熊本との開幕戦を逆転勝利で飾った清水エスパルス。決勝点こそオウンゴールという形だったものの、走力の強化や新旧選手の融和など鹿児島キャンプで取り組んできたことが随所に発揮された。ホーム開幕の勝利に向けても視界は良好だ。

鹿児島キャンプの成果が見えた開幕戦

開幕戦ではショートパスを多用し、ポゼッションを保つ熊本に対し、隙を作らない守備からすばやいカウンターを仕掛けたエスパルスは、序盤に何度もチャンスを作るなど試合を優位に進めた。

ところが前半39分。熊本のフリーキックが不運な形でゴールに吸い込まれ、リードを許す苦しい展開に。

さらに、後半開始早々の4分にも熊本の波状攻撃を受けたが、守備陣が粘り強くシュートコースをふさぎブロック。この試合一番のピンチをしのいだ。2023年は大事な局面でことごとく失点を重ね昇格のチャンスをつかみ損ねた反省から、高い集中力を持って対応するしぶとさは間違いなくチームに浸透したと思わせる場面だった。

また、後半はキャンプで積み重ねた相手の背後を取る走りを“質・量”ともに維持。

すると14分。中盤でルーズボールを拾うと、乾、北川を経て山原へ。山原は縦への突破をにおわせつつ、右に切ってすばやくシュートを放って同点とした。

攻撃の手を緩めないエスパルスは43分。左サイドから押し上がると、ブラガからのボールを受けた宮本が走り込んだ原にスルーパスを送る。原が低いクロスを入れると、ボールは熊本ディフェンスの足に当たってオウンゴール。泥臭くも攻撃への執念が感じられる勝ち越し点になった。

走力の強化や強靭なメンタル、そして新旧選手のチームとしての融和…鹿児島キャンプで取り組んできた課題が早くも効果を見せるような開幕ゲームになった。

秋葉忠宏 監督はホーム開幕戦を前に「みんな、めちゃくちゃ調子がいいので誰を選ぶべきか…」とうれしい悩みを口にする。2023年の悔しさを晴らすべく開幕ダッシュへ。オレンジサポーターで埋め尽くされるであろうアイスタ日本平で、選手たちはどのような躍動を見せてくれるだろうか。

秋葉監督「明らかに我慢強くなった」

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-チームの様子は? 
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
ホーム開幕を意識してか全員の調子が良い。あのスタジアムにサポーター・ファミリーがくることをみんなわかっているので自然とモチベーションが上がったのではないか。試合に出たいという気持ちが伝わってくる。なので、悩みが…頭の痛いことが増えている。みんなめちゃくちゃ調子がいい。誰を選ぶべきか…みなさん、誰を使ったらいい?(笑)

トレーニングのビデオを見て、愛媛との相性を踏まえ改めてスタッフと話し合うが、パフォーマンスの高い選手を選ぶ。ありがたい悩みでもある。選手にとっては試合に立つ大切な権利なので、責任と集中力を持って選んであげたい。

ただその一方で、非情だと言われようと鬼だと言われようが、チームが勝つためにはどうすれば良いのか。可能性が1%でも上がる選択肢を選べるように勝ち点3を獲るための最大限の決断をしたいと思っている。

-選手には「変化をしろ」と声掛けしてきたが?
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
選手達は明らかに我慢強くなった。今日の練習ゲームでも、失点しそうな時にも押し込まれた時にも我慢強く耐えられるようになった。きつく、つらいことをキャンプなどでやってきたからこそ忍耐強くなったと思う。また「上手くいかない理由を探すより上手くいく理由を探す」と言われるが、全員それができている。選手はピッチ上でコミュニケーションを取り続けてくれている。これは大きな変化だと思う。

-今週のテーマは?
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
相変わらず相手より走る、90分間走り続けるということ。終了間際になればなるほどエスパルスの方が走れる、出力が上がるということ。それは1試合だけではなくて、年間を通してやらなければならない。チームがどういう状況でも、どんな相手だろうと自分たちの方が出力が上がるということに挑んでいる。

また、先制点にはこだわっている。J2内では勝率につながりやすい。改めて先制点をどう獲るのか、獲らせないことを含め共有した。一番大事なのはホームのアイスタで出来るので、我々らしく“超攻撃的”“超アグレッシブ”に躍動する姿を見せて愛媛をねじりつぶすということ。

-攻撃的戦術の落とし込みと熊本戦の失点については?
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
チームとしての取り組みは効果としてすでに出ている。最後の最後は個人の判断、テクニックによるところが大きい。個の精度、アイディアをクオリティアップさせることがポイント。我々は訓練の回数を増やしたり、バリエーションを増やしたりということに尽きる。

自分は失点に偶然はない、必然であると考えている。改善案を出し、明日のセットプレーの練習で修正したい。意図して崩す、意図して守る、が大事。

-第2節で対戦する愛媛FCについての印象は?
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
J3から昇格し、上がってきて躍進するケースが多い。そうさせないように、愛媛とやるというよりはホームで我々らしいフットボールをして、我々の力を出すことに注力したい。

カルリーニョス副主将「昇格のために」

清水エスパルス・カルリーニョス ジュニオ副主将:
熊本戦の勝利はすごくポジティブで、勝利に向けて全力を尽くした結果。ホッとしている。自分が目標とするパフォーマンスではなかったが、緊張感のある開幕戦であれくらいできたのは良かった。

長い間のトレーニングで、新しい選手の特徴やお互いの力がわかった。試合を重ねながら連携を高められると思う。

ホームで開幕できてうれしいし、熱いサポーターの前でプレーできてうれしい。勝利できるよう頑張りたい。今はチーム全体で質の高いサッカーができているが、もっと質を高めていきたい。

2024年が在籍5シーズン目。いろんな方からやさしくしてもらっている。恩返しするために1年目と変わらない気持ちを持って全力で戦いたい。具体的な目標の数字は自分自身の中で決めているが口には出さない。クラブの目標であるJ1昇格のために何が何でも頑張っていく。

蓮川選手「レベルアップを実感」

清水エスパルス・蓮川壮大 選手:
開幕戦に勝てたのはチームとしても大きいし、個人としても開幕は1年でも最も重要な試合のひとつと思っていて、内容よりも勝ち点3を持ち帰るというのが目標だった。無失点にこだわっているので失点したのは反省しているし、チームとしてセットプレーの失点はゼロにしたいので修正しないといけない。

守備のスライド・ビルドアップはミスなくできた。センターバックは攻撃の起点になるポジション。もっと縦パスを出すことや逆サイドを突くことでチャンスを作るシーンがあってもよかった。

コンビを組んだ住吉選手は足も速く体も強いので、相手と同数で守るやり方もできる。左側の攻撃陣は距離感が良く、こちらサイドで組み立てて右側に広げるパターンを上手く展開できたが、そうしたことを誰とやっても出来るようにしたい。リスクを持って縦に出るが、相手を剥がせばチャンスになる。状況を判断し最良の選択をしたい。

チームの雰囲気はいい。レベルアップを実感できている。清水のサポーターは小学生の時、遠征で来た際に見て知っていて、応援と言えばエスパルスという印象だった。今、そのピッチでプレー出来るのは幸せだと思っている。

宮本選手「連勝して開幕ダッシュを」

清水エスパルス・宮本航汰 選手:
開幕の熊本戦は逆転勝ちという形でいいスタートが切れた。自分は後半の終わりで足がつってしまったが、やり切った感じだった。次のホーム開幕戦についてもとても大事な試合だと思っているし、連勝して開幕ダッシュをしていきたい。

自分は運動量や献身性というところで、地味な感じだが誰にも負けないと思っている。2024年のスローガンは「ワンファミリー」で、サポーターのみなさんの応援が何より。頑張るので応援して欲しい。

山原副主将「常に前を意識して」

清水エスパルス・山原怜音 副主将:
熊本戦、まずは勝ててよかった。それが一番大きい。振り返ると先制点を取りたかったが失点した。そこから粘り強く戦って逆転できたのは、ここまでの取り組みの成果が出たということで今後につながる勝ち方。

2024年はボールを扱う選手が多い中で、プラス走力をつけるということで、2得点とも走力、動き出しが得点につながっている。

2点目もクロス、中の方も走り込んでいて、取り組んでいたことがうまく出た。1点目は、ボールが(乾)貴士くんに来た時に「左に来るかな」と思いがあった。すると(北川)航也くんからタイミングよくボールが出てきて、クロスを入れようとしたがオフサイドかもしれないと思い、切り替えして打った。フォアに打ったが上手く力が抜けて、いいコースとスピード感、軌道は思い通り。

点を獲るというのは相手にダメージを与えるが、相手に嫌な印象を与えたかも。サイドバックがこれだけ攻撃参加できるのはこのチームの特長だと思う。まもなくホーム開幕戦。サポーターは前に行く姿勢を求めていると思う。常に前を意識していきたい。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

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外岡哲
外岡哲

テレビ静岡 報道部スポーツ業務推進役(清水エスパルス担当)。
1984年テレビ静岡入社。
1987年~1994年(主に社会部や掛川支局駐在)
2000年~2002年(主に県政担当やニュースデスク)
2021年~現在(スポーツ担当)
ドキュメンタリー番組「幻の甲子園」「産廃が街にやってくる」「空白域・東海地震に備えて」などを制作。
清水東高校時代はサッカー部に所属し、高校3年時には全国高校サッカー選手権静岡県大会でベスト11。
J2・熊本の大木武 監督は高校時代の同級生。