第3節で長崎相手に今シーズン初黒星を喫するも、第4節を前に立て直しを図り、大分に2対0と快勝したサッカーJ2・清水エスパルス。秋葉忠宏 監督は戦いを振り返り、「自分たちが意図した強い勝ち方」と胸を張った。

大分に“王者”のフットボールで勝利

第3節で今シーズン初黒星を喫した清水エスパルスは、平常心で攻撃的な“らしい”サッカーを取り戻すべく、第4節はルーカス ブラガが初めて先発に名を連ねたほか、センターバックには前節出番のなかった住吉を戻し、さらにサイドバックには吉田を起用。また、リザーブにはユース出身の千葉を入れるなど“変化”を求めた。

するとチームはキックオフ直後から躍動。ディフェンスが高いラインでの守備位置を保つと、前線の選手がフリーになろうと前に駈け出したり、反対にボールを奪われればすぐにチャレンジを仕掛けて大分からボールを奪取しようとしたりと激しい動きを見せる。

ディフェンス陣も大分がロングボールを入れようとしてもことごとく跳ね返すなど選手が連動し、試合の主導権はエスパルスが握り続けた。

終わってみれば得点こそ2点だったが、大分が放ったシュートはわずかに2。後半26分にセットプレーからゴールを脅かされるも、守護神・権田の好セーブで守り切ったシーン以外は、チャンスらしいチャンスも与えなかった。

秋葉忠宏 監督によれば、目指すは強い時のマンチェスター・シティやバルセロナのような“王者”の戦い。つまりは、攻守において相手陣地でプレーし、人とボールを走らせて、常に主導権を握るフットボールだ。

長崎戦の大敗から短期間でチームを修正させた秋葉“マジック”の効力はまだ続くのか。次節の相手も実力者の千葉なだけに、その采配が注目される。

秋葉監督「意図した強い勝ち方」

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-現在のチームの状況
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
大分には自分たちが意図した強い勝ち方が出来たので、選手はポジティブで明るい。ただ、長崎には大敗。負けて気がつくのでは遅いので、こうしたことを勝ち続けながらどう修正するのか。これをスタンダードにして、ブラッシュアップさせるにはどうしたらいいか。次には千葉や秋田が待っている。前向きで緊張感ある準備ができている。

-先週出来たチームの修正ポイント
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
まずは、ボールに出て行こうと。アプローチの迫力、相手への寄せや制限。長崎にはロングボールをフリーで蹴られたので、もう一度ファーストディフェンダーから厳しく寄せて、もちろんそれで取れるほど甘くはないが、強度と精度を上げてパワフルに、より速く連続的に仕掛けるという風に見直した。みんな意識がパッと変わって、それを体現出来ていて大したものだと思った。

展開が良くなった理由は、ボランチもそうだがディフェンスがハイラインを保てていること。それによってフォワードも中盤も前に詰めていける。あとはロングボールを入れられた後のセカンドボールの回収方法、センターバックもしっかりとできていたので良かったと思う。

今回やれたスタイルは自分たちが目指していたもの。王者のスタイルというか、攻守において相手の陣地でプレーする、人とボールを走らせて、我々が常に主導権を握る。そういうフットボールを目指しているし、さらに精度を上げてトライしていきたい。

-ブラガ選手・千葉選手・白崎選手の評価
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
ブラガ選手に関しては自分のストロングポイントを良く出してくれたなという感じ。スピードと仕掛けとドリブルの上手さ。守備でもスピードを活かして献身的だったし切り替えも早い。ボールへの連続性も含めて非常に良かったと思う。身長185cmで、あのスピードで迫られると相手は相当に嫌なんだろうなと思えた。カルリーニョスとブラガは高さもあり、相手のプレスからの逃げ所にもなるし、ロングパスの選択肢にもなる頼もしいオプションだ。

千葉寛太は経験値もまだ低く肩で息をしていた。チャンスに絡んだことに及第点はあげられるが、あのポジションはいかに決められるかがポイント。まだまだやらなければいけないことは多いなと思う。

白崎はユーティリティープレーヤーでインテリジェンスもある。右前のポジションでクオリティーやインテンシティが発揮されるとありがたい。攻守ともに貢献してくれたので、引き続き良いプレーを見せて欲しい。

-千葉の印象
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
攻撃と守備で巧みにシステムを変えてくる。長いボールも交えながら左右のウイングが個の力で突破してくる。自陣サイドに深く入られて、中央に敵が詰めてくる印象が強い。そういったことをさせないように、今回と同じように出所となる選手にプレスを掛けられるか。また、相手は失点の数が多いので、そうしたウィークポイントを選手に共有させ狙って突いていきたい。

住吉選手「チームの総合力を問われる」

住吉ジェラニレショーン選手: 
連敗はできないという流れでホームに大分を迎えたが、前線の選手があれだけ“限定”をかけてくれたおかげで、自分たちもわかりやすく守れた。それは1週間準備してきたチーム全体の守備が上手くはまったんだと思う。

自分のサイドにもキーパーがシンプルに蹴ってくることが多かった。そこで相手に競らせて後ろ向きになると押し込まれてしまうし、はね返すことはセンターバックとして負けられないことだと思っていた。セカンドボールのリスク管理もチームとして意識づけして声掛けしたりした。ウチの守備は前から行く分、後ろの広いスペースをバックでカバーしなければならない。身体能力の高い相手との競り合いに負けないことやボールを奪うことで自分の役割を果たせたと思う。3バックシステムもバランスよくできた。

1週間で3連戦の真ん中。アウェイで千葉との対戦で自分たちも難しい状況に立たされているが、長崎も3連戦で我々に勝った。重要な試合ではチームの総合力を問われるので、スカウティングなどまだ情報を聞いていないが、自分たちが前から行って、リスク管理が出来て、ボールが保持出来れば、自分たちのサッカーができる。自分たちが守り、無失点であれば、勝ち点1を持ち帰られるということ。

また、セットプレーで得点が獲れると武器になるので、次こそ貢献したい。

山原副主将「1週間取り組んだ成果」

清水エスパルス・山原怜音 副主将:
長崎戦で正直不甲斐ない試合をした。シーズンを通じて、あのようなゲームがこれからもあるかもしれない。その中で大事なのは、そうした敗戦から学ぶことだと思う。同じミスをしないメンタリティを持つというところで、全員が意識して1週間取り組んだ成果が大分戦となったのだと思う。

ホームで笛が鳴った瞬間からエンジンをガンガンかけるような気持ちで、前半から“相手コートに押し込む”意識で行った。後半、相手が前掛かりになって“はめよう”とする動きをかわすのが自分の良いところで、かわせると思いドリブルし前に出て得点につながった。抜き切った時に前に入れるなと思ってゴール前に出て、様々な選択肢があったが自分の前にスペースができて、シュートできると判断した。

千葉については2023年、2戦とも出ていない。能力が高い選手がいるという印象。気は到底抜けない相手。自分たちのやりたいことをしないと勝ち切れない相手。得点は獲りたいが、勝利につながるプレーができたらいい。結果がゴールにつながったらなおさら嬉しい。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

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外岡哲
外岡哲

テレビ静岡 報道部スポーツ業務推進役(清水エスパルス担当)。
1984年テレビ静岡入社。
1987年~1994年(主に社会部や掛川支局駐在)
2000年~2002年(主に県政担当やニュースデスク)
2021年~現在(スポーツ担当)
ドキュメンタリー番組「幻の甲子園」「産廃が街にやってくる」「空白域・東海地震に備えて」などを制作。
清水東高校時代はサッカー部に所属し、高校3年時には全国高校サッカー選手権静岡県大会でベスト11。
J2・熊本の大木武 監督は高校時代の同級生。