観光客に食べてもらって、また福島に行きたいという気持ちにさせたい」と話す。

目の当たりにして分かること
2023年6月14日、初めて福島第一原発へ。「原発事故のあとで、フランスのテレビで煙が出ているとか、ずっと流れていた。大熊町ですごく近くに住んでいるから、きょうは見に行けるチャンスがあってうれしい」とエミリーさんは話す。

骨組みがむき出しになったままの1号機原子炉建屋・・・「工事もやっていてすごいね。“すごい”の言葉しかでてこない」

2023年8月、福島第一原発から処理水の海への放出が始まった。
エミリーさんは「国や東京電力は諦めずに、発信を続けていった方がいいと思う。みんなここに一回来てもらいたい。やはり知らないと怖いのではないかな。自分の目で見て、自分の心で感じて、安全って感じがするのではないかな」と話した。

おばあちゃんになるまで
大熊町の人とも交流を深め、2023年9月には地域の夏祭りに参加。大熊町の夏祭り仲間と作った「じゃがいものスープ」は大好評。

仲間の一人、喫茶レインボーの武内一司さんは「エミリーさんがいると全体的に雰囲気が明るくなる」と話し「エミリー頑張るからな。失敗していいの。最初から成功することないのだから。失敗してそれをまた学んで次の段階に進んで」とエミリーさんのこれからを応援している。

移住者もかつての住民も、みんなで輪になる盆踊り。エミリーさんは「これからの夏って感じがしました。これから毎年毎年、この大熊の夏を楽しんで。おばあちゃんになるまで」と笑った。

充実した日々に両親も安堵
2023年11月30日、フランスから両親が初めて大熊にやってきた。移住を心配していた
フランスの両親もここでの生活を応援している。
父・レミさんは「いろいろ心配があった。福島イコール原発事故のイメージもあったから、不安でした。ここにたくさんの人が住んでいて、住めるエリアになったから安心しました」と話す。

母・イザベルさんは「福島県で好きなことをしながら、毎日喜びを感じて楽しんでもらえたらそれでいいわ」と話した。

春夏秋冬…日本語とフランス語、英語で発信を続けてきた一年。「普通の生活、普通の農業を発信して、景色で心を動かせればいいなと思っている」とエミリーさんはいう。

人生をかけた農園
フランスから遠く離れた大好きなこの場所で、大好きな人たちと。「どこ行っても知っている人に会ったり、一緒に笑ったり、すごく楽しい。それは大熊のパワーだと思います」エミリーさんはいう。

「この農園は人生かけている。大熊にこんなに面白いジャガイモあるな、こんなにおいしいニンニクあるなって、また遊びに来てくれたら。また来年面白いものを作る」と話した。

2年目の大熊町での生活が始まっている。
(福島テレビ)