13日、米連邦議会下院はTikTokの国内利用禁止法案を可決した。法案は中国企業「バイトダンス」に米国内での事業を中国以外の企業への売却を求めるもので、拒否した場合は使用を禁止される。しかし、国内では多くのユーザーから批判の声も上がっている。

バイデン大統領は法案採決1時間前にも投稿

米連邦議会下院は13日、中国系動画投稿アプリ「TikTok」の米国内での利用を禁止する法案を可決した。

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法案はTikTokを運営する中国企業の「バイトダンス」に、アメリカ国内での事業を中国以外の企業に売却を求めるもので、拒否すればアプリの使用が禁止される。

TikTokをめぐっては、議会からデータの中国政府への流出が深刻な安全保障上の脅威となるとの声が強まっていた。

ホワイトハウスのジャンピエール報道官は法案の可決を歓迎したうえで、「上院が迅速な行動を取ることを期待する」として、上院にも早期の可決を促した。しかし、上院では反対の声も根強く、成立の見通しは不透明だ。

一方、バイデン大統領はTikTokを選挙キャンペーンで利用しているほか、法案が採決された1時間前にも動画を投稿していて、批判の声があがっている。

「不公平」「非常識」といった声や抗議活動も

日本でも米国でも広く使われているTikTok。
今回下院で可決された法案は、事業を売却しなければアプリ使用を禁止するというもので、事実上のTikTok禁止法案になる。

TikTokは中国のバイトダンスという企業が運営しているが、これが中国共産党の管理下にあり、データ悪用のおそれがあるというのが、アメリカが使用禁止にしたい理由だ。

しかし、多くのユーザーたちから反発の声が出ていて、米・ニューヨークでインタビューをすると、「不公平だと思っている。みんな害を与えていると思い込んでいるだけで、それが真実でも適切でもないと思う」「非常識だと思う。公聴会を見る限り、こういった人が公聴会に出るべきではない」といった声が聞かれた。

反対派の議員やクリエイターが集まり抗議活動が行われたが、本当に禁止、ということになりそうなのだろうか。

この後、上院での審議もあり最終的にはまだ決まったわけではないが、下院では禁止への賛成が大きく反対を上回っており、TikTok禁止法案は大きな勢いが出ているという状況だ。

米国内では10代67%、20代56%が使用

米国内でTikTokはどれくらい根付いているのだろうか。

18歳以上を対象とした調査によると、10代は67%、20代も56%が使っていると回答。主に若い世代の間で急速にシェアを伸ばしている。

このため、高齢批判も出ているバイデン大統領も若者層にアピールするため2月から選挙チームのTikTokアカウントを作った。投稿はほぼ毎日更新されていて、内容はトランプ氏への批判が多くなっている。「私は独裁者になる」という文字が表示されたトランプ氏の動画などもある。

一方でバイデン氏自身については体力への懸念などもあるなかで、しっかりとした足取りや、サングラスなどをかっこよくつけている動画を公開し、イメージアップを狙う戦略だ。

今回の法案が採決される直前にも、バイデン大統領はTikTokに投稿していて矛盾もあるのだが、「法案が議会を通過すれば、大統領自身が署名して法案を成立させるつもりだ」と答えている。

法案が成立すれば、バイデン大統領もアカウントは消去するのだろうか。

法案が成立した場合、即刻使用禁止にはならず6カ月の猶予期間が与えられてバイデン大統領も11月の大統領選までは使うだろう。

チュウCEO「多くの誤った情報が…」

TikTokの運営会社「バイトダンス」がその間に別会社にTikTokを売却することは可能だが、大規模買収であり日程的に厳しいといわれている。

バイトンダンスの41歳のチュウCEOは早速TikTokに動画をあげて下院の決定について残念に思うしたうえで「多くの誤った情報があり、これを正していきたい」と述べている。

こういった発言をみてもチュウCEOはこれから法案成立を阻止するため、議会への働きかけを強めていくとみられる。まだ紆余曲折が予想されるが、米国内で使用禁止となれば米中対立が、さらに厳しいものになるだろう。
(「イット!」 3月14日放送より)

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