除染で出た土を再利用し、農作物を栽培する実証事業が進む福島県飯舘村の長泥地区。2025年度に市場に出荷できるよう調整を進めていくことが明らかになった。

栽培した農作物 基準値大きく下回る

2024年3月27日に飯舘村で開かれた「飯舘村長泥地区環境再生事業運営協議会」では、環境省や村の関係者が6年目をむかえる長泥地区の環境再生事業について話し合った。

6年目を迎える環境再生事業について話し合う
6年目を迎える環境再生事業について話し合う
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この事業は、飯舘村内の除染で出た放射性セシウム濃度が低い土で農地を造成し、50センチの土で覆ったうえでコメや野菜などを栽培。2023年度に収穫した玄米から検出された放射性セシウム濃度は、1kgあたり100ベクレル以下という基準を大きく下回る1キログラムあたり0.4ベクレル。

2023年の田植えの様子 収穫した玄米は基準値を大きく下回る
2023年の田植えの様子 収穫した玄米は基準値を大きく下回る

理解をひろげて…村外で進まぬ実証事業

検証が進む一方で、飯舘村外での事例拡大には繋がっておらず、協議会では住民から「国民への理解を広げて欲しい」などの意見が出された。飯舘村の高橋祐一副村長は「国民の理解を得て、再生事業というものを推進して行かなければ、30年後の中間貯蔵施設の除染土の廃棄、県外搬出という部分がなかなか難しいのではないか」と話す。

飯舘村 高橋祐一副村長
飯舘村 高橋祐一副村長

環境省は、次の段階として2025年度には長泥地区で栽培した農作物を出荷できるよう、国や福島県と調整を進めることにしている。

実証事業は栽培の次、出荷のフェーズへ
実証事業は栽培の次、出荷のフェーズへ

中間貯蔵施設はまもなく満杯に

除染土は福島県の大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設に搬入されている。その量は、東京ドーム約11杯分に上る1376万立方メートルが保管されていて、施設の使用率は90%に達している。

中間貯蔵施設の使用率は90%
中間貯蔵施設の使用率は90%

2024年度は約30万立方メートル搬入する計画で、国は2045年3月までに福島県外で最終処分を完了させることを法律で定めている。
これまで国は、東京都と埼玉県所沢市などで再生利用の実証事業を行うと発表したが、地元の反対があり開始のめどが立っていないのが現状。

2045年3月までに福島県外で最終処分完了と法律で定める
2045年3月までに福島県外で最終処分完了と法律で定める

復興を進めていく上で欠かせない、除染土の再生利用に最終処分。国は最終処分について2024年度中に工程を示すことにしている。

(福島テレビ)

福島テレビ
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