1976年に発売した「日清のどん兵衛」を一度は食べたことがあるのではないだろうか。
実はこのつゆなのだが、当初から東日本と西日本で“だし”に違いがあり、全国展開のカップ麺で初めて地域別に味を分けた商品なのだという。そして期間限定で、2011年からは「東」と「西」、2023年には「北」を全国で販売している。
そして3月11日から、新たなラインアップとして九州地方特有の“だし”の味わいを表現した「南」が登場。東西南北の"だし"の違いが楽しめる「日清のどん兵衛 きつねうどん だし比べ」4品が日清食品から登場したのだ。
それぞれの味の違いは次のようになっている。
「東」は、“本鰹×宗田鰹”のWだしでコクと旨みを感じられる色の濃いつゆと、赤唐辛子をきかせた「彩り七味」が特長。
「西」は、“昆布×本鰹”のWだしで豊かな香りと後引く旨みを感じられる淡い色のつゆと、和山椒をきかせた「彩り七味」が特長。
「南」は、“焼あご×サバ節”のWだしで、九州特有のすっきりとしながらもクセのある味わい。
「北」は、“利尻昆布×鰹節”のWだしで香りと旨みを感じられる優しい味わい。
なお麺は「もっちりとしたつるみのあるうどん」で共通。価格はいずれも236円(税別)で、「南」は「だし比べ」企画限定で販売する商品だという。
だしの違いといえば、一般的に「関東は色が濃く、関西は薄い」などと言われるが、“南”はどういうものなのか?4種類の味のおすすめの楽しみ方は? 日清食品ホールディングスの担当者に聞いてみた。
「東・北」と「西・南」は“おあげ”の味が違う
――「南」バージョンの“だし”はどういうものなの?
九州地⽅全域で使われている“だし”があるわけではありませんが、あごやサバ、いわしなど、すっきりとしながらもクセのある雑節系の“だし”が共通した特⻑で、さまざまな料理にも使われています。
また、九州には独⾃のうどん⽂化があり、「九州うどん」のつゆには、⼀般的にあごやサバの“だし”が使⽤されています。
――「南」の開発でこだわった点や苦労した点は?
“だし”の特長を調べるために、九州地方の⼈気うどん店を一日に何店舗も食べ歩きました。「九州うどん」の特⻑である、あごやサバの“だし”の⾵味が強すぎると、お客さまによっては「クセが強い」と感じられる可能性もあったため、全国の幅広い層のお客さまに「おいしい」と感じていただける味わいのバランスを追求しました。
――では東⻄南北で、麺と具は同じ?
麺は共通ですが、「おあげ」の味付けが異なります。「東」と「北」は、醤油の旨みと⽢みをきかせた味付けで、「⻄」と「南」は、“昆布だし”の⾵味と醤油やみりんの⽢みをきかせた味付けです。
――なぜ「北」を先に発売して「南」が最後になった?
東⽇本向けと⻄⽇本向けに加え、北海道地区限定商品として、地産地消ならぬ“道産道消”をコンセプトに、北海道千歳市にある「札幌⽇清⾷品」で製造した「北のどん兵衛」を2009年に発売しました。そのため、「南」の発売が最後になりました。
自分好みの“だし”を⾒つけていただきたい
――なぜ、どん兵衛は発売当初から東⽇本と⻄⽇本で“つゆ”を変えていた?
「うどん」や「そば」には歴史的に東⻄で味の嗜好に違いがありました。1964年に東海道新幹線が開通したこともあり、東⻄の味の差はやがてなくなるのではないか、という意⾒もありましたが、当時の開発担当者は、歴史的な嗜好の特徴を重視しました。
そして、東⻄で味の異なる2種類のつゆを開発し、全国展開のカップ麺として初めて地域別に味を分けて発売しました。
――最後に、東⻄南北の4品をどのように楽しんでほしい?
東西南北を食べ比べて“だし”の味の違いを楽しみ、自分好みの“だし”を⾒つけていただきたいです。また、つゆを飲み⽐べて、東⻄南北のどの“だし”かを当てる“利きどん兵衛”も⾯⽩いと思います。
たしかに食べ比べてみるのは楽しそうだ。これで東西南北が揃ったわけだが、次は一体どんな味が登場するのか。今後も期待したい。