カジュアルファッションブランドを展開するアダストリアが、業界初のメタバースプラットフォームサービス「スタイモアー」を開始した。
アバター用ファッションアイテムを中心に、異業種商品まで取り扱う。
専門家は、新たなカルチャーを創出する大きな可能性を指摘している。

ファッション業界初のメタバース空間

どんな企業も、クリエイター個人も参加できる「メタバース」のプラットフォームが立ち上がった。

VR(仮想現実)ゴーグルの先に広がる世界は――。

上中キャスターがVR越しに見ているメタバース空間
上中キャスターがVR越しに見ているメタバース空間
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上中勇樹キャスター:
わ、すごい。いっぱいお洋服が並んでいますね。

シーン別のコーディネートが展示された仮想現実。

カジュアルファッションブランドを展開するアダストリアが、10日からサービスを開始した「スタイモアー」。

自社のブランドだけでなく、他社や個人クリエイターも店舗を出店できる業界初のメタバースプラットフォームだ。

販売されるのは、アバター向けのファッションアイテム。中には、異業種の商品もあった。

バーチャル店員:
この右側が、サンリオとのコラボ商品。リアルでもメタバース空間でも、リンクしたコーディネートを楽しめます。

上中キャスター:
実際に、購入ができる?

バーチャル店員:
はい、そうです。

一部の店舗では、デジタルとリアルで、同じデザインのものを展開。自分の分身となるアバターと“おそろいコーデ”が楽しめる。

バーチャル店員:
アバターが着ているから、リアルな自分も抵抗なく買えたという人も多い。

教育や地方創生、そしてビジネスシーンでも、さまざまな分野での活用が進むメタバース。
国内市場の規模は、年々右肩上がりの中、ファッション業界でも、その重要性は高まっている。

アダストリア ドットエスティメディア部長・島田淳史さん:
誰かとメタバース空間で会う、イベントに参加するというファッションを見つけてもらう。(デジタルのファッションが) 1つの選択肢になってくれたらいい。デジタル領域での顧客接点を作っていたところで、メタバース領域の進出を決めた。

ファッションとメタバースの親和性が生み出す、デジタル領域における顧客へのアプローチ。
その鍵を握るのは、若い世代ならではの新しい価値観だ。

アダストリア ドットエスティメディア部長・島田淳史さん:
いわゆるZ世代や、その下のα世代の人たちが、今後、メタバースネイティブとして成長して、自分でお金を払ってアバターを買う、ファッションを楽しむ「1人1アバター」のような世界が来たときは、こういったことが今後の成長として期待できる。

現実と仮想のいいとこどりの新体験

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
── 広がりが期待されるメタバース、どうご覧になりますか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
メタバースはリアル店舗のように、アバターを通じてショップのスタッフと対話ができて、しかもネット通販のように、どこからでも24時間、買い物を楽しめます。リアル店舗とネット通販の“いいとこどり”をした新しい買い物の選択肢になるとされています。 

ただ、企業がメタバースを活用する際に、単に「物を売る場」としてとらえてしまうと、思うような成果が挙げられないかもしれません。

メタバースの主な利用者は、若者です。この若い世代との関係性を深める場にする、そうとらえると、さまざまな可能性が見えてきます。

堤キャスター:
── その可能性とは、どういうことでしょうか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
いま、グッチやバレンシアガなどのラグジュアリーブランドも、メタバースの活用に取り組んでいます。知ってもらいたいブランドの世界観を、仮想空間では存分に表現できるため、エンゲージメントの構築にも役立つとされています。

ここでの成功の鍵は、メタバースの主役となる「アバター」の使い方に、ゲームの要素を取り込んで、ワクワクする体験を提供することです。

顧客との輪を確立する重要な試み

堤キャスター:
── 確かに、遊び感覚でバーチャルストアなどに訪れることができるのは楽しそうですね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
例えば、単にアバターに洋服などの商品を売るのではなく、アバター自身がお店のオーナーになって、商品をほかのアバターに販売することもできます。

これはマーケティングでは、「ゲーミフィケーション」と呼ばれる手法で、ゲーム感覚の楽しい体験で顧客を取り込み、さらにはユーザーのつながりの輪を広げていくことができます。

堤キャスター:
── メタバースを活用する企業が、これから増えていきそうですね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
メタバースには大きな可能性がある一方、この分野に参入することがゴールではありません。  

まずはメタバースを通じて、どうすれば顧客との絆を強くできるのかを検討することが大切です。これはブランドを劣化させないためにも、重要な試みだといえます。

堤キャスター:
仮想の世界だからこその価値をうまく活用することで、認知や集客の輪を広げる大きな可能性があるのかもしれませんね。
(「Live News α」4月10日放送分より)

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