特殊詐欺の被害が相次ぐ中、被害状況・手口を調べてみると、あるキーワードが浮かび上がってきた。それが「被害額約99万円」だ。100万円ではなく、なぜキリの悪い99万円なのか、その理由を取材すると、犯人が仕掛けた巧妙な手口が見えてきた。

相次ぐ「還付金詐欺」の被害に共通点

後を絶たない特殊詐欺の被害。中でも2023年、島根・鳥取の両県でともに被害が最多となったのが「還付金詐欺」。公的機関の職員を名乗り、医療費などの還付金があるとウソの話を持ちかけ、手続きのためと偽り、金融機関のATMに誘導し送金させる手口だ。

特殊詐欺被害の事例を調べてみると…
特殊詐欺被害の事例を調べてみると…
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この特殊詐欺の被害について過去の事例を調べてみると、「被害額が99万円台」という共通点が浮かび上がってきた。

実際に、2024年3月に鳥取・米子市で約99万円をだまし取られる特殊詐欺事件が発生するなど「被害額99万円」の特殊詐欺事件が全国で相次いでいる。送金を指示するなら、ぴったり100万円の方がわかりやすい気もするのだが。鳥取県警の担当者に聞いてみると、意外な理由があった。

半端な数字の並びを入力することで錯覚

「100万円を送金させると、すぐに被害者にこれはウソじゃないか、詐欺じゃないかと気づかれてしまうので、ぴったりではない額を指示してくる」。

こう推測するのは、鳥取県警生活安全企画課の宮辻美和室長補佐。犯人がいわゆる「数字のマジック」を悪用し、ATMから送金していることを意識させないよう、被害者の心理をコントロールする狙いがあるとみている。

宮辻室長補佐によると、多くの金融機関がATMの1日の送金限度額を100万円に設定しているので、その上限ギリギリで、何かの個人番号や年金番号だと思わせるために、「99万8321円」といった半端な数字が並ぶ金額を意図的に指定しているのだという。

確かにATMで100万円を振り込む場合、金額の入力は「1」「0」「0」と「万」のボタンを押すだけだ。こうした単純な操作だと、被害者に「100万円」を振り込んでいるという意識を持たせてしまうため、詐欺であることに気づかれやすくなる。

一方で、「送金上限額ギリギリまで振り込ませたい」と目論む犯人は、その数字が金額であることを悟られないよう「今から伝える数字を入力してください」などと、半端な数字の並びを伝えることで、被害者が何かの番号を入力しているかのように錯覚させる狙いがあるということだ。

「ATMに行って」は詐欺

こうした「99万円」狙いの特殊詐欺の被害を未然に防ぐため、鳥取県警の宮辻室長補佐は「『ATMに行って』と言われたら、まず詐欺だと思ってほしい。『きょう中なら手続きできます』など人を焦らせる話が出たら、詐欺だと思ってほしい」とあらためて注意を促した。

人間の心理を悪用した、巧妙な手口の「99万円」狙いの特殊詐欺。被害に遭わないためには、少しでも怪しいと思ったら、警察や身近な人にまず相談することが大切だ。

(TSKさんいん中央テレビ)

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