能登半島地震では道路が寸断され、最大24地区で3000人以上が孤立した。能登半島と地理的に似ている、静岡県の伊豆半島でも地震によって孤立するおそれのある地域がある。孤立にどう備えればいいのだろうか、自治体が自衛隊や消防と現地調査を実施した。

道路寸断で孤立 支援に遅れ

能登半島被災地で活動する静岡県の消防士
能登半島被災地で活動する静岡県の消防士
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2024年元日に発生した能登半島地震。
発生直後に救助活動に向かった消防は、道路の寸断によって活動を思うように進められなかった。
静岡県から応援に入った消防士たちは「かなりの道路が寸断されており、行くまでにかなり時間を要した」「自分は東日本大震災や熱海土砂流でも出動したが、それ以上に現場に到着できないような状況だった」と振り返る。

自衛隊は歩いて孤立集落へ
自衛隊は歩いて孤立集落へ

道路が寸断された結果、3000人以上が孤立した。自衛隊が徒歩で食料などを届けたが、支援に遅れが出た。

空からの応援に不安

甚大な被害があった能登半島北部と地理的に似ている伊豆半島南部。海に囲まれ山がちで、行き来できる道路が限られている地区が多数ある。伊豆半島は大地震によって6つの市町の44の地区で孤立のおそれがある。
2024年2月から静岡県は自治体・自衛隊・消防などと合同で、孤立するおそれがある地域の調査を始めた。

東伊豆町を走る国道135号線
東伊豆町を走る国道135号線

この日は伊豆半島東海岸に位置する東伊豆町で現地調査が行われた。隣接する市町と結ぶ主要道路・国道135号線は片側が山、反対側が海に面している。東伊豆町では2つの地区が道路の寸断によって孤立するおそれがある。

自衛隊が活動拠点とする候補地やヘリポート、それに避難所などの状況を調べた。自衛隊は炊事場を設けることができるかなどを町職員に質問していた。自炊ができれば、炊き出しなどの支援活動もできる。

災害時のヘリポート予定地
災害時のヘリポート予定地

道路が寸断されると海や空からの支援が必要になるが、ヘリポートに課題が見つかった。
静岡県賀茂地域局の担当者は「孤立集落では平場の確保が難しいが、きょう見た2カ所のヘリポートも十分な広さがない。空からの応援が難しい部分があるが、できることは改善できれば」と感想を漏らす。

46年前の地震で孤立

土砂崩れにより孤立するおそれがある東伊豆町の大川地区。365世帯659人が生活している(2024年2月時点)。

伊豆大島近海地震で寸断された国道135号線(1978年)
伊豆大島近海地震で寸断された国道135号線(1978年)

1978年1月に起きた伊豆大島近海地震で国道135号線が寸断され、大川地区も孤立状態となった。

地区の住民は、「大きな地震が起きれば、能登半島と同じような状況になると思う。地形的にもそっくりですよ、山があって海があって」と不安を口にする。
また大川地区には医師がいない。孤立すればけが人なども治療を受けることが難しくなるため、住民は「孤立しないような道路を山間部につけてほしい」と訴える。

孤立の危険があっても…

この地区で70年以上続く菓子店「清月堂」。店主の稲葉敏章さん(72)は、伊豆大島近海地震も経験していて、「(能登半島地震と)同じような地震がおきたら、もっと(被害が)ひどくなるのでは」と心配する。

自宅や店舗に防災食などを備える稲葉さん。孤立の危険があっても、生まれ育ったこの地を離れることは考えていない。
稲葉さんは「(店は)私の代で終わってもいいから、私は生まれたところにいたい。よそへ行っても何もできないと思う。ここにいれば知っている人もいるし商売も成り立つ」と話す。

県や自衛隊の現地調査
県や自衛隊の現地調査

孤立のおそれがある伊豆半島南部。この地区に住み続ける人たちのためにも、ヘリポートの整備など、孤立してもしっかり対応できる備えが求められている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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