1年前、コロナ禍や燃料高を受け、半世紀以上愛されてきた銭湯が廃業した。

地域の人たちの安らぎと交流の場所を復活させたい。

移住した若者の取り組みが大きな輪になっている。

“地域の居場所”だった菊の湯

1年前に廃業した北海道旭川市の銭湯・菊の湯。

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無人かと思いきや、ブラシの音が響く。

一心不乱に掃除するのは山村修吾さん、31歳だ。

「今ここ、ガーっとやって結構落ちるんですよね、水だけでも十分」(山村修吾さん)

2023年の秋、故郷の京都から、旭川にやってきた。

来た理由は、約60年地域に愛されてきた菊の湯を復活させるためだ。

菊の湯は地域の居場所だった。

提供:熊谷清志さん
提供:熊谷清志さん

子どもたちにお風呂の魅力を伝える「浴育」や高齢者の健康づくり体操などにも取り組んできた。

提供:熊谷清志さん
提供:熊谷清志さん

しかし、コロナ禍や燃料費高騰が理由で、2023年3月に廃業した。

菊の湯2代目の熊谷さんにとって苦渋の決断だった。

「多い時は(1日)で150人来ていたのが半分くらいに落ち込んだ。このまま営業してていいんだろうかと悩んでいた時期があった」(菊の湯2代目 熊谷清志さん)

地域の人は大切な場所がなくなったと感じている。

「無くなるって聞いた時はすごくショックだった。家に1人でぽつんといるからたまにそういうところに行けばみなさんいらっしゃるから、お話したり顔見たりするのが楽しみで」(約5年通った常連客)

菊の湯 復活を目指す

意志を継ぐ山村さんも大のお風呂好き。

京都の銭湯で番台の経験もある。

銭湯の魅力を旭川でも広めたいと意気込む。

「(銭湯でないと)味わえない何かがあると自分は思います。(何かは)入ってみないと分からないと思います」(山村さん)

今はお湯が張られていない浴槽を見ながら、山村さんの夢がふくらむ。

「お茶の香りのお風呂をやってみたいですね。いい匂いって、よく京都ではあったので。最高になるんじゃないですかね。旭川の人を温めに来たので」 (山村さん)

経営は京都を中心に銭湯文化を発信するFRO CLUB代表の塩路道徳さんが引き継ぐことになった。

「もっと若者が引き継げる環境というのを作っていけると思うので、そこを目指してまずは頑張っていきたいと思います」(菊の湯の経営を引き継ぐ 塩路道徳さん)

復活の日を夢見て、ひとあし早く番台に座ってみることに。

「僕が熊谷さん役ですよ。どうですか」(山村さん)

「とりあえず旭川に根を下ろしてよ。ずーっとな、死ぬまで旭川にいるくらいになったら最高」(熊谷さん)

「まず体慣れさせんとですね、寒すぎて」(山村さん)

「寒いのは当たり前だろう」(熊谷さん)

新しい菊の湯を作る

フィンランド式サウナなど新しい設備を導入するほか、ロビーには新たに飲食店も入る予定だ。

費用を集めるため、クラウドファンディングも行うことに。

市民にも協力を呼びかける。

若い力で旭川の人々を温める

「若い人たちが頑張っているということで、僕も同世代なので応援していきたい気持ちで通っていきたいと思っています(旭川市民)

「お風呂が生きがいだったから。(菊の湯復活で)また長生きできるかなっていう気がする。どんなふうになるのかなっていうのが楽しみ」(約10年通った常連客)

菊の湯のリニューアルオープンは4月末ごろの予定だ。

「誰でもきやすいお風呂にしたいですね。旭川を盛り上げるのに、もっと頑張らんといかんなと思ってるんであとは気合いですね」(山村さん)

若者たちの銭湯を愛する気持ちが再び旭川の人々を温める日は、もう間もなくだ。

北海道文化放送
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