自転車による「信号無視」や「携帯電話使用のながら運転」など、100余りの違反を青切符によって取り締まることを盛り込んだ道路交通法の改正案が6日、閣議決定された。
反則金は16歳以上を対象に、原付バイクでの違反と同程度になる見通しだが、その内容と施行の時期などについて、交通事故鑑定人の中島博史さんに聞いた。
ドライブレコーダーで事故が可視化
ーー青切符導入が閣議決定されたが?
今まで自転車は“交通弱者”として、違反をしたり、車との事故でも「被害者」として守られてきた経緯があります。
しかし、最近ではドライブレコーダー等で、事故の状況が客観的に分かるようになり、それを見ると自転車側が事故の原因になっているケースも多くあります。

交通のスムーズな進行は経済に直結するし、国民の生命財産に大きく関わることです。
自転車が原因で起きる事故を減らしていかないと交通安全が実現できないということで、違反が多く見受けられる自転車の規制に乗り出したのだと思います。

ーー自転車の違反は増えている?
件数そのものはそれ程変わらないのかもしれません。
ただ、以前は事故にならなければ記録に残らなかったし、事故が起きた際もドライブレコーダー等がなかった時は、防犯カメラに映るなどの事情がない限り、事故の状況はわかりませんでした。
そのため「弱者保護」ということで、自転車側の責任はあまり問われて来ませんでした。

しかし最近はドライブレコーダーの普及によって事故の状況がわかるようになり、「自転車側の責任も問わなくてはいけない」という考え方が出てきました。
また、危険な走行をする自転車がいることで車を運転する側も困難を覚えるというような声もあります。そうした経緯から安全な交通を実現するために、これから具体的な規制が決まるのだと思います。
複数の違反で「反則金」増加に
違反した場合の反則金は「一時不停止」の5000円から、「携帯電話使用のながら運転」の1万2000円の幅で検討されている。
さらに複数の違反をしていればそれだけ「反則金」は高くなる仕組みだ。

ーーどういった違反が対象になる?
自転車は道路交通法上は車両なので、安全な交通を乱したり、危険を誘発するような行動は規制の対象になります。
青切符の反則金はこれから具体的に決まっていきますが、おそらく原付バイクに準じた反則金になるのではないかと思います。

ーー原付車の罰則に準じて考えた場合の主な反則金は?
自転車は左側通行が基本です。右側を走ることは「逆走」で、これは通行区分違反になり、原付だと6000円の反則金です。
「信号無視」も6000円で、重大さを鑑みると自転車でも同程度だと思います。
「傘の片手運転」「イヤホン使用」は、安全運転義務違反として、6000円の反則金になると思います。
「指定場所一時不停止等違反」は5000円の反則金です。

また、「携帯電話使用のながら運転」は、車などでも非常に重く罰せられるようになりました。
特に自転車だと片手運転に加え、耳も塞ぐことになるので、原付の罰則同様、1万2000円の反則金になると思います。
「歩道走行」に関しては、自転車には歩道を走れる条件があるので、その条件を満たさず歩行者に危険を感じさせるような運転をした場合は、「歩行者用道路の徐行義務違反」が適用される可能性があります。
今後、自転車が歩行車用の道路を走る際の新たな規定ができるかもしれません。

ーー違反行為が複数あった場合は?
例えば、携帯電話使用のながら運転(1万2000円)で、信号無視(6000円)をした場合は、合計で1万8000円の反則金になると思います。
イヤホン使用(6000円)での信号無視(6000円)は、合計で1万2000円の反則金です。
これは事故を起こしていない前提での反則金ですが、違反した分だけ加重されていくので、悪質な場合は3万円近くの反則金を支払うケースもあり得ると思います。
警察官のマンパワー不足を懸念
今国会で道路交通法の改正案が成立すれば、2年後の2026年には「青切符」が導入されるという。

ーー懸念する点は?
自転車は数が多いので、取り締まる警察官の人手が足りないといった状況が起きると思います。
違反者が多い大きな交差点等では、啓発の意味も込めて、最初のうちは人員を投入して比較的厳しい取り締まりをする可能性があります。
まずは周知に力を入れ、その後は車の取り締まりのように、期間を決めて「この地域でやります」といったような実施になるのではないかと想像します。