UNRWAのラザリーニ事務局長が国連総会で、資金供与の一時停止による組織存続の危機を訴え、支援再開を呼びかけた。
職員がハマスの攻撃に関与した疑惑で、16カ国からの支援が停止し、ガザ地区への支援物資が大幅に減少している。

「限界点を迎えている」

UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のラザリーニ事務局長が、国連総会で活動継続のための支援を呼びかけた。

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UNRWAのラザリーニ事務局長は4日、国連総会で演説を行い、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に職員が関与した疑惑を受け、各国が資金の供与を一時停止したことで、「UNRWAが限界点を迎えている」と組織存続の危機を訴えた。

資金供与の一時停止は、日本やアメリカなど16カ国、あわせて670億円以上にのぼっており、ラザリーニ事務局長は「UNRWAとそれに依存する数百万人の運命がかかっている」として、各国に支援を呼びかけた。

UNRWA職員の疑惑をめぐっては、国連が内部調査を進めている。

ここからは、フジテレビ・立石修取材センター室長がお伝えする。

ガザ地区の支援を担っているUNRWAの資金不足で影響を受けるのは、ガザ地区に住む方々だ。この衝突が始まって、7日で5カ月になるが、日増しに状況は悪化している。

国連の機関であるUNRWAは、1950年に活動を開始。ガザ地区で最大規模の人道支援活動を行ってきた団体だ。

しかし、複数の職員がハマスのテロに関与していた疑いが浮上し、アメリカや日本など各国がUNRWAへの資金援助を停止。UNRWA事務局長は、2月のガザ地区への支援物資の流入は1月に比べ50%減少したと述べている。

影響は大きく、ガザ地区では4人に1人が飢餓の1歩手前の状態まで陥っている。

支援物資が足りない状況

ガザ地区にとって命綱ともいえるUNRWAからの援助が減少する状況になり、ここに来て、イスラエルの侵攻を支持するアメリカも先週、初めてガザ地区へ直接支援物資の投下を始めた。

5日、アメリカ軍が公開した支援物資を投下する際の映像だ。

ヨルダン軍と共同での作戦で行われたものだが、輸送機から次々と物資が投下され、パラシュートが開きガザ地区に投下されていく。

約3万5000食分の食事などが用意されていて、アメリカはこれまで2回、こうした空からの支援物資投下を行っている。

数百人規模の人が集まる
数百人規模の人が集まる

地上から撮影した映像では、パラシュートにつけられた支援物資が空中に見えてくると、物資に気づいた市民たちが声を上げながら取りに向かう様子が見られる。

あっという間に数百人規模の人が集まり、子どもの姿も見られるが、大人たちに阻まれ、支援物資までは、到底たどり着けない状況となっている。

現場は激しい戦闘があったガザ地区北部だが、市民の様子から支援物資が本当に足りない状況になっていることがわかる。

アメリカの空中支援などは大統領選などもにらみ、人道的活動を行っているアピールの面もある。しかし、各国が独自の判断でこのような救援活動を行わざるを得ない状況だ。

アラブ各国に加え、ベルギーなど欧州でも支援物資の空中投下に踏み切り始めている。

住民が群がり100人以上死亡

以前のような陸路からの支援物資搬入は、どうなっているのだろうか。

陸路からの支援物資をめぐっては、100人以上が死亡するという悲惨な事態が2月29日に起きている。

その際、イスラエル軍が公開した上空からの映像だ。

ガザ市内に入った支援物資を搭載したトラックに、大勢のガザ地区住民が群がっている様子が見られる。

ハマス側はこの時、イスラエル軍が住民に無差別に発砲。少なくとも118人が死亡、700人以上が負傷したと伝えている。

これに対して、イスラエル軍は、群衆の一部が物資を略奪しようと軍に接近したため威嚇射撃を行ったと説明。逃げる人々が倒れたり、トラックにひかれたりして死亡したものだと反論している。

双方の言い分が食い違う状況だが、支援物資が枯渇する中、トラックを使った搬入だと移動工程が長く、難しい状況になっている。

そのため、航空機で分散して投下するしかない状況だが、空からだと海に落ちたり、荷物がバラバラになってしまい、量が少ないなどのリスクもある。

いずれにせよ4人に1人が飢餓状態という凄惨(せいさん)な事態。UNRWAの支援再開には、めどが立っていないのだろうか。

アメリカなど各国は国連による内部調査が終了すれば、UNRWAへの資金拠出を再開するとしているが、イスラエルはUNRWAへの反発を強めていて、再開の見通しが立っていない。

イスラエル軍は、これまで12人の職員がテロに関与してきたと発表し、顔写真も公開した。

だが4日に、新たに「450人以上の職員がハマスに関連した工作員である」と発表し、対立姿勢を強めている。

こうした状況で、ガザ地区の子どもや高齢者といった弱い人から犠牲になっていく。
UNRWAでの支援が難しい状況なら、ほかの支援方法を私たち日本人も考える必要がある。
(「イット!」 3月6日放送より)

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