40日経過しても民主党の下院候補が決まらない

ニューヨーク第12選挙区は、マンハッタン島の国連本部もある地域を範囲とする。その米国を代表するような選挙区で、民主党の下院候補が、現時点では(日本時間8月3日18時現在)、予備選挙から40日余経つのにまだ決まっていない。

国連本部も位置するニューヨーク第12選挙区

選挙は6月23日に行われたが、郵便投票の開票に手間取っているからだという。

新型コロナウイルスで感染が心配されたため、選挙管理委員会が郵便投票を推奨した結果、投票日当日に投票所での投票数が約4万票であったのに対し、郵便投票数は約6万5000票にのぼるとされる。

選管では郵便投票を一票一票有効性を点検しながら開票しているので時間がかかっている上に、その約20%を無効としたために不利益を被る候補者から抗議が出て、訴訟も起こされている。

郵便投票の場合一票一票の確認に時間がかかる

選管ではなんとか選挙結果を確定したいと言っているが、「訴訟が決着するまでは敗者が結果を承認することはないだろう」と地元紙「クィーンズ・デイリー・イーグル」は報じている。

似たような問題は、今全米の予備選などで起きている。それでも党の候補者を決めるのであればまだ時間の余裕もあるが、郵便投票が大統領選挙本番で採用された場合の混乱は計り知れない。

2020年大統領選は70%ほどが郵便投票か

前回2016年の大統領選では約20%の投票が郵便で行われたというが、新型コロナウイルス感染下の今年の大統領選では、70%ぐらいは郵便投票になるのではないかとも言われる。

実施方法や各地の郡単位の選管で異なるが、カリフォルニア州ロサンゼルス郡の場合は次のような手順になる。

2020年アメリカ大統領選では70%が郵便投票か(画像はイメージ)

先ず有権者に選管から「郵便投票案内」が送られる。記載の氏名、住所等に誤りがなければ放置しておくと、やがて投票用紙と郵送費支払済の返送用の封筒が送られてくる。選んだ候補者を記名の上、自身の署名を添えて返送する。返送は、投票日の29日前から受け付ける。またこの郡の場合は、希望によってスペイン語の投票用紙も送付される。

米国には住民登録制度がないため、選管が有権者と判断して「案内」を送付するのは「最近の選挙に投票した者」や「有権者登録を済ませた者」などだが、最近引っ越してきた者はその旨申告して郵便投票用紙を受け取ることができるとロサンゼルス郡選管のホームページには記載されている。

ニューヨーク州の隣のニュージャージー州でも、今年5月12日に行われた全て郵便投票による特別選挙で、総投票数のほぼ10%が無効票となった。その内26%が署名が違ったり記載がなかったもので、次に19%が投票が投票日に間に合わなかったり、13%が身分を証明するものが欠けていたものなどとなっていた。

大統領選での郵便投票には慎重論も

投票の10%、20%が無効票になるのはやはり異常と言わざるを得ない。ここへきて大統領選で郵便投票を採用することに慎重論も出てきた。

トランプ大統領は、郵便投票について「不正が起きる」と批判

さらに、郵便投票は他人が有権者に変わって投票することを可能にする。例えば、普段は投票率の低いヒスパニック系住民の代わりに、彼らの支持が集まる民主党員が投票することも可能だと共和党の反対派は主張する。

加えて米国の郵便公社も遅配が日常化していて、投票日までに全ての投票を集めることができるか疑問視され始めている。

それにも関わらず、来る大統領選で郵便投票が広範囲に実施されれば、抗議や訴訟が各地で巻き起こるのは目に見えている。2000年の大統領選では、フロリダ州の各郡で票の再集計がおこなわれジョージ・ブッシュ候補の当選が確定したのは35日後だったが、今回はそれでは済まないだろう。

11月3日(現地時間)の投票日に、当選確実を打つのは難しくなりそうだ。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】