長野県塩尻市の「名物ドライブイン」が無期限の休業に入った。4月28日が営業最終日。常連の住民やトラック運転手など多くの客に惜しまれながら、60年の歴史に一区切りをつけた。涙と笑顔の一日を取材した。 

休業前、最後の営業

にぎわう店内。多くの客がメニューの写真をパチリ。

木曽町から訪れた客は「もう食べられなくなると思うと、ちょっとさみしい」と、名残惜しそうに味わう。

定食を撮影
定食を撮影
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国道19号線沿いにある「食堂S・S 木曽本店」(長野県塩尻市)。

4月28日、休業前最後の営業を迎えた。

客:
「再開、待ってます。心待ちにしています」

食堂S・S 佐藤秀美さん:
「ありがとうございます。頑張ります」
「どうしましょう。だんだんと切なくなってきます」

「再開、待ってます」
「再開、待ってます」

開業1964年 人気は「さば煮」

開業は1964年・昭和39年。

「S・S」は初代社長・佐藤進さんのイニシャル。

150種類以上ものメニューの中で特に人気なのが「さば煮」。

二度煮込んで味を染み込ませている。

150種類以上ものメニュー
150種類以上ものメニュー

閉店ではなく「休業」

60年にわたって、トラックの運転手や住民に親しまれてきたが、スタッフの高齢化から無期限の休業を決めた。

トラックの運転手や住民に親しまれてきた
トラックの運転手や住民に親しまれてきた

食堂S・S 店主の佐藤秀喜さんは「もうちょっと続けてできるところまでやりたかったんですけれども、従業員の限界が来てしまって」と、しみじみと話す。

「閉店」ではなく「休業」。

建物は残しておき「後継者」が現れることを願っている。

食堂S・S 店主・佐藤秀喜さん
食堂S・S 店主・佐藤秀喜さん

最後に好きなメニューを

迎えた最後の営業日。

2日連続で来店したという客は「慣れた所がなくなるっていうのは寂しい」と話し、名物の「さば煮」を最後に味わった。

2日連続で来店した客は、「さば煮」を
2日連続で来店した客は、「さば煮」を

店を出る前、「ありがとうございました。お世話になりました」と長年、厨房で働くスタッフを労った。

スタッフを労う
スタッフを労う

この日、2度目の来店という客も。

好物の鍋焼きうどんと焼肉を注文した。

「さみしいだけです。これが食べられなくなるってことは」と話し、ゆっくりと味わった。

この日2度目の来店で、好物の「鍋焼きうどん」を注文
この日2度目の来店で、好物の「鍋焼きうどん」を注文

温かいメッセージ

花を届けに来た人もー。

食堂S・S ・佐藤秀美さん:
「こういうの見ると切なくなるんですよね。こんなにしてもらって、どうしよう(涙)」

食堂S・S 店主・佐藤秀喜さん:
「早く再開して、また皆さんの、思いに応えなきゃだめなんだよ。そういうメッセージだよ」

客から花束を渡される佐藤秀美さん
客から花束を渡される佐藤秀美さん

旧車の愛好家グループも

残り1時間を切った頃、やってきたのは旧車の愛好家グループ。

乗ってきたのは、S・S食堂と同い年の車だという。

「木曽路を通るときは、朝寄って、用事を済ませて帰りも寄った」と話す。

安曇野市から来た旧車の愛好家グループ
安曇野市から来た旧車の愛好家グループ

そして、いつものメニュー「納豆汁」を味わった。

味は「最高」。

必ず納豆汁を注文する男性
必ず納豆汁を注文する男性

旧車の愛好家たちも花束を―。

「60年間、おつかれさまでした」

旧車の愛好家たちも花束を
旧車の愛好家たちも花束を

「一日も早く再開を」

食堂S・S 店主・佐藤秀喜さん:
「いまだに実感はわかないですね。まだ明日、またここに来ちゃいそうな。頑張ってきてよかったなって、そういう思いです。もう一つね、私のいつも傍らにいて、人一倍努力し頑張ってきた妻にも感謝したいと思います。本当に、ありがとな、ご苦労さま」

食堂S・S・佐藤秀美さん:
「(涙)ありがとうございました。皆さまのおかげで、きょうまで頑張ってこられた」

佐藤秀喜さんと妻の秀美さん
佐藤秀喜さんと妻の秀美さん

常連客のリクエストで最後は店の前で記念撮影。

食堂S・S 店主・佐藤秀喜さん:
「早くに4代目を探して指導して、一日も早く、お客さまの笑顔を見たいなって思います」

客:
「みんなで『いらっしゃいませ』って言ってくださいよ」

スタッフ:
「いらっしゃいませー」

記念撮影
記念撮影

(長野放送)

長野放送
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