2024度から76年ぶりに見直される、4歳児と5歳児の「保育士の配置基準」。
人手不足や保育士の処遇など、課題が多い中、働き方改革を進める園もある。
大きく変わろうとしている保育の現場を取材した。
国が求める基準の2倍の保育士がいる保育園
保育士の配置基準は、保育士1人が受け持つ子どもの数のことで、1948年に国が定めた。

今は0歳児が一人当たり3人、1、2歳児が6人、3歳児が20人、4、5歳児が30人となっている。
この国の基準の2倍以上の保育士を配置している園がある。東京都杉並区にある認可保育園「Picoナーサリ和田堀公園」だ。


ここで働く保育士の鍋田至恩さんは、もう1人の保育士と2人で、5歳児23人を受け持っている。

1時間の昼休みには、園児と離れた休憩室で保育士たちと食事をとる。持ち帰りや残業もほとんどない。

鍋田さんは「自分の時間をすごく作りやすい、やりやすいなというふうに思っている」と話した。
“働き方改革”で中途採用の倍率が14倍にアップ!
そんな「Picoナーサリ」も、10年前までは国の基準通りに保育士を配置していた。

10年前の基準通りに、残業は1日あたり1時間~2時間、休憩は15分、有給休暇もなかなか取得ができない中、離職者が相次いだという。
保育士を増やすだけではなく、長く働いてもらうための仕組みを導入したいと考えた「Picoナーサリ」の統括・野上美希さんは、残業ゼロや1時間の昼休み、完全週休2日制を目標に、全ての業務を見直した。

例えば、保護者がアプリを使って登園や降園の時間を記録する。そのほか、欠席の連絡や連絡帳のやりとりなど、これまで保育士が電話の対応や手書きで行っていた作業もアプリを使って行う。アプリを導入したことで、保育士の作業は大幅に減り、働き方改革につながった。
こうした取り組みが保育士たちの間に広まり、2023年度の中途採用の倍率は14倍にも上り、希望者が相次いでいるという。
保育園の今と未来
岸田政権が掲げる「異次元の少子化対策」で、こども家庭庁は、4、5歳児の保育士の配置基準を2024年度から見直す方針を決めた。「子ども30人に1人」から「25人に1人」に。実に76年ぶりの見直しだ。

しかし、今回の見直しには課題もある。
新基準が導入される中、経過措置の期限は未定のため、格差が広がるかもしれない。新基準に従って保育士を増やす場合、地域によっては、財政的な手当が不十分な可能性が指摘されている。

保育制度に詳しいお茶の水女子大学の講師・松島のり子さんは、「配置基準の見直しは、予算がついてくれば大きな変化だと思うが、25人に1人でいいということでは、終わりにしてはいけないと思う。より良くできる可能性もあると思うので、その先に繋がるように見ていく必要がある」と話す。

Picoナーサリの統括・野上美希さんは、「保育士の人数自体がまだまだ足りないということは、我々としても感じているが、76年変わらなかった配置基準が変更されるということは業界としても、確かな一歩なのかなと感じる」と話す。
大きな節目を迎えている保育の現場への確実な支援が求められている。
【取材・執筆:フジテレビニュース制作部 原崎はるか】