日米首脳会談では、バイデン大統領との緊密な関係で進展もあったが、一方で両国で立場に違いがある問題がある。それが、USスチール買収の問題。

「アメリカの産業はアメリカ国内に」

日米間の懸案事項となっている、日本製鉄の「USスチール」買収問題。
アメリカのバイデン大統領は、10日に行った岸田総理との共同会見で…。

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バイデン大統領:
アメリカの労働者との約束を守る。

買収に反対する労働組合への連帯を示した。

FNNは、USスチールの本拠地で、鉄鋼の街として知られるペンシルベニア州のピッツバーグを緊急取材した。

ペンシルベニア州にあるUSスチールの製鉄所。
入り口には大きな男性の像があった。
この像は「ジョー・マガラック」という架空の人物で、鉄棒を曲げ“強さ”の象徴となっている。

かつては強いアメリカのシンボルだった鉄鋼産業。
中でもUSスチールは、123年の歴史を誇り、一時は世界1位の企業だった。
しかし、時代とともに競争力を失ってきた。

USスチールの製鉄所の跡地には、1907年にできた溶鉱炉が、今もそのままの状態で保存されている。

製鉄所跡地を保全するNPO(民間非営利団体)関係者:
これは世界一の生産量を誇る溶鉱炉でした。USスチールの成功なくして、アメリカの20世紀は成り立ちませんでした。

そうしたアメリカの象徴的企業の買収に、地元の人たちの思いは複雑。

元従業員:
賛成できないね。 アメリカの産業はアメリカ国内にとどめておきたい。

市民:
製鉄所を稼働し続けてくれて、雇用を創出してくれるなら、私はそれでいい。

岸田首相は単独インタビューに…

そうした中、アメリカメディアはこの買収計画について、司法省が日本の独占禁止法にあたる「反トラスト法」に基づく調査を始めたと報じた。

FNNは、日米首脳会談を終えた岸田首相との単独インタビューで、バイデン大統領とどのように向き合ったのか聞いた。

記者:
アメリカ政府が民間取引への介入をするということについて、どのようにお考えになっていて、どのような決着を図るおつもりでしょうか?

岸田首相:
ご指摘の点については、今当事者間で話し合いが行われている状況です。日米双方にとって、良い話し合いになることを期待するというのが日本政府の立場です。
今、日本は米国にとって最大の投資国です。日本とアメリカは経済面においても「WIN-WIN」の関係。こうした関係は、これからも確実なものにしていきたい。

一方、アメリカの司法省が始めたという独占禁止法の調査について、ニューヨークやワシントンなどで活躍している国際弁護士の湯浅卓氏はこう見ている。

国際弁護士 湯浅卓氏:
トップラス同士の合併話なので、当局が調べるのはやむを得ないと思います。その意味では嫌がらせではない。そのタイミングが、あまりにも大統領選挙に近いので、労働組合側がこれを政治問題化した。

USスチールの買収問題は、2024年11月に迫る大統領選を前に政治問題化していて、買収時期は見通せない状況だ。
(「イット!」 4月12日放送より)