海上自衛隊・呉基地を母港とする護衛艦「かが」の第一段階の改修工事が終わり、4月8日、報道陣に公開された。日本周辺の緊張状態が高まる中で、事実上の“空母化”とも言われる大規模な改修・改造の意味を考える。

戦闘機が発着できる滑走路に改造

海上自衛隊で最も大きな船、護衛艦「かが」。全長248メートルで戦艦大和の263メートルに匹敵する大きさだ。3月29日に改修工事の第一段階を終えた。

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これまではヘリコプター型の機体しか降り立つことができなかったが、甲板部分に最新鋭のステルス戦闘機・F-35Bも搭載できるようになる。つまり事実上の「空母化」と言える。

五十川裕明 記者:
甲板は内野グラウンド6つ分の面積があるそうです。艦首が真っすぐになり、甲板全体が大きな長方形になったことが特徴。F-35Bは新しくできた滑走路を黄色いラインに沿って飛び立っていくということです

2017年に配備された護衛艦「かが」。2年がかりで改修工事が進められ、当初、台形の形をしていた先端部分を長方形に改造。機体が飛び立つときの気流の影響を抑えるねらいだ。

2023年3月、艦首を長方形へ改造する工事の様子
2023年3月、艦首を長方形へ改造する工事の様子

「F-35Bを運用できる体制を整える」

F-35B戦闘機はジェット噴射を使い垂直に降り立つことができるため、甲板の全長が248メートルの「かが」でも着艦が可能。着艦時、高温のジェット噴射に耐えられるよう甲板の後方部分は特殊な耐熱加工が施されている。

一足先にいわゆる“空母化”された同型の護衛艦「いずも」はすでにアメリカ軍と検証を行い、発着に成功している。

甲板に滑走路を持ち戦闘機をのせることができる事実上の空母化について、長年、防衛関連の取材をしているフジテレビの能勢伸之上席解説委員に話を聞いた。

フジテレビ・能勢伸之 上席解説委員:
日本周辺の状況があまりにも厳しくなっている。対応策の一つとしてF-35Bをのせる船をどうするか。F-35Bが要求する滑走路の長さは200メートルちょっとですから、そうすると「かが」と「いずも」はそれに当てはまるということで改修が始まった

護衛艦「かが」艦長・國分一郎 一等海佐:
これだけの大きな工事は海上自衛隊にとって初めてでしたので、大きな改修・改造を終えてまずは一安心。F-35Bを運用できる体制を整えることについては能力が向上したのかなと認識しています

島しょ防衛の部隊を空から支援

事実上の空母化がささやかれるが、実際にはそう言い切ることも難しい。護衛艦「かが」の國分艦長も8日のインタビューでこう見解を述べている。

護衛艦「かが」艦長・國分一郎 一等海佐:
私の認識としては、空母というのは現在国際的に定義されたものではありません。一般論から申し上げますと米空母のようにもっぱら航空機の運用機能に特化した船舶、これが攻撃型空母を指すものではないかと認識しています

空母の定義ではなく、あくまで“多機能な護衛艦”という位置づけ。とは言え、これまでのせられなかった戦闘機をのせられるようになった点で大きな違いがある。

フジテレビ・能勢伸之 上席解説委員:
元々「いずも」と「かが」は対潜作戦用に哨戒ヘリコプターを中心に搭載する護衛艦でした。ただ日本の周辺状況、南シナ海、台湾海峡、そのほかの緊張状態が高まっている。日本も島しょ防衛をしなきゃいけなくなるという状況から考えると、島しょ防衛をする部隊を空から支援する飛行機が当然必要になってきます

防衛の必要がなければ事実上の空母化もないわけで、それだけ日本を取り囲む環境は厳しくなってきていると言えそうだ。フジテレビの能勢上席解説委員によると、2027年以降、航空自衛隊は40機以上のF-35Bを導入することになっている。

“事実上”という言葉はつくが、果たす役割としては空母の印象を受ける今回の大規模改修。護衛艦「かが」に先駆けて事実上空母化された同型の護衛艦「いずも」の訓練では、F-35B戦闘機が垂直に降りてくる様子が見られる。これはF-35Bならではの降り方で、F-35A、F-35Cの機体にはできない。垂直に降りられるからこそ運用できる。そして甲板の滑走路を一気に飛び立つことができる。

海上自衛隊 公式YouTubeより
海上自衛隊 公式YouTubeより

護衛艦「かが」は2024年度中にもF-35Bの運用について検証が行われるとみられる。時期は未定だが今後、第二段階の改造も予定。不測の事態に備えて日本の防衛力の大きな強化につながりそうだ。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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